Webアプリケーションのビジネス利用調査/RIAシステム構築ガイド #24
RIAシステム 構築ガイド Essential
RIAコンソーシアムが発行する、RIAの普及促進や開発に関するガイドライン『RIAシステム 構築ガイド』の2007年版である『RIAシステム 構築ガイド Essential 2007』をWeb担向けに特別にオンラインで公開するコーナー。
2007年3月実施/有効回答数500名
調査対象条件 | |
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調査名 | Webアプリケーションのビジネス利用調査 |
調査対象 | 業務でWebアプリケーションに関わっているビジネスマン |
対象エリア/世代 | 東北、北陸を除く全国地区、 10代は除く。 |
対象業種 | 全業種を対象も、個人事業主は除き、従業員50人以上の規模。 |
Internet利用状況 | 自宅のみおよび通常回線(PHS,アナログ利用者)は除く。 |
有効回答者数 | 500名 |
回答総数 | 約15,000件 |
アンケートの形式 | |
形式 | インターネット上に設けたアンケートサイトでの自記式 |
設問数 | 全6カテゴリ 設問数30問 |
実施期間 | 2007年3月 |
市場調査の目的
RIACでは、今春上記の条件で、独自の市場調査を実施しました。これは、リッチなインターネット(インタラクティブ)アプリケーションの浸透度と、そのベースともいえる「Webアプリケーション」の現状調査を実施してみることで、「自分たちの立ち位置を見極める」こと、そして、この現実を知って、実際に使っていただくクライアントにも納得して頂ける情報が収集できればという思いからでした(この冊子で紹介するデータは、その一部を抜粋して再編したものです)。
RIAという表現と浸透度
今回の調査結果によれば、500名の有効回答者の中で約1/4が「RIAを知っている」もしくは「聞いたことがある」と回答しています【01】。果たしてこの数字が高いか低いかは判断の迷うところですが、まだまだ世の中では一般的な表現でないことは感じ取れます。ただ、特筆すべきは、"RIA"を知らなくとも、その技術の一部であるJavaやFlashなどは認知度が高いという結果が出たことです【02】。
RIAの認知度が全体の1/4程度に留まっている理由としては、"RIA"の定義に具体的な技術名が含まれておらず、捉えどころがなく一般用語までに至っていない部分にその原因があるのかもしれません。事実、RIAC内でも、包括的な合意はあるものの、会員各社にもそれぞれの様々な想いが込められているので、そうしたセンシティブな議論は避けています。しかし、「RIAとは、豊かな表現力を持ちより機能的で、操作性の良いWebの仕組み」という共通認識は形成されています。Java、Flash、.NETなどの用語は、以前から固有名詞といして流通しており、その定義を明確にすることができます。こうした事が回答率の高さに影響を与えているのかもしれません。つまり、技術や用語の浸透は、時間と明確な定義が重要になるということであり、技術自体の進歩の速度ほど早くは浸透しないことを示しているようにも読み取れます。
今回の調査で、"RIA"を知っているかという非常に基本的な質問をした訳ですが、その目的はもう一つあります。利用者の中でも特に、"RIA"(Webアプリケーションを含む)の開発や運用管理責任者、もしくは開発に携わる人達も同じ認識でいるのかを知りたかったからです。結論は、全体調査では1/4程度の認識であったのに対し、開発者では約半数、Webアプリケーションの開発・運用責任者では約8割が「知っている・聞いたことがある」と答えています。それなりの市民権は得ているといえる状況なのでしょう【03】。
Webアプリケーションの利用状況
6割を超える企業でWebアプリケーションは導入済みであるという回答が得られました(つまり4割はWebベースのシステムを持っていないという認識があるということです)【04】。問題は、そのシステムやアプリケーションに対してどのような期待と失望があるか、という点です。「期待」には、操作性の向上、業務の効率化、開発/運用コストの低減などが挙げられ【07】、導入後の「不満」には、ネットワークの負荷に限界を感じたとき、サーバの能力に限界を感じたとき、データ連携に限界を感じたとき、などが挙げられました【08】。
ここから、ユーザーは使いやすく、反応のよいシステムを求めていることが分かります。推測ですが、現状に満足していないユーザーは、前世代のWebアプリケーションなのでしょう。旧来のWebアプリケーションでは、実現できないレスポンス・操作感・ユーザビリティーの実現を求めているのであれば、、我々の目指すRIAと呼ぶ次世代のシステムは、これらのシステムをリプレイスする際の大きな候補となりえるでしょう。
クライアントの切望するご提案材料
導入時に考慮する点・もしくは課題については、パフォーマンス・導入コストに続いて、導入効果の測定が上げられています【09】。導入前に費用対効果を声高に訴えていたり、導入の苦労の割りに、導入後の効果検証や効果測定に苦労している現状をうかがい知ることができます。恐らく、どのようにして測定すべきか「判断がつかない」のでしょう。これはRIA提案者が肝に銘じる点で、現状システムのパフォーマンスを測定し、RIA技術の導入や、一部機能のリプレイスを行うことで、運用まで含めたコストパフォーマンスの改善を数字などで示すことが、暗に求められているのだとも読めます。ユーザビリティなど主観的な領域にまたがる部分の導入効果を測る手法の確立も急務ということです。
提案側の心得として、提案分野について探ってみることも重要です。既に、一般の企業が導入を済ませてしまったと回答する一方で、まだ着手できていないシステムがあることに気が付きます。「BtoB(B2B)=48%の企業が導入予定なし」、「BtoC(B2C)=50.4%の企業が導入予定なし」、と答えているにも関わらず、「イントラネット=51.8%情報共有(企業内ポータル)に使用したい」という答えが目を引きます。つまり企業内の情報の流れに何かしらネガティブな要素が大きく存在し、それを何とかしたいと認識されているのでしょう。つまり、基幹のシステムや業務に関する導入は一段落したが、「企業内の情報共有ツールが不足している、これから充実させたい」。それは、2009年3月期の決算から、スタートするJSOX法とも無関係ではないかもしれません。企業内の情報統制がより厳しくなり、社内のモラル・意識付け・ルールの遵守と事業の透明性を証明することを徹底しなくてはなりません。このとてつもなくコストのかかる情報の統制は担当者にとって非常に頭の痛い問題です。情報共有ツールは、数々ありますが、それを活用する現場の環境作りを含めて、トータルに考えることが必要であり、そこにはどうしてもユーザビリティ的な開発コンセプトが必須のように思えてなりません。RIAは派手な動きなどから、B2C型用のものというイメージが先行していますが、意外と現場はそうは見ていないのかもしれません。
イントラネット以外のRIAニーズ
導入済みシステムの不満点を解消するという方向性で、データを見てみましょう。「導入を決定する重要なポイントは?【13】」という質問に対し、1位「業務の効率化」2位「ユーザーの利便性向上」.3・4位「導入コスト/保守運営コスト」となっています。安く・使い勝手の良いシステムを導入すれば、コスト改善になります。これは至極当たり前の発想ですが、業務システムのWebアプリ化を急いだ結果、このようなことが実現できなかった企業も少なくありません。この点を補完し、Webベースのシステムに、利便性の良いインターフェイスを提供することで、業務効率を上げ、コスト改善につなげることは可能でしょう。しかし、現実には結果にたどり着くまでに複数の画面を遷移させ、表示に時間をかけ、ネットワーク負荷をかけてしまうシステムが数々提供されています。これは、クライアント(発注者)サイドも明確な答えを持たず、とにかくWeb化するのだという目的だけで試行錯誤の結果妥協してしまったシステムに言える共通点です。こうしたシステムに対しては、全体の焼き直しをせずに、UI部分のお化粧直しをするというコスト的にも負担を軽減する方法もありえます。もう少しの工夫を常に考えてみる事が重要です。
「企業での現状」でも紹介しましたが、導入後の不満・課題が1位「ネットワークの負荷に限界を感じたとき」、2位「サーバの能力に限界を感じたとき」、3位「データ連携に限界を感じたとき」と回答されています。4・5位として「ユーザビリティーに限界を感じる・表現力」と感じているのです。Webアプリケーションを導入した際に、どのような置換えをしたのか【15】にあるように、クライアント/サーバシステムからのリプレイスが最も多くなっています。これらの意味するところは、クライアント/サーバ等で運用してきた従来のシステム環境をWebベースの技術に移管した際に感じられた不満と捉えられます。クライアント/サーバシステムの特徴である「細かな操作を少ない画面やインターフェイスから実行できる」「通信される情報は、扱うデータのみなのでネットワークへの低負荷やレスポンスの良さ」があげられます。これら過去のシステムとWebベースのシステムを比較すると、当然上記の課題が現れることになります。
但し、置き換えられたWebアプリケーションを、動的な画面構成でRIA技術を使用し置換えることができれば、さらに利便性、業務効率の向上とコストの軽減を生み出す結果となるはずです。ですから、コストを考える際に、運用フェーズまで見据えることが大切な事となるのです。
調査の結果について
今回RIACとして、初めて市場調査を実施しました。今後も、広く一般にリッチインターネット(インタラクティブ)アプリケーションの実態や利便性を説くためにも、これらの調査を継続的に行い、開発・提供者の認識を補正していきたいと考えています。同時にRIAに対するトレンドを皆様にも知っていただきながら進んでいければ、と願っています。
但し、"RIA"はあらゆる分野にフィットする魔法の杖ではなく、それを理解し適切に導入することで効果を発揮するものです。今後も、調査・分析を含め技術の検証や応用例の紹介などを進め、「市場の読める開発者」「分析・ニーズを解決する開発者」となるような人材を育て、"RIA"の普及に努めていこうと思っています。
この記事は、RIAコンソーシアムが発行した『RIAシステム 構築ガイド Essential 2007』の内容を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。※掲載されている内容は2007年5月発行時点のデータに基づいています。
RIAコンソーシアムの活動記録とも言える本ガイドは、RIAの普及促進、開発に関するガイドライン、課題解決などについて、マネージメント、ユーザーインタフェース、テクノロジーの3つの視点からみた、それぞれのテーマについてまとめています。
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