コンバージョンの6割は再訪問から生まれる、第三者配信で見える化されたユーザーの態度変容 | アクティブコアセミナーレポート
アクセス解析や広告効果測定、LPO、レコメンドなどのソリューションを提供するアクティブコアが7月4日に開催したセミナー、「広告主が語る第三者配信によるアトリビューション効果検証と活用事例:大和ハウス工業編」では、第三者配信を利用した広告配信の基本的な仕組みから、実際の運用や成果までが、さまざまなデータを交えながら披露された。
第三者配信や効果測定のシステムを提供するプラットフォーム側と、広告出稿する広告主側、双方の視点で語られた、4つのセッションの様子をレポートする。
- 第三者配信が実現するデータ主導のクリエイティブ戦略
- アクティブコアのアドネットワークソリューション
- 第三者配信によるアトリビューション効果の見える化事例
- パネルディスカッション:広告主が求めるこれからのマーケティングツール
広告をクリックしない99%のユーザーに行動してもらうための施策
セミナーの第一部は、MediaMind Technologies株式会社 Senior Sales Managerの渡邊桂子氏が「第三者配信が実現するデータ主導のクリエイティブ戦略」をテーマに講演した。同社はニューヨークに本社を置くグローバル企業で、デジタル広告の配信・管理プラットフォーム「MediaMind」を通じ、日本国内でも広告の第三者配信を実現している。
まず渡邊氏は、本セミナーの主題となる“ネット広告の第三者配信”とは何か、という点から説明した。
まず第三者というからには当事者がいるはずです。媒体社が自社のアドサーバーを用いて広告を配信するのは、当事者配信と呼ばれます。これに対して第三者配信とは、媒体社以外のアドサーバーから広告を配信することを指します。もう少し狭く定義すると、第三者配信とは広告主による“セルフ配信”という意味です。
つまり、広告主や代理店が、MediaMindなどの“第三者”のアドサーバーを用い、さまざまな媒体やアドネットワーク、アドエクスチェンジなどに広告配信する仕組みが第三者配信になる。では、第三者配信によって何ができるようになるのか。渡邊氏は次のように説明する。
第三者配信を用いると、複数の媒体への広告出稿を一元管理でき、広告効果を横断的に見ることができます。たとえば、媒体Aと媒体Bで、どの程度ユーザーが重複しているかといったことを分析し、改善できるようになります。
複数の媒体や、アドネットワーク、アドエクスチェンジに広告を出稿している企業は多いだろう。しかし、当事者配信の場合、レポートは媒体ごとに送られてくる。それぞれのレポートのデータを集計して、施策全体の効果分析をしようとすると、いわゆる「Excelまみれ」の作業になってしまうし、限界も生じる。こうした不満を解消してくれるのが、広告のセルフ配信(第三者配信)というわけだ。
たとえば、MediaMindでは、純広告のプレミアム枠、アドネットワーク、アドエクスチェンジ、リスティング広告、ソーシャルメディアといった、すべての広告のアクティビティを一元管理できます。自社サイト外の施策は第三者配信サーバーに集約し、得られたデータをサイト内のデータとひもづけてアクセス解析ツールで分析する。こうすることで、ユーザーの興味・関心の度合いに応じた広告配信ができるようになります。
このような説明を聞くと、第三者配信=メディアプラン最適化のためのシステム、という印象を持つかもしれない。実際、第三者配信によって今までは見えなかったデータが見えるようになると、媒体ごとの広告予算配分の見直しがよく行われると渡邊氏は話す。しかし、第三者配信によって重要性が増すのはメディアプランの最適化ではなく、広告のクリエイティブだと渡邊氏は力説する。
メディアプランの最適化は確かに重要ですが、コンバージョン向上に大きく寄与するのは、クリエイティブの改善です。メディアプランを変えるよりもクリエイティブを変える方が、4倍もコンバージョンに与える影響が大きいという調査結果もあります。
ではどのようにクリエイティブを改善したらいいのか。渡邊氏はまず「とにかくクリックを獲得する」という考え方から脱却する必要があると話す。第三者配信を活用すれば、ユーザーのリターゲティングの精度を高めることができる。しかし、平凡なクリエイティブで、しつこくクリックを迫られたらユーザーはどのように感じるだろうか。「逆にブランドイメージの低下につながるのではないか」と渡邊氏は指摘する。こうした問題を解決する1つの手段が、リッチバナーの採用だという。
MediaMindのグローバルの調査では、広告CTRは0.09%に過ぎないという結果が出ました。99%以上の人は広告をクリックしない。この99%のユーザーに、何らかの行動を起こしてもらうための施策が、第三者配信による適切なリッチバナーの配信です。広告は見ただけでは記憶に定着しません。しかし、クリックやマウスオーバーによって何らかのアクションが起こるリッチバナーに触れてもらえれば、定着率は70~90%まで上昇すると言われています。同時に、私たちはレレバンシー(関連性)と読んでいますが、ユーザーにとって役立つコンテンツとして、興味関心に関連する広告を提供することが重要なポイントになります。
リッチバナーに接触したユーザーは、スダンダードバナーに比べ、キーワード検索によって広告主のサイトを訪問する確率が3倍高くなるというデータもあるという。また、サイト訪問後も、離脱率の低下や回遊性の上昇といった傾向が見られるという。渡邊氏は、こうしたデータを示しながら、次のように訴える。
ユーザーはリッチバナーだけで満足してしまい、ランディングページには行かないかもしれませんが、それでもいいのです。
なぜなら、リッチバナーでは映像をどこまで再生したのか、どの時点でクリックしたのかなど、ユーザーが何に興味を持っているのか、バナーの接触度合いに応じてグループ化し、施策を振り分けられるからだ。たとえば、ある旅行会社では、バナー広告上でプランを選択できるようにし、ユーザーのクリックに応じて適切なリターゲティングを行っている。
もちろん、リッチバナーは制作にも配信にもコストがかかる。しかし、最適な配信がわかればCPAは必ずしも悪くはならないという。最後に渡邊氏は、大切なのはふさわしいタイミングで露出することだと、運用上のポイントを次のように挙げ、講演を締めくくった。
リッチバナーは高価ですが、適度に露出させることができれば、必ずしもCPAは悪くならない。ダイレクトレスポンス系のバナーを毎回見せるよりも、何回かに1回はリッチバナーを見せた方が、トータルのコストパフォーマンスが良くなった事例もあります。たとえば、初回閲覧時だけリッチバナーを露出し、その後はリターゲティングでしつこく感じさせない程度にユーザーを追いかける。第三者配信により広告配信を一元管理し、スタンダードバナーでできること、リッチバナーでできることを組み合わせることが重要になってきます。
コンバージョンしたユーザーの自社サイト外の動きを把握
続いて登壇したのは、本セミナーの主催者であるアクティブコア 代表取締役社長の山田賢治氏。同社はWebサイトのレコメンドシステム「ac propoza(エーシープロポーザ)」や、行動ターゲティングを活用したLPOシステム「ad insight(アドインサイト)」、アクセス解析・効果測定ツールである「ac cruiser(エーシークルーザー)」などの製品を展開している。
山田氏の講演で主題となったのは、エーシークルーザーを利用したアトリビューション分析だ。2012年5月に第三者配信サーバーの効果測定に対応したことで、サイト外の間接効果を緻密に分析できるようになったことなどが紹介された。
山田氏はまず、ユーザーが何回目のWebサイト訪問でコンバージョンするかについて、次のような興味深いデータを紹介した。
弊社お客さまの平均値になりますが、初回訪問でコンバージョンする人は、全体の3割から3割5分くらいにすぎません。つまり、コンバージョンの6~7割は再訪問から生まれています。ここで言うコンバージョンには、高額商品の購入から無料登録のようなものまで、さまざまなものが含まれています。業種やWebサイトの性格もさまざまです。しかし平均値を見ると、どの月を見ても、だいたいこのような傾向になっています。
アトリビューション分析を行う目的の1つは、コンバージョンに至るまでのユーザー動向を把握し、コンバージョンにつなげるための効果的な施策を打つことにあるだろう。山田氏によれば、エーシークルーザーを用いることで、どのような経路でユーザーが初回訪問に達したか、そして初回訪問後、コンバージョンに至るまでにどのような行動をとったかを、「キーワード」「メルマガ」「ソーシャル」「アドネットワーク(第三者配信を利用)」の全流入経路で分析できるという。加えてコンバージョン後のユーザー動向もキャッチアップできる。
このようなデータから広告主が最も探り当てたいのは、どの時点でユーザーが態度変容を起こしたかだろう。この点についても、「料金ページを見た人」「オンラインデモ動画を再生した人」「フォームまでは訪れたけどコンバージョンしていない人」といった具合にユーザーをグルーピングし、グループごとにアトリビューション分析する機能が実装されている。各グループのユーザーが、サイト内でどんなアクションをしたかも細かくわかるようになっており、さまざまな項目を任意にKPI設定し、レポートに出力できる。
ポイントは、第三者配信であれば、外部サイトのバナーであってもビュースルーコンバージョンを計測できる点だ。簡単に言えば、アドサーバーに専用の計測タグを設置すれば、ユーザーとその行動が自動的にひもづけられ、データとして集計される仕組みになっている。
我々のタグを設置すれば、媒体サイトであろうが自社サイトであろうが、すべて一元的に管理できます。特にコンバージョンしたユーザーに関しては、サイト内外の動きをほとんど把握できる。何月何日の何時何分、どのアドネットワークの広告に触れていたのかまでわかるのです。
今夏(2012年夏)のバージョンでは、“アドネットワークに接触したユーザー”というセグメントをつくれるようにします。すると、アドネットワーク接触後、ユーザーはどこから流入するのか、どんなキーワードで検索して訪問するのか、といったことが管理画面上でランキング形式で見えるようになる。さらにデータを分単位で集計できるように改善されますから、従来はわかりづらかったテレビCMの効果なども、より正確に推計できるようになります。
エーシークルーザー導入企業のなかには、コンバージョンユーザーの3割が、サイト外のアドネットワークの広告を見ていたというケースもある。当然、コンバージョンには至らなかった広告接触ユーザーは、もっと高い割合で存在する。第三者配信とエーシークルーザーのタッグは、そうした見込み客に対し、有効な施策を展開する上で強力なツールになるだろう。またアクティブコアでは、エーシークルーザーの分析データを基に、見込み客が求める情報を、シナリオあるいはアルゴリズムに基づき、自動的にレコメンドするシステムも提供している。このようなサイト内のLPOについても、今後、第三者配信のデータを利用できるようになるそうだ。
アクティブコアの製品は、あくまでも目的を達成するための道具だと思います。我々はみなさまの目的達成のために、道具の改善を続けていきたい。
最後に山田氏は、今後もさまざまなニーズに対応しながらシステムをより良くしていくと話し、講演を終えた。
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