RIAシステム構築ガイド はじめに
RIAシステム 構築ガイド Essential 2
RIAコンソーシアムが発行したRIAの普及促進や開発に関するガイドライン『RIAシステム 構築ガイド』の2008年版である『RIAシステム 構築ガイド Essential 2』をWeb担向けに特別にオンラインで公開するコーナー。
使い易さという機能
RIA:Rich Internet Application
豊かな表現力を持ち、より機能的で、操作性の良いWeb の仕組み
Webアプリケーションが今後どのように変遷していくのか、その先手を打ってノウハウの共有や啓蒙を目指そうと、競合とみなされてもよい企業が集まってRIAコンソーシアム(RIAC)は生まれました。それは市場の活性化は、複数企業のコラボレーション(協業)によって生み出されると、多くのメンバーが直感していたからです。
そもそも「リッチクライアント」という言葉で、自社技術を広報している企業も含まれている中、「Rich Internet Application(RIA)」の定義すらせずに進んできました。言葉の定義を持つことで、活動の制限を生むのであるなら、そんなことに時間をかけるのは無駄だという結論です。ただ、メディアに取り上げられる機会が増えるにつれ、無定義のまま進むのが不便になってきたので、上記の「暫定定義」を掲げることが増えてきています。
この暫定定義の示すのは、RIACの発足と継続の主軸は、ITが必要とされる分野には、「使い易さ」という「機能」が存在し、それを「開発」することの「スキル」があるという認識に立っていることです。システムインテグレータ(SIer)が中心として開発する「アプリケーション」に、データの流れの効率性を求めるだけではなく、その「操作性」に着目して「品質」を「評価」する時代が来る(もう来ている)という予見がその根底にあります。そして、その開発現場はエンジニアとデザイナが密接に互いのスキルで補い合って開発を進めざるを得ません。
また、データとコードだけの速さを競っても、事実上それは理論値です。そのアプリケーションの利用者は逐次変わります。可能な限り万人向けとすべき場合も、厳しく限定するべき場合もあります。そして、それぞれに、教育やトレーニングがあり、フィードバックがあり、更なる改良をしていくべきものが多いのも事実でしょう。もはや「開発費」の意味することすら、長期的視点で捉える時代に入っています。
早く開発する企業が優秀とされる時代がありました。安く開発する企業がもてはやされる時代がありました。でも、IT技術の浸透に伴い、次に来る時代(あるいは「今」)は、使い易いアプリケーションを開発できるスキルそのものが正しく評価されるべき時代だと信じます。
そしてそのスキルは、決して簡単なものでも、デザイナに表面的見栄えを塗り替えたら解決できるものでもありません。データを処理するには様々な仕様に則れば形にはなります。ですが、人間には「仕様書」がありません。人が目の前のボタンに対して、どう感じ、どう行動するかは、開発者の経験と発想と想像力で補っていくしか、少なくとも今はないのです。そして、そのようなスキルの積み重ねの上に構築されたアプリケーションが、より「人財」を助け、ユーザを喜ばせ、企業の力となっていくのです。
RIAへのリプレイス開発
始まっている業務アプリケーションの刷新、そして開発チームマネージメントの複雑化
RIAシステムを開発する際、技術だけが主要なキーとなる訳ではありません。実際の現場で一番問題になるのは、技術ではなく「人材(人財)」だと思われます。センスの領域を除外すると、大抵の技術はある程度までは、技術書の読込みや場数で何とか対処できます。しかし、人材を、その持てるスキルに合わせて活用できるかかどうかは、本当に難しい問題です。エンジニア企業内でも、デザイン企業内でも、個々の特性を見極めた上で、モティベーションを高め、プロジェクト完遂という共通目標を達成し続けることは容易い課題ではないでしょう。ましてや、RIAでは多くの場合、エンジニアとデザイナが混在して一つのプロジェクトを成功させていく必要があります。
既存システムのRIA化を考えて見ましょう。大別すると二通りの道が考えられます。「クライアントサーバ(C/S)からRIA」への道と、「Web(HTMLベース)からRIA」への道です。老朽化した技術を最新化する、横方向だけのリプレイスをRIA化とする場合があります。見た目ごと変化させず、データ転送等のパフォーマンス向上を主な目的とする場合ですが、トレーニングやドキュメントの更新がないことも発注者側に好まれる大きな要因でしょう。
しかし、画面レイアウトの変更等をした場合のリスクを負いきれないという後ろ向きの理由も少なからずあるようです。利用部門との調整時間を嫌っての場合もあります。しかし、この情報化社会の中で、一世代前の情報処理を同じやり方で続けて行けば良いという業界は、余りないのではないでしょうか。処理すべき情報の量が増えれば、それだけ人間の負荷は高まります。ITとはその負荷を少しでもシステムに肩代わりさせるために存在しています。この時点で、「ユーザビリティ」を考える必要が生まれ、システム開発にデザイナが不可欠な存在になるのです。
エンジニアとデザイナの協業現場では、今までにない作法や習慣がぶつかり、そこから新たな発想や提案が生まれます。その舵取りをする役が、実はますます大切になっていくでしょう。「プロジェクトマネージャ」です。チームマネージメントのプロを育てることが、一朝一夕になるものでないことは想像に難くありません。早く始めた方が良いに決まっていますし、そのためにはパートナー企業と組んで慣れ親しむと言うベースアップ策も始まっています。
この記事は、RIAコンソーシアムが発行した『RIAシステム 構築ガイド Essential 2』の内容を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。※掲載されている内容は2008年12月発行時点のデータに基づいています。
RIAコンソーシアムの活動記録とも言える本ガイドは、RIAの普及促進、開発に関するガイドライン、課題解決などについて、マネージメント、ユーザーインタフェース、テクノロジーの3つの視点からみた、それぞれのテーマについてまとめています。
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https://www.ria-jp.org/about/guide.html
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