[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

ゆうこす×東急ハンズのライブ配信で実感! 著名人コラボ成功のポイントとは?

マーケ担当者必読! 著名人とのコラボ企画を成功させるために押さえてくべきこと
株式会社東急ハンズ 営業企画部 販売促進グループ 加藤千穂氏

現在は、著名人の方もTwitterやInstagramで積極的に情報発信するのが当たり前の時代となりました。彼ら/彼女らの影響力というのは大変大きく、そうした著名人の人たちとのコラボレーションを検討したことのあるマーケ担当者の方も多いのではないでしょうか。

東急ハンズでは、今年7月、ゆうこすさんとのコラボ企画を実施しました。東急ハンズ新宿店で、ゆうこすさんがスタッフに相談をしつつ、買い物をする様子をライブ配信して、10~20代女性の方々に、東急ハンズの魅力を知ってもらうという内容でした。

今回の記事では、この事例を紹介することで、著名人とのコラボ企画を成功させるためのポイントは何か、私なりに考えた内容を皆さんと共有したいと思います。

はじまりは1通のメールから

2018年7月23日、私は1通のメールをドキドキしながら書いていました。

KOS.inc 菅本裕子様


お世話になっております。東急ハンズ営業企画部の加藤と申します。

いつもTwitterやInstagram、YouTubeを見ておりまして、

ぜひ弊社と何かお取り組みができないかと思いご連絡いたしました。

上期中に何か追加で施策ができないかと上司に言われたときに、いつかご一緒したいと思っていた人が思い浮かび、「ゆうこす、どうですか?!」と提案、「お断りされるかもしれないし、予算が足りないかもしれないけど、当たってみたら?」の言葉通り、「ゆうこす」こと、菅本裕子さんの個人事務所である、KOS.incに冒頭のメールを送ったのです。

ちなみに、「ゆうこす」、皆さんはご存知ですか? 「知ってるよー!!」と言う方も多いでしょうが、あえて説明すると、「ゆうこす」とは、1994年生まれの24歳。「モテクリエイター」という肩書きで、さまざまなSNS上で大活躍している中、スキンケアブランド「youange」やライブコマースのサービス「TaVision」を立ち上げたりと事業家でもある、マルチなインフルエンサー。

  • Instagramのフォロワー37万7000人
  • Twitterのフォロワー25万6000人
  • Youtubeチャンネルの登録者数44万9000人(いずれも、10月8日時点)

で、この3つのアカウントの合計フォロワーは100万を超えており、特に、若い女性から絶大な支持を得ている、アイコン的存在なのです。

「ゆうこす」こと菅本裕子さん

私が冒頭のメールを送ろうとしていたまさにその日、ゆうこすさんは下記のTwitter投稿をしていました。

月に100件以上の依頼があるなんて……、これはお断りされるかもしれない……、と気弱になりつつも、私なりに考える弊社が抱える課題を挙げ、ぜひ、ゆうこすさんと一緒にそれを解決したいという、私の思いを綴りました。

私の熱意が通じたのか、幸いにもお引き受けいただき、今回の企画を実現させることができたのでした!

なぜ「ゆうこす」にお願いしたかったのか

ゆうこすさんへの依頼メールにも書いた「弊社が抱える課題」とは、ずばり、10~20代女性の来店客数が減っているということです。

東急ハンズは、今年で創業42年。40代から上の世代の方には、「困ったときは東急ハンズだよね」と仰っていただけることが多く、暮らしの中で何か困ったことがあったときに行くお店のひとつとして「東急ハンズ」を選んでいただいています。

ところが、そのブランドイメージがない10~20代の女性のお客様にとっては、ロフトさんやプラザさんとの違いを理解いただけてない状況があります。また、弊社としても10~20代の女性向けの施策に力を入れていなかったため、東急ハンズに行ったことがないという方も多いのではないかと思います。

とは言っても、東急ハンズにも、10~20代の女性に興味を持っていただける商品は数多くありますし、商品知識が豊富なスタッフがいるという部分では他社よりも一歩抜きんでているといった自負もあります。

そういったことを伝えるために、これまでもオウンドメディアやInstagram、TwitterなどのSNSを活用してきましたが、従来通りの施策ではあくまでも既存顧客へのお知らせになってしまい、新規顧客獲得、特に若い女性に振り向いてもらうのは難しかったのです。

そこで、東急ハンズが今一番アプローチしたい層に絶対的な人気と知名度を誇るゆうこすさんのお力をお借りして、「東急ハンズにも来てみてね!」ということを、お知らせしたいと思ったのです。

いったい何を伝えるべきか?

今回の企画をお引き受けいただく返事を頂いた2週間後、マネージャーさんも同席して、ゆうこすさんご本人と直接お会いして打ち合わせをしました。生ゆうこす…かわいくて、終始ドキドキしました。

私は当初、多忙だろうから電話での打ち合わせを考えていたのですが、先方からお声掛けいただき、直接会ってお話をすることになりました。

これは、後から考えると、感覚や温度感を共有するうえで、とても大事なことだったと思います。明確なイメージを共有できないまま、だらだらと電話やメールの回数を重ねるくらいなら、直接会ってきっちりイメージを決めて、その代わり1回で終わらせる方が、ずっと無駄がない。この後何度も思い知らされることになるのですが、つくづく、ゆうこすさんのプロ意識に感心させられたのでした。

買い物を楽しんでもらう様子をInstagramでライブ配信する企画を立てたものの……

行ったことがないお店にわざわざ足を運んでもらうには、まずはどんなお店か知ってもらうことがファーストステップと考え、ゆうこすさんに店内でお買い物を楽しんでもらう様子をInstagramでライブ配信する企画になりました。

ライブ配信だと、見ているファンの方とリアルタイムで双方向のコミュニケーションが取れるし、準備にかかる時間も最小限でOK! 一石二鳥なんです。また、場所をお店にしたのは、ゆうこすさんと一緒に東急ハンズでお買い物をしている気分を味わってもらいたかったから。東急ハンズに来たことがない方に、どんなお店かがゆうこすさんを通して伝わりやすいと思ったからです。

ところが、ゆうこすさんから、

ただお買い物するだけだったら、ロフトさんでやっても同じじゃないですか?

との冷静なツッコミが入って、うーんと頭を抱えることに。化粧品やスキンケアなど普段ゆうこすさんが紹介しているビューティ系の売り場でライブ配信をしよう! となったのですが、その売り場にある商品は東急ハンズもロフトさんもプラザさんも、そう大差はありません。さすが、ゆうこすさん、鋭い……。

東急ハンズにしかないもの、東急ハンズだからあるものとは何だろう……と悩んだ結果、「スタッフの豊富な商品知識」が差別化ポイントではないかと、打ち合わせで提案。ゆうこすさんから「それはわかりやすいですね!」と仰っていただき、ライブ配信の舞台である新宿店のスタッフに、ゆうこすさんの接客をお願いしました。

ライブ配信実施! 驚きの結果に……

ライブ配信は9月7日。配信開始時刻は、新宿店閉店後の21時半からでしたが、朝からソワソワが止まりませんでした。これほどの影響力を持つ方とコラボをしたことがなかったので、どんな反響があるのか、楽しみでもあり、怖くもありました。

事前告知がゆうこすさんのアカウントでされたのを見たときには、もう逃げられないんだな、と。同時に、ファンの方のリアクションもあって、楽しみにされていることに緊張がさらに高まりました。

ちなみに、事前告知は、InstagramとTwitterの両アカウントで、専用ハッシュタグ(#ゆうこすハンズジャック)を書いてもらったうえで、投稿してくださいました。実は、事前告知のお願いはこちらからはしていなかったにも関わらずです。最大限見てもらえるための配慮にプロ意識の高さを感じました。

私の緊張をよそに、ゆうこすさんはきっちり時間通りに待ち合わせ場所に現れ、簡単な最終確認を行い、ライブ配信がスタート。あれよあれよと言う間に終わりました。

ライブ配信の様子

私にとっては、あっという間の1時間。ゆうこすさんはとても楽しそうにお買い物をしていて、見ているファンの方もそんなゆうこすさんを見て喜んでいるコメントで、マネージャーさんたちも、接客を担当した新宿店のスタッフも終始笑顔で、ハッピーなひとときでした。

そして、なによりもビックリしたのは、画面の左上に表示される視聴者数です。事前の告知効果で最初からすごい数字でしたが、配信中もぐんぐん増えていき、常時2,500人くらいが見ているという状況。最終的に、1時間の合計視聴者数は数万人。Instagramライブ配信は、ライブ配信終了後はストーリーズとして24時間だけ公開されますが、最終的な再生数はなんと数十万視聴……。

ライブ配信でゆうこすさんが選んだものをプレゼントする企画も実施したのですが、プレゼントの応募コメントには「東急ハンズっていろいろあるんだね」「東急ハンズに買い物に行きたい」といった内容や、ライブ配信に出演してもらった新宿店のスタッフにも好意的なコメントをいただき、今回の訴求ポイントの1つである「スタッフのよさ」をアピールすることもできたのではないかと思います。

なぜ大成功だったのか

実は、今回の企画では数値的なKPIを設けていなかったのですが、ゆうこすさんの普段のライブ配信での視聴者数から判断して、視聴者数5,000人以上は行くだろうな……という予想を立てていました。ところが、結果は、その数倍。

ゆうこすさんも、「こんなに再生されたのは初めて」と言ってくださいました。東急ハンズでは、これまでにも、Instagramライブ配信は実施したことがありますが、もちろん、こんな数字は初めてです。

さて、なぜ、こんな予想外の結果を出すことができたのか。改めて考えてみたいと思います。

人選がばっちりだった

ゆうこすさんにお任せしてよかったです! プロ意識がすばらしく高く、今後別のインフルエンサーの方にお願いする場合の、私の中のハードルが上がりました(笑)

プレゼント企画がマストだった

ライブ配信後の盛り上がりをTwitter上で作ることができました! 同時にライブ配信の感想もたくさん得られて、今後の参考にもなりました。

訴求目的を明確にしておき事前にイメージの共有をしておけた(打ち合わせ重要)

打ち合わせでお話しした取扱商品の豊富さ、スタッフの知識については、ライブ配信中もたびたび伝えていただけました。それも言わされている感なく、伝えてくださるのがゆうこすさんのすごいところです。

いくつかの反省点

もちろん、反省すべきこともありました。

事前告知をこちらでも最大限するべきだった

弊社のTwitterアカウントでリツイートするという基本的なことが抜けておりました……。もったいないことをしてしまった……。

社内にも最大限告知するべきだった

後から紹介された商品や、視聴数などの数値だけを伝えても、ライブ配信の熱量は伝わらないので、ビューティ担当のスタッフだけでも見てもらえるように伝えておくべきだったと思います。

「ゆうこすが紹介しました」コーナーを作りたかった

ライブ配信で紹介した商品をまとめて紹介する売り場を作れば、ライブ配信を見ていた人はほしいと思った商品がわかりやすく、見ていない人も「ゆうこすとハンズがコラボしている」ということを知ってもらえるきっかけになったんじゃないかと思います(なかなか調整が必要な部分ではありますが……)。

著名人コラボのポイントで留意すべきポイントまとめ

1. 依頼する人のアカウントを見る

一番の基本ですが、たいていの方は複数のSNSアカウントをお持ちなので、そのすべてをフォローしてチェックしましょう。日々の投稿はもちろんですが、できれば過去の投稿もさかのぼれる限り目を通すべきです。また、コメント欄も見ましょう。

それによって、どんな方で、どんなことに興味を持っていて、ファンはどんな方が多いのかがわかります。日々チェックすることで、おのずとどういう施策をお願いできそうなのか想像できるので、ミスマッチが起きづらくなり、いい結果が生まれやすくなると思います。

2. 施策はファンベースで

私はゆうこすさんのアカウントをフォローしていて、日頃から見ていましたが、「ファンが大事」という言葉が重要なキーワードだと感じたので、依頼メールを書くとき、打ち合わせで提案するときも、「ゆうこすさんのファンの方に喜んでもらえそうか」を意識して提案していました。

もちろん、施策の最大の目的は「ゆうこすさんのことが大好きな若い女性に向けて東急ハンズの存在を訴求する」ことですが、それを一番にしてしまっては、ファンをたくさん持っている有名人を起用する意味がありません。ファンの存在を無視した施策はご本人も気分が乗らないだろうし、ファンの方もガッカリで結果エンゲージメントしない、と負の連鎖になります。

3. 打ち合わせは1回!(でも、必ずやる)

著名な方は言わずもがな多忙です。でも、やはり直接会っての打ち合わせは、必ずやるべきでしょう。私も今回はゆうこすさんは多忙すぎるだろうから、打ち合わせなしで、電話でお話しできればいいと思っていましたが、事前にきちんと目的やイメージを共有しておくことの重要性を実感しました。だからこそ、1回しかないチャンスを無駄にしないためにも、打ち合わせ前にきちんと施策の目標をはっきりさせておき、施策イメージもできるだけ考えておくことが重要です。なんとなく有名人を使っておけばPRになるでしょといったことでは、よい結果は得られないと思います。

◇◇◇

たった1回のライブ配信でこんなにも学ぶことがあったゆうこすさんとのコラボ。今回、この記事を通して振り返ってみることで、より気づきを得ることができました。この気づきがあなたの著名人コラボ施策に少しでもお役に立てれば幸いです! また、記事にすることをご快諾いただいたゆうこすさん、ありがとうございました!

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

リードジェネレーション
リードは潜在顧客のことで、ある特定の商品、サービスに関心がありそうなユーザーもし ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]