企業ホームページ運営の心得

Facebookいつやるの? いまでしょ。真のポテンシャルを発揮する起爆剤

いち早くFacebookの対策を立てることは重要なポイント、ネット選挙解禁でさらなる拡大も期待できます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の305

業界激震の減少

ウェブサイトの運営などを行うセレージャテクノロジー社が、2013年3月7日に発表した同年2月時点での、国内のFacebook推定ユーザー数は1,342万人で、日本人の約10.6%にあたります。メガロポリス「TOKYO」の人口に匹敵するとは立派な数字で、ビジネスチャンスに溢れていそうです。ところがこの2か月の間に「静岡県」の人口と同じ370万人のユーザーが離れているとしたらどうでしょうか。

いまや新法王誕生で賑わう、バチカン市国のユーザーが800人からわずか20人と減少したのは2011年2月で、偽造や偽名とみられるアカウントの大量削除の結果です。実名性を堅守するFacebookです。日本のユーザー減少も、偽造や偽名のアカウント削除を行った結果と見ることもできます。しかし、私の周囲では、毎日アクセスしていたユーザーが週1回の利用となり、少しずつ疎遠になっているという声も耳にします。

そこで今回はFacebookのポテンシャルについて再検証します。

予言されていた停滞

昨年の5月にFacebookが米国ナスダック市場へと上場する直前は、「熱狂」につつまれていました。一般紙やテレビなどは礼賛の声で埋め尽くされ、もちろんIT業界も同じくです。そしてご存じの通り、株価は公開直後から急落します。主幹事証券会社によるミスリードも理由の1つですが、Facebookのつまずきを予測する声は少なくなかったのです。

一方、そもそも株式アナリスト(専門家)からは実態を表していない高すぎる株価への苦言が目立っていました。株価についてはグーグルの上場を引き合いに出し、擁護する声もありましたが、いまも課題とされるスマホへの対応の遅れを指摘していたのです。

また、株式公開直前には、大手広告主であるGMがFacebookの広告効果に疑問を覚え、出稿を停止しています。上場の数か月後には、音楽サイト「Limited Run」は出稿した広告をクリックした8割が「ボット(ロボット、自動プログラム)」だったとも発表していました。

ネットで勝つためのゲームルール

こうした市場の動きは、過度な期待によってハードル(期待値)を上げられたお笑い芸人がすべった状況に似ています。2008年の米国大統領選挙において、バラク・オバマを勝利に導いたのはFacebookだという喧伝はこの典型です。

この時の選挙でオバマ陣営は「MyBO(オバマ陣営のホームページmy.barackobama.comの略称)」という独自のSNSを構築していました。ここを拠点に16のSNSに特設ページを開設しており、Facebookはその1つに過ぎません。オバマ陣営は、SNSごとに集まる有権者の属性が異なることに注目して、それぞれに対応するコンテンツを用意したのです。ちなみに、これはWeb担当者への重要なサジェスト。ところが選挙後、Facebookの手柄だけが独り歩きします。

以前、ネットビジネスのゲームルールを「イス取られゲーム」と表しました。限られたユーザーの時間を奪い合うゲームで、時間を奪うためのツールを「イス」と表現し、取られるためには、まずサービスやコンテンツを提供しなければならないということです。Facebookも「イス」の1つに過ぎません。

10万人の「いいね!」の先にあるものは

国内に目を移せば2010年も後半に入るころ、Twitterの減速……というよりは、過大な期待に追いつかない実態から、次のみこしとしてFacebookに白羽の矢が立てられました。個別の企業を批判する主旨でないことから、社名は伏せますが某企業が10万を超える「いいね!」を集めたことで注目を集めます。

名もなき企業が世界中で5億人のユーザー(当時)の集うFacebookで「ファン」を10万人集めた。ジャパニーズドリームかのように騒ぎ立てる報道は、まるで「セカンドライフ」の再来を思わせました。企業の代表者は、当時いくつもの取材に誠実に答えています。その1つで「まだ投資段階」だと、実状を端的に表すコメントを発しています。実は一言も「儲かっている」などと発言していないのです。

ラストチャンスは突然に

Facebookが役立たずというのではありません。日本人の10人に1人がアカウントを持つネットサービスであり、いまでも東京都民の全人口に匹敵するユーザー数は見過ごすわけにはいきません。「イス取られゲーム」は、まず「イス」を用意することが重要、いち早くFacebookになんらかの対策を立てることは正しい行動です。しかし、過度な期待、楽観的すぎる依頼心に頼るのは間違っていたという結論です。ついでにWeb業界の過度な「煽り」について、冷静に考える最適なケーススタディです。

私はいまさらFacebookに注目しています。FacebookがWeb業界の話題の中心になりかけていた2010年も終わりに近づいたころ、「大桃爆弾」が炸裂しました。芸能人とジャーナリストの艶聞がTwitterで暴露され、ワイドショーを通じて一般人にもTwitterの名前が浸透した事件です。その後の、東日本大震災における通信インフラとして再評価されたTwitterの下地は、「大桃爆弾」が作ったと言っても過言ではないでしょう。

アベノミクスか大桃爆弾炸裂か

Facebookにおける「大桃爆弾」となる可能性を秘めているのが「選挙」です。いま、永田町で注目されるのは安倍晋三総理大臣のFacebookぐらいですが、「生活の党」ではすべての議員にFacebookの開設を義務づけました。そしてネット選挙の解禁に合わせて、ワイドショーのネタを提供してくれる政治家や立候補者が現れてくれれば、再ブレイクは目前です。個人的には衆院議員時代、身を持って騒動を起こした議員が、参議院選挙に鞍替え出馬するというので期待しています。政治家としてではありません。Facebookの起爆剤として。

LINEの躍進に影が薄くなりがちですが、ユーザー数にからみても、9割の日本人へ広がる成長余力を持っています。「まだ」、Facebookに対応していない企業ならば、取り組むのはいつか? いまでしょう。

今回のポイント

過去に見える未来

再ブレイクの可能性に注目

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