[特集]アクセス解析 “超” 基礎講座
あなたは会社のウェブサイトの姿が見えていますか?
目指せ給料アップ!
悩める担当者を救うアクセス解析「基本中の基本」
その1 ~なぜ必要なの?
Web担でも繰り返し言っていることだが、ウェブビジネスにおいてアクセス解析はなくてはならない存在だ。というのも、現実の商売とは違い、ウェブサイトをただ眺めていても、どれだけの人がどんな興味をもってウェブサイトに来てくれたのかはわからないからだ。
ところが、まったくアクセス解析をしていないという企業は決して珍しくない。アクセス解析ではいったい何ができて、どれだけ大切なのかを、まず基礎から理解していこう。
「基本中の基本」その1は、アクセス解析をするのがなぜWeb担当者の給料アップにつながるのか、なぜWeb担当者の仕事を楽にするのかの入り口だ。
予算獲得、人手獲得の第一歩――それがアクセス解析
アクセス解析と聞くと難しそうと思うかもしれないが、まずこの「解析」という漢字がいけない。これが難しそうな雰囲気をかもし出しているのだ。サーバーのことなどの技術的なことがわからないとできないように感じてしまうし、統計のことがわからないと手を付けられないようなイメージがあるかもしれない。
だが心配はいらない。今や無料から商用向けまでさまざまなツールがあるので、ツールさえ導入すればサーバーのことがわからなくてもアクセス解析はできるのだ。統計学の知識などまったくなくても、ツールが読みやすいレポートを発行してくれる。中には定期的にエクセル形式のレポートで発行してくれる機能があるツールもある。
アクセス解析にはまったく技術的な知識はいらない。「自分のサイトを良くしたい」という気持ちだけがあればいいのだ。
図1は、「ウェブサイト活用の障害」=「Web担当者の悩み」なのだが、アクセス解析はこの悩みを解決する第一歩となる。1位から3位の「専任の人材を置く余裕がない」「担当者が不足している」「サーバーを運用できるノウハウをもつ人材が社内にいない」はいずれも人手不足に関する問題だ。4位の「予算が増えない、あるいはコスト削減が厳しい状況である」はズバリ予算不足である。現場の悩みは人手不足と予算不足に集約している。
このWeb担当者の悩みを解決するには上司、ひいては経営層に自分(たち)の仕事の重要性を理解してもらうしかない。消費者に直接商品を買ってもらう業種の経営層なら、売上という具体的な数字があるので、なんとなくウェブサイトがビジネスに役立っているようなイメージを持っているかもしれない。しかし、BtoBビジネスの経営層は「商売は足で稼ぐもの。営業が一番」と、ウェブサイトを過小評価しているケースが多いようだ。
Web担当者の悩みは、「ウェブサイトがビジネスに実際に役立っている」と経営層に実感してもらって解決しよう。そのためには、アクセス解析を行って数字を明らかにし、ウェブサイトの効果測定指標を明確にした上で経営層を説得するのだ。
多くの企業はアクセス解析を実施していないばかりか、図2にあるように「(指標は)特にない」とか、「商品・サービスの販売額や成約数」となってしまっている。これではウェブサイトの重要性や自分の仕事の効果を正当に評価してもらえない。
ウェブサイトや自分(たち)の仕事の効果を自覚してもらわない限り、人材も予算も投入してもらえないし自分の評価も上がってはいかない。
自分の仕事は誰しも正当に評価されたいもの。多くの会社では経営層が「インターネットがない時代」に生きてきているので、ウェブサイトの効用に関する実感がないのではないだろうか。「自社のウェブサイトにはこんなに多くの人が訪れているのか」とか、「こんなに熱心に当社のことを見ていてくれるのか」という実感を経営層に持ってもらうためには、数字の提示がどうしても必要だ。
アクセス解析は、Web担当者の仕事を正当に評価してもらい、人材や予算を十分に投入してもらうことでWeb担当者が仕事をしやすくするために役立つものなのである。
アクセス解析はサイトの健康診断
アクセス解析とは、ウェブサイトの健康診断のことだ。健康診断の結果票にはあなたの身長や体重、視力などが掲載されているし、血圧の数値も載っている。肉眼ではわからない内臓の数値も掲載されていて、正常か異常かわかるようになっている。
健康診断は病院に行かないとできないけれど、自分のカラダに何か心配なことがある人は毎日血圧を測ったりして健康管理をしているはず。この診断を自分のサイトに関して行うのがアクセス解析だ。
自分の体調や体力なら自覚症状を感じて病院に行くこともできるが、ウェブサイトは常時アクセス解析を行っていないと自覚症状すら表れないのだ。
ではアクセス解析をしないどうなるのか。Web担当者はウェブサイトを「勘」で運営していくことになる。身長や体重に相当するページビュー数や訪問者数も知らないし、血のめぐりに相当するサイト内の動線設計が良いのか悪いのかもわからない。内臓に相当する1つひとつのサイト内のパーツの状況も全然わからないからだ。
そんな担当者のために、この特集では、次のようなことがわかるようにしていく。
- アクセス解析をやってどんな数字を拾えばいいのか
- その数字を拾うためにはどんなツールを使えばいいのか
- 拾った数字をどんなレポートにまとめればいいのか
- どのように数字を読んで、どんなケースにはどんな改善策を打てばいいのか
カイゼンする気がないならアクセス解析はやるだけムダ
あなたが実店舗を運営していれば、来客数の変化を感じて天気のせいにしてみたり、他店の大安売りのせいにしてみたり、何か理由を探すだろう。来客の男女比を感じて男性にもっと来客してほしければ何か手を打とうと思うだろう。多くの人が手には取るけれど売れない商品もあれば、いつもあっという間に売れていく商品もあるだろう。こういうことをまったく感じないで店舗の運営はできないはずだ。こんなことが気になり、何かを実行するのはなんとか自分のお店を良くしようと思うからのはず。
アクセス解析も「サイトなんかありさえすればいいのであって特に手を入れてまでも良くする必要なんかない」と思っている人には不要なことだ。いくらアクセス解析をしても「カイゼンする気がない」「カイゼンのための予算をとっていない」のなら、アクセス解析はまったくムダになってしまう。アクセス解析をしてしまうと、もれなく必ず改善点が見つかってしまう。これはまず確実な事実だ。
予算やマンパワーが足りなくて、症状があっても手を打てそうもないなら、本当に悲しい気持ちになるからアクセス解析なんかしない方がいい。
まず現状把握から始めよう
「PDCAサイクル」という言葉を知っているだろうか。仕事は企画を立てて(PLAN)実行し(DO)、効果を検証して(CHECK)、さらにカイゼンしていく(ACTION)ということだ(図3)。
これをウェブサイトに当てはめると、次のようになる。
- ユーザー・ターゲットを考えてユーザーに好まれるウェブサイトを考える
- ウェブサイトを制作する
- アクセス解析を行って効果を検証する
- ウェブサイトの構成やクリエイティブ、訪問者の集客法などを修正する
しかし、ありがちなのは、次のような……
- 企業の都合で内容や構成が「送り手本意」のウェブサイトを企画する
- 制作は、外部のスタッフにまかせきり
- 効果測定をしないので効果がは不明
- いっぺん作ったら作りっぱなし
という「DO」しっぱなしの状態である。この事態はなんとか避けよう。
まず現状を把握してみて、訪問者数が足りないならキーワード広告やSEOなどで集客対策を頑張ったり、商品販売サイトならアフィリエイトを考えてみたりするのもいいかもしれない。
すでに実施しているSEMの効果に問題があるのなら広告出稿の方法を考え直してみる。せっかく集客しても1ページだけちらっと見ただけで返ってしまう人が多いページがあれば、LPOをする。離脱率(そのページを最後にサイトから出て行ってしまう人の多いページ)が高いページを発見したらそのページを修正するなど、問題点さえ見つかれば改善策は山ほどあるのだ。これを繰り返していくと本当に良いサイトになっていく。
次の記事では、「基本中の基本その2」として、もっと具体的なアクセス解析の手法や項目に関して触れるので、公開までお待ちいただきたい。
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