ユーザーはテレビCMも見ている/動画共有サイトに関する調査
Webマーケティングガイドでは、インターネット調査会社の株式会社ボーダーズと共同調査のもと、動画共有サイトに関する調査を行った。
その結果、90%以上のユーザーがYouTubeを利用しており、また、動画共有サイトの利用期間が長ければ長いほど利用頻度が高くなる傾向があることがわかった。
また、視聴ジャンルで最も多いのは「日本のテレビ番組」が最も多く60.8%だが、意外に「日本のテレビCM」も多く見られており、18.6%が企業のテレビCMを動画共有サイトで見ていることがわかった。
※調査概要に関しては、記事の末尾に記載している。
動画共有サイトといえば、2006年頃からウェブ上で話題となり、2007年6月には日本語版が登場するに至ったYouTubeを思い起こす方が多いのではないだろうか。
しかし、最近ではYouTubeのAPIを活用したサービスがいくつも登場し、動画上にテロップを挿入できるニコニコ動画なども人気を博している(ニコニコ動画も当初はYouTubeのシステムを利用していたが、現在は独自のシステムを使っている)。
今回の調査では、利用が拡大傾向にある動画共有サイトについて、動画共有サイトの利用経験、利用しているサイト、そして動画のジャンルなど、動画に関する全般的な内容を明らかにしていく。
動画共有サイトの利用率は約60%
まず、Q1では動画共有サイトの視聴経験を尋ねたところ、動画共有サイトを「閲覧のみしたことがある」と回答したユーザーが最も多く56.0%。次いで、「動画共有サイトを利用した事がない」が28.4%、そして「動画共有サイトを知らない」が12.4%と続く結果になった。
調査概要は異なるが、『インターネット白書2007』が発表した動画共有サイトの視聴データ結果と比較すると、どれほどのスピードで動画共有サイトが広まっているのかをうかがい知ることができる。
インターネット白書2007によると、2007年3月時点での動画共有サイトの利用率はわずか18.7%であり、利用検討層を含めても20%強という水準であった。
しかし、約9か月後に行った今回の調査では、動画共有サイトの利用率は3倍以上の59.2%となっており、インターネットユーザーの中に動画共有サイト、もしくは動画の視聴という習慣が根付き始めているのはないかと考えられる(※インターネット白書2007が行った調査と本調査では、調査対象やそのサンプル数など、調査概要が異なるため、参考値としてご覧頂きたい)。
ただし、「閲覧も投稿もしたことがある」というユーザーはわずか3.2%となっている。この結果から、CGMサイトにおいてコンテンツを作成するのはごく一部のユーザーのみで、ほとんどのユーザーはそれを利用するだけであることがわかる。
最も利用されているサイトはYouTube、ユーザーの90%以上が利用している
Q2では、Q1で動画共有サイトを利用したことがあると回答した296人のユーザーに対してその利用サイトを尋ねた。
その結果、「YouTube」と回答したユーザーが91.9%と圧倒的に多く、続いて「ニコニコ動画」の25.3%が続く結果となった。
冒頭でも述べたように、動画共有サイトの先駆者はYouTubeだといえるが、日本で言えば、USENの動画配信サイト「Gyao」のサービスインがYouTubeの浸透にも大きく寄与しているのではないだろうか。
というのも、YouTubeがブロガーの間でささやかれ出したのは2006年であるが、その時点(6月)でGyaoの視聴登録者数は1000万人を突破しており、YouTubeの認知度が上がる前に、すでにユーザーの中にパソコンで動画を見るという習慣が形成されつつあったと考えられる。
ウェブ上で動画を見るという習慣があったからこそ、YouTubeやニコニコ動画に代表される動画共有サイトの盛り上がりが生まれたのかもしれない。
ニコニコ動画の会員数は2007年10月時点で340万人を超え、ネットレイティングスが調査したところによると、ユーザー1人あたりの利用時間はYouTubeの3倍にもなるという(※参照:「『2008年9月期には単月黒字化する』--数値で見るニコニコ動画の強さ」)。
日本のテレビCMを見るユーザーは意外に多い
Q3では、Q1で動画共有サイトを利用したことがあると回答した296人のユーザーに対し、現在動画共有サイトでどのようなジャンルの動画を視聴しており、そして今後どのようなものを視聴したいと思っているかを尋ねた。
現状の視聴ジャンルを見ると、「日本のテレビ番組」が最も多く60.8%、次いで「一般の人が投稿した動画」の47.6%、「日本のミュージッククリップ」が39.9%、そして「日本のテレビCM」が18.6%で続く結果となった。
今後の視聴意向では、上位3ジャンルは「日本のテレビ番組」、「一般の人が投稿した動画」、そして「日本のミュージッククリップ」となっており、現在の視聴ジャンルと変わりはない。
ただし、4位以降となると「海外の映画」(34.8%)や「日本の映画」(34.5%)などがポイント数を増やしており、サービスの需要と供給の間にややギャップが存在していることがうかがえる。
また、Q3-1とQ3-2を見る限りでは、動画共有サイトを利用しているユーザーは“そこにしかないもの”(たとえば一般の人が投稿した動画)を求めてサイトに訪れている側面はあるものの、リアルタイムで見ることができなかった、もしくは再度見たくなったテレビ番組や、本来であればお金を払わなければ見ることのできない映像を求めている傾向も強いように思われる。
視聴ジャンルとしては「日本のテレビ番組」の利用が最も多く、今後の利用意向としては「国内・国外の映画」が高いというユーザーニーズを考えると、見逃してしまったテレビ番組やもう一度見たい番組を見ることのできる動画共有サイトが高い支持を得ることができるだろう。
ただし、各放送局もこの事態を黙って見ているわけではない。
フジテレビは先日、インターネット配信事業を強化していくことを発表した(※参照:「フジテレビ、人気番組をネット配信/ITPlus」)。まずはその一貫として、同社が運営する「フジテレビ・オン・デマンド」の中で人気バラエティー番組である「あいのり」の放送を決定した。視聴料は有料であり、一話315円、月額の定額制は525円となっているものの、同番組は女性を中心に非常に人気を集めていることから、その利用が伸びるのではないかと考えられる。
約15%のユーザーは、動画共有サイトを週に4日以上の頻度で利用
Q4では、Q1で動画共有サイトを利用したことがあると回答した296名に対して、どれくらいの頻度で動画共有サイトを利用しているのかを尋ねた。
その結果、「週に1日くらい」という回答が最も多く22.3%。次いで、「週に2~3日くらい」が19.3%、そして「月に2~3日くらい」の18.9%が続く結果となった。
全体の中で見るとその比率は決して多いとは言えないが、「ほぼ毎日」と回答したユーザーは9.5%、「週に4~5日くらい」は5.4%存在しており、約15%のユーザーは頻繁に動画共有サイトを利用していることがわかる。
ネットレイティングスの調査によると、インターネット全体における総ページビュー数でYouTubeは4位、そしてニコニコ動画は16位となっている(※参照:ネットレイティングスプレスリリース-総利用時間による日本のウェブドメインランキング)(ちなみに、1位はYahoo!JAPAN、2位はmixiとなっている)。利用1回あたりの閲覧動画数にもよるが、15%のヘビーユーザーが両サイトのページビュー数を倍以上に押し上げていることが想像される。
利用期間では、「半年以上~1年未満」が最も多い
Q5では、動画共有サイトの利用経験者296名に対して、動画サイトの利用期間を尋ねた。
その結果、「半年以上~1年未満」と回答したユーザーが最も多く30.4%、次いで「1年以上~2年未満」の23.0%、そして「3か月以上~半年未満」の16.2%が続く結果となった。
動画共有サイトを利用し始めてから、「1か月未満」と回答したユーザーは全体の約1割程度いることから、動画共有サイトの新たな利用者が増えていることがわかる。
また、動画共有サイトの利用頻度(Q4)と利用期間(Q5)の関係をみると非常に興味深い事実が浮かんでくる。
利用期間が長いユーザーほど、利用頻度が高い
下記図は、ユーザーの利用頻度を4段階にわけて分析をしたものである。
利用期間が2年以上の場合は傾向が異なるが、利用期間が長くなれば比較的頻繁に使う傾向があることがわかる。
動画共有サイト、約65%のユーザーが利用増
Q6では、動画共有サイトの利用頻度が利用を始めた当初と比べてどのように変化しているかを尋ねた。
その結果、「増えている」(22.0%)、もしくは「どちらかと言えば増えている」(41.6%)と回答したユーザーの合計は65%近くにも及び、半数以上のユーザーは動画共有サイトの利用頻度が増えていることがわかった。
YouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイトは広告収益を主たる収益源としている以上、ユニークユーザー数、ページビュー数、そしてアクティブ率は非常に重要な要素となる。
約50%のユーザーは視聴した動画を誰かと共有したことがある
Q7では、動画共有サイトで見た動画を誰かに伝えたことがあるかを尋ねた。
その結果、約半数となる49.3%のユーザーが「伝達したことがない」という回答だった。
「伝達をしたことがある」ユーザーは50.7%となるが、その内訳は「友人・知人に口頭で伝えた」が最も多く38.9%、次いで若干の差は開くものの「友人・知人に電子メールで伝えた」の10.8%が続く結果となった。
情報の伝達方法については、口頭が最も多いということで、動画共有サイトで視聴した事柄を学校や職場などで話題にするというユーザーの生活シーンが想像される。
また、電子メールで共有するというユーザーが10.8%存在していることからは、動画共有サイトにある電子メールを使った情報共有の仕組みがユーザーに受け入れられているのではないかと考えられる。
動画・動画サイトへの到達手段は「サービス名の検索」がトップ
Q8では、動画や動画サイトへの到達手段を尋ねた。
その結果、「サービス名を検索して」と回答したユーザーが最も多く48.3%、次いで「お気に入りやブックマークから」の40.9%、そして「見たい動画を検索して」の30.7%が続く結果となった。
今回の調査をするにあたり、Webマーケティングガイドでは「多くのユーザーはブックマークやお気に入りから動画共有サイトに移動するのではないか」という仮説を立てていた。しかし、本調査では「お気に入りやブックマークから」動画や動画サイトへと移動するユーザーは半数を下回っていることがわかった。
また、インターネット白書2007の発表では、検索エンジンの利用率は90%を超えており、この検索エンジンの普及が、お気に入りやブックマーク機能を利用するユーザーの減少につながっているのではないかと考えられる。
動画自動収集サイトの利用率はわずか5.2%
Q9では、「MyTube」や「RIMO」のような動画の自動収集サイトの認知と利用状況について尋ねた。
その結果、動画自動収集サイトの利用者(「知っており、利用もしている」)はわずか5.2%に留まり、認知者(「知っており、利用もしている」と「知っているが、利用はしていない」の合計)を見ても、その結果は24.8%と低い水準となった。
約40%のユーザーが今後動画自動収集サイトを利用したいと回答
Q4では、動画自動収集サイトを今後利用したいと思うかを尋ねたところ、利用意向があるユーザー(「非常に思う」と「少し思う」の合計)は41.6%となり、半数を下回る結果となった。
横断型の情報サービスはユーザーにとって非常に便利であり、検索周りのサービスだけを見てもその種類は数多くある。以前話題となった「ヤフーグル」や、最近では検索サイト「フレッシュアイ」を運営するニューズウォッチがWikipediaとニュース記事、そしてウェブサイトを一括検索できる「ワンページ検索」の提供を開始した。
ただし、これらのサービスは市場に広まるというよりは、一部のユーザーのみがその利便性を享受しているだけという状況にあるように思われる。
動画共有サービスを取り巻く環境は以上のように変化を遂げている。
放送局とのすみ分け、もしくは協業。また、著作権問題も重要な事象であり、各メディアは動画ビジネスについて模索を続けていることだろう。
Webマーケティングガイドでは、動画ビジネスの環境変化とともに、ユーザーの意識についても継続的な調査を行っていく予定である。
調査概要
- サンプル数:500
- 調査期間:2007年11月05日~2007年11月07日
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査機関:株式会社ボーダーズ
- 対象者:16歳~59歳までの男女
今回の調査対象は、16歳~59歳までの男女500人。男女比は50対50の均等割り付けを行なった。
- 本調査は、業界の全般的な調査であり、あくまでも指標となるものですので、参考データとしてご活用下さい。業種や取り扱っている商品、またユーザーの属性によっても調査結果は大きく異なると考えられます。
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