ビジネス目的別企業Webサイト成功の法則

消費者向け企業サイト「サポート」の失敗がもたらす悲劇

ページ

リスク消費者向け企業サイト「サポート」の失敗がもたらす悲劇

これまでにあげたような有効なコンテンツを用意すればすべてうまくいくかというと、そんなに簡単ではありません。必ずどこかに落とし穴が潜んでいるものです。コンテンツ制作と運用面で陥りやすい問題点を2つほどあげてみました。個別に詳しくみていきましょう。

業務フローの構築を

サポートとは既存業務と連携してこそ初めて効果が出るものです。連携には、チャネル間の連携(Webサイト、コールセンター、店舗など)と、コンテンツホルダー間の連携(各商品情報担当、店舗運営担当、Web担当など)があります。いずれにしても日常的な業務ではあまり連携しない部署なので、企業サイトで前述のようなサポートコンテンツやサービスを展開するためには、業務フローの確立が不可欠です。

業務フローとは、身近なものでたとえるなら「DVDプレーヤーのマニュアル」です。「録画するには」「番組を見るには」など、したいこと(利用者のニーズ)別に手順が書いてあります。サポートコンテンツのための業務フローも同じように、「ユーザーからの問い合わせ内容を集計するには」「新商品のリリースが確定したら」「店舗が増えたら」といったように、したいこと別に手順を記せばいいのです。「したいこと」をゴールだと捉え、そこから逆にさかのぼって、「しなければならない工程」をリストアップしていきます。次に、それぞれの工程について、誰が担えるかを横軸にとって配置し、それらを線でつなげれば完成です。簡単な図を参考に挙げておきます。

ユーザーシナリオの例
業務フローの参考図

業務フローを図式化したら、関係部署と協議して「その部署の業務である」と認めてもらう必要があります(そうしないと、ボランティアになってしまいます)。業務として認めてもらうには、その部署に対して明確な目的と成果を提示する必要があります。成果の考え方については、本連載のビジネス目的を達成するための成果指標と測定方法を参考にしてください。

情報には鮮度が求められる

サポートコンテンツに古い情報や誤った内容を掲載していては、マイナスブランドになるだけでなくユーザーに不利益を与えてしまう恐れがあります。そのため、掲載した情報を常に正しく、新鮮に保つことが必須となります。情報の素材をどこから集めてきて掲載するのかの仕組みに加えて、公開したあとに誰がどうやって維持するのかの仕組みも確立しなければなりません。

前述の業務フローを確立できない場合は、それらの情報は「掲載しない」と判断せざるをえません。そうならないためには、これからの企業サイトにあるべきWeb戦略でお話したようにWebサイトの目的を定め、誰のために何の情報が必要で、そうすることでどのような成果が達成できるのかを社内に向けて訴求し、関係部署を巻き込んだ体制作りが必要なのです。

サイト要素消費者向けサポートコンテンツに必要不可欠なもの

これまでの内容を踏まえて、消費者向けサポートコンテンツに必要な要素を洗い出してみました。自社のサイトと見比べて漏れがないか確認してみてください。

消費者向けサポートコンテンツ
  • 啓蒙・知識提供:商品を選択し、購入するために必要充分な知識を提供する。基礎知識や必要性の訴求、選び方など。
  • 商品・サービスの説明:どの媒体よりも詳しく、詳細な情報。エモーショナルなコンテンツだけでなく、比較検討に必要となる情報も掲載する。新しい製品だけでなく、古い製品情報も可能な限り提供する。
  • 購入前のサポート:購入や契約に必要な手続きを案内する。手続きの全体の流れや各工程で必要な書類等を漏れなく記述する。解約やキャンセル方法に関する案内も怠らない。
  • FAQ:商品別・手続き別・ターゲット別などいくつかの切り口で探し出せる一覧ページを設け、テーマごとにQ&Aをグルーピングする。必要なページからそれぞれの一覧ページに直接リンクし、ユーザーの探す手間を省く。
  • お問い合わせ:問い合わせの種類別に案内を掲載。フォームを利用する場合は、問い合わせ内容を先に記入できる項目の並びとする。

サイト構造図利用者が欲しい情報を探しやすくするために

FAQや問い合わせフォームだけがサポートではありません。Webサイト全体がユーザーサポートになるべく、コンテンツを拡充しましょう。

サポートが充実したサイト構造
サポートが充実したサイト構造

判定指標消費者向けサポートコンテンツのKPI

サポートの成果は「サイレントボイス(声なき声)」を測定して初めて正しい測定だといえます。

  • 問い合わせ内容の「質」の改善
    問い合わせやクレームをもとにしたコンテンツを作ることができれば、必然的に同じ内容の問い合わせやクレームは減少することになります。そのため、収集した問い合わせやクレームから「これは根本的な解決をしよう」と定めたものが、改善後に減少すれば成果があがったと評価できるでしょう。

    1つ注意することは問い合わせの件数、特にコールセンターへのコール数を評価指標にしないことです。改善前、コールセンターに電話をかけてきた人すべてに対応できているわけではないので、改善後にコンテンツ化した部分に関する問い合わせやクレームの数は減っても、今まで対応できなかった他の電話に対応できることにより、全体のコール数は変わらないという現象が起こりえます。そのため、全体のコール数の増減ではなく、改善しようと決めた内容に相対する問い合わせやクレームが減り、その分、人が電話対応しなければならない個別の内容に「問い合わせ内容の質」がスイッチできたと評価するのが正しいといえます。

  • 解約・キャンセルの削減
    ユーザーシナリオに基づき必要なサポートが実現できれば、購入前の誤解を削減できるため、結果として解約やキャンセルの件数が減少します。もし、誤解を助長して成約に結びつけるようなWebサイトがあったとしたら、全体の成約は減るかもしれませんが、そのようなWebサイトはユーザーにとって良いサイトだとはいえません。あなたが担当するWebサイトが正しい商品やサービスの提供をしているのであれば、解約やキャンセルに対するサポートコンテンツを用意したからといって、解約数やキャンセル数が増えることはないのです。

  • 売り上げの向上
    今回お話のポイントは、「サポートとは、ユーザーが本来成し得たい事柄を達成するために必要な情報やサービスのすべて」ということです。それらが確実に遂行できれば、結果として売り上げの向上が期待できます。Webサイトで決済できる商品やサービスはもちろんですが、Webサイトで決済できない商品やサービスについても店舗やコールセンターへの送客実績を測定してみましょう。商品やサービス自体が魅力的であることが前提となりますが、情報が少ないために選考の過程で対象から外されたり、手続きが不明なために購入前に断念したりしていたユーザーの離脱が防止できれば、成果が成し得られるはずです。

消費者向けサポートコンテンツ成功のためのチートシート

  • 全体の流れを振り返って確認したい
  • これから企画書を書くときの参考にしたい
  • 社内の会議で参考資料として配布したい……など

そんな時にはこのPDFを印刷して活用してください。記事の内容を凝縮してA4 1枚のチートシートにまとめて、さらに自社用にも書き込めるようにしています。

企業サイト成功のためのチートシート
◇◇◇

3部作としてお届けする消費者向け企業サイトについて、1回目はサポートのお話をしました。次回は、「マーケティング」をテーマに企業サイトを活用するために必要な事柄について触れてみます。

ページ

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

PDCA
「PDCA」は、Plan→Do→Check→Actionのループの略。 ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]