人間の情報探索行動に関するおすすめ本は?
ひとりで頑張るSEO担当者さんの悩みに答える本連載。今回の質問は「人間の情報探索行動に関するおすすめ本は?」です。この回答は「中公新書から2003年に出された三輪眞紀子先生の『情報検索のスキル』がおすすめ」です。
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に対する回答は
「中公新書から2003年に出された三輪眞紀子先生の『情報検索のスキル』がおすすめ」です
情報探索のツールは変わっても人は情報を探す
今回の相談はペンネーム「igs」さんからのもので、とてもいい着眼点の相談です。検索エンジンが今の姿でなくなったり、または検索エンジンそのものが使われなくなったりしたとしても、人が情報を探す行動をとらなくなることはないだろうという考えからの質問でした。「現在の検索エンジン」を知るところから少しレイヤーを上げて、「人間の情報探索行動」について深く知りたいということです。
また、igsさんは知りたいことの例として「人は情報を探すとき、どういうふうになると満足し、どういう行動をとるのか」をあげていました。こうしたテーマについて学んだり考えたりするのに本当にぴったりの本があります。中公新書から2003年に出された三輪眞紀子先生の『情報検索のスキル — 未知の問題をどう解くか』です。
情報を探す行為=生きること
この『情報検索のスキル』は、情報探索行動と情報問題解決をよりスマートにこなすためのスキルについて書かれた本ですが、情報探索行動を通じて探し手の知識や思考や感情がどのように変化していくのか、またそれが社会的にどんな意味をもつのかといった深いテーマにも踏み込んでいて、新書版のコンパクトな書籍なのに中身は本当に充実しています。筆者のバイブルのひとつです。
たとえば、冒頭に近いところには、検索サイトや知人に質問して知識を獲得し、もともとあった自らの知識を次々と変化させていくことについて書かれています。少し引用してみます。
知識が変化するにつれて新たな疑問が生まれ、求める情報も変化する。ひとつの情報源から満足すべき情報が得られないと、別の情報源を使ってさらに情報を求める、という具合に、目的を達成するまで情報を探し続け問題解決に取り組み続ける場合もあれば、途中で諦めて目的を放棄する場合もある。(p.2より引用)
また、p.16には、人間は新たな知識を探索し、得ることで自身の知識を変化させ続けるものだとし、まさに「情報を探す行為=生きること」だということ、情報探索行動の重要性が書かれています。
人間は生きている間、常に情報を得て既存知識を変化させ、新たな知識を生み出し、それを使って会話をしたり、ものを書いたり、決断を下したりしている。このようにして、人間はその生涯を通じて情報を得ながら学習し続けるのである。だから、人間にとって、情報を探し活用する能力はまさしく、生きるために不可欠な能力なのである。(p.16より引用)
いかがでしょうか。igsさんのご希望に沿いそうならいいんですが。なお、著者の三輪先生は研究者であり実務者であり教育者でもある方ですが、この本は学術論文のような難解なものではなく、一般向けに平易に書かれていて、その点でも非常に助かります。
まとめ
さて、ここまで紹介してきたこの『情報検索のスキル』ですが、おすすめの良書ではあるものの問題もあります。刊行が2003年と古いために、もう新品では入手できず、現在流通している古本の在庫が切れたらもう入手できないのです。さいわい、この記事の執筆時点では大手オンライン古書店などに在庫があるようでした。うまく入手できることを願っています。
P.S.
本コーナーでは、読者の質問にお答えしています。誰にも聞けずに困っていること、現場で感じるふとした疑問など、どしどし質問をお寄せください。
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