53%のユーザーが動画CMに影響されて商品購入を検討する/インターネット広告に関する調査
Webマーケティングガイドでは、インターネット動画中に流れるCMに関する調査を企画し、株式会社エルゴ・ブレインズが運営するターゲットリサーチの会員に対してインターネット調査を行った。
その結果、65.5%のユーザーが、興味を持って動画広告中に掲載されているバナー広告をクリックしており、クリックの理由に関しては、タレント出演や広告のデザインなどといった広告の見た目のことよりも、商品・サービス自体に魅力を感じたからと答えたユーザーが多かった。
また、動画広告をきっかけにして商品を購入したことがあるユーザーは15.8%だったが、今後、動画広告をきっかけに商品の購入に影響があると回答したユーザーは53.0%に及んだ。
この記事内の「動画広告」とは、インターネットで配信されている動画(Yahoo!動画やGyaOなど)中に挿入されている動画CMのことを差している。
※調査概要に関しては、記事の末尾に記載している。
60%以上のユーザーは動画広告中バナー広告のクリック経験あり
まず、インターネット上の動画広告(以下、動画広告)内に表示されているバナーをクリックしたことがあるかについて尋ねた(Q1)。その結果、3分の2近くのユーザーがバナー広告をクリックしたことがあることがわかった。
GyaOの登場によりインターネットで動画コンテンツを見ることはより身近な存在になり、GyaOに追随するかたちでリリースされたYahoo!動画は、Yahoo!というポータルサイトの誘導力を活かし、YouTubeとともに「インターネットで動画を見る」ということを浸透させた。
また、旅行代理店のH.I.Sが動画サイト「WORNA VISION(ワーナビジョン)」を2007年6月にスタートしたことなどから、今後ポータルサイトをもたない企業も商品やサービスの魅力をより効果的に伝えるために動画という選択肢をとりつつあると考えられる。
タレント出演や凝ったデザインが興味を引くとは限らない!
動画広告中のバナーをクリックしたことがあると答えたユーザーにその理由を尋ねたところ、「商品・サービスに興味を持ったから」が39.4%と最も多く、次いで「何となく」が19.3%となった(Q2)。
「好きなタレントが起用されていた」や「魅力的な広告だったから」といった、広告に魅力を感じてクリックしたユーザーは少なく、やはりユーザーは、商品やサービスそのものに興味を持ってクリックをしていると考えられる。
ブランディングや認知度を目的とした広告ならば凝ったデザインや斬新なアイデアを取り入れることも大切だが、クリックしてもらい寺社サイトに誘導することを目的とした広告ならば商品やサービスの魅力をより詳細にユーザーに伝える必要もある。そういった点でも、商品やサービスをわかりやすく示すことができる動画広告が注目されているのではないだろうか。
興味を持った商品・サービスは「商品名」で検索
動画広告で紹介されていた商品やサービスについて検索をしたことがあるか尋ねたところ、「検索したことはない」と回答したユーザーが最も多く65.2%となった(Q3)。また検索ワードについては「商品名」で98人(全体ユーザーの30.4%)、「カテゴリー」は12人(同3.7%)となった。
動画広告は「印象に残る」
動画広告と動画広告中に掲載されているバナーを見て、それぞれどんな印象を受けたかを聞いた(Q4)。その結果動画広告に関しては、「印象に残る」が34.2%と最も多く、次いで「特になし」が32.6%、「広告商品をイメージしやすい」が26.1%とつ続いた。
また、動画広告中に掲載されているバナーに関しては、「特になし」が50.3%と最も多く、次いで「印象に残る」が15.2%、「検索してみたくなる」が14.3%となった。
動画広告中に掲載されているバナーに関しては、それ程ユーザーの関心を引いているとは言いがたいが、動画広告は「印象に残る」、「広告商品をイメージしやすい」、「広告内容がわかりやすい」など、ユーザーが商品への認知や理解をしやすい傾向にあることが伺える。
さらに、「TVCMにはない魅力がある」と答えたユーザーが16.1%いることから、マス(大衆)的要素の強いTVとは違う、動画広告のオリジナリティがユーザーに評価されていると言えるのではないだろうか。
15.8%のユーザーが、動画広告中のバナーを見て商品購入したことがある
今まで動画広告または動画広告中に掲載されているバナーをきっかけに、その商品を購入した経験があるかを尋ねた(Q5)。すると、「まったく購入したことがない」が84.2%となった。
一方、一度は動画広告または動画広告中に掲載されるバナーをきっかけに商品を購入した経験があると回答したユーザーは合わせて15.8%おり、これは回答者の約6人に1人が購入していることになる。ビデオリサーチインタラクティブのインターネット・オーディエンス測定調査(以下図)によれば、近年、動画自体の認知率が徐々に高まってきており、そのことを考慮すれば、15.8%が動画広告をきっかけに商品を購入していることもうなずけるだろう。
特に、YouTubeやGoogle Videoなどの動画サイトの利用者の増加が著しく、今回の調査で「まったく購入したことがない」と回答したユーザーの中にも、今後動画広告をきっかけに商品の購入に至るユーザーも現れると考えられる(※青線はYouTube)。
主要動画サイト接触状況時系列推移(ビデオリサーチインタラクティブ)
手軽に購入できる商品が人気
商品を購入したことがあると回答したユーザー51人に対して、具体的にどのようなジャンルの商品を購入したか尋ねた(Q6)。ただし、標本の大きさが不十分なため、あくまでも参考としてとらえてほしい。
動画広告が購買行動に影響を与えると思うユーザーは50.9%
今後動画広告を見て、商品やサービスの購入に影響を受けることがあると思うか尋ねたところ、「まああると思う」が50.9%と半数を超える結果となった(Q7)。
「非常にあると思う」の1.2%を合わせると、動画広告を見て今後商品やサービスの購入に影響を受けると回答したユーザーは52.1%おり、2人に1人が将来的に動画広告から何らかの影響を受けると感じていることが明らかになった。
電通総研が発表した2007年~2011年のインターネット広告費に関する試算(PDF)によれば、インターネット広告費全体の見通しは、2011年に7,558億円と5年間で2倍以上に拡大すると予測されており、その中でも動画広告やストリーミング広告を含む固定ネット広告費の規模の拡大が注目されている。
まだ歴史の浅い動画広告だが、ユーザーのネット上での行動特性をデータとして蓄積していけば、ユーザーニーズに合った動画広告が提供できるようになり、ユーザーと広告主双方の需要がさらに高まることが期待される。
インターネット広告は雑誌広告よりも影響力あり
商品やサービスの購入に最も影響を受ける広告は何かを尋ねたところ、「TVCM」が47.5%と他の広告に大きく差をつける結果となり、次いで、「雑誌広告」が13.4%、「新聞広告」が7.8%と続いた(Q8)。
注目すべき点は、最も影響を受ける広告に「インターネットの静止画広告」が7.5%、「インターネットの動画広告」が7.1%あげられたという点で、インターネット広告でくくった場合、その割合は14.6%となり2位の雑誌広告を凌いでいる。
近年、インターネット広告費は広告全体の費用の推移から見てもその成長が著しく、それにともないユーザーの広告に対する認識や意識が変化していることが伺える。
また、TVCMがマスメディアの広告としてその地位を不動のものにしている一方、ある程度ターゲットが決められる広告というくくりでは、雑誌広告や新聞広告よりもインターネット広告が有効であると言えるのではないだろうか。
TVCMと動画広告、「3~4回」見ると印象に残る
TVCMとインターネット広告(動画広告を含む)について、同じCMが流れていたら何回くらい見ると印象に残るのか尋ねた(Q9)。すると、TVCMでは「1~2回」が24.5%、「3~4回」が41.0%となり、インターネット広告では「1~2回」が31.7%、「3~4回」が37.6%という結果になった。
4回以下で見てみると、TVCMが65.5%、インターネット広告が69.3%となり、TVCMと同様に認知されやすいということがわかる。
この理由の1つとしては、TVCMがユーザーにとって「受動的」な広告メディアであるのに対して、インターネット広告はユーザーが興味・関心のあるジャンルをクリックし、その際に流れる「能動的」な広告メディアであることが多いため、ユーザーが認知しやすいのではないかと考えられる。
TVCMは認知向上の面では圧倒的に強いメディアだが、近年クライアントはTVCMの広告効果が薄れてきている(費用対効果がわかりにくい)と感じているようだ。それは、ただTVCMで認知度を上げるだけではなく、新規獲得数や販売数を高めるなどの売上に直結するようなプロモーション戦略が必要だという認識にシフトしてきているからかもしれない(※参照:ネット広告の流れからマス広告を見る)。
そして、その為にはターゲットをセグメント化できるインターネット広告を活用し、目的によって広告媒体を使い分けていくことが重要であることから、TVや新聞、雑誌、ラジオで認知度や露出度を高め、インターネット広告で自社サイトへ誘導し、商品購入や新規獲得に結び付けていくクロスメディア戦略が頻繁に行われるようになってきている。今後、クロスメディア効果を期待するクライアントの割合が高まれば、インターネットCMの利用は多くなると考えられる。(※参照:【ヤマハ】ネットはすべての広告のハブ的存在、新しい広告形態「動画」によって、インターネット広告はどう変わる?)
「邪魔」だけど、「見たいときに見られる」動画広告
動画広告の満足点と不満足点について自由回答形式で尋ねたものをまとめた(Q10)。
その結果満足点として、「見たいときに見られる」が50人と最も多く、次いで「わかりやすい」と「商品がわかりやすい」がそれぞれ25人と続く結果になった。また、不満足点に関しては「邪魔である」が48人と最も多く、次いで「CMが長い」が27人、「回線によっては重い」が21人と続く結果になった。
(自由回答、n=322)
<満足点> | <不満足点> | ||||
---|---|---|---|---|---|
1位 | 見たいときに見られる | 50人 | 1位 | 邪魔である | 48人 |
2位 | わかりやすい | 26人 | 2位 | CMが長い | 27人 |
3位 | 商品がわかりやすい | 25人 | 3位 | 回線によっては重い | 21人 |
4位 | 印象に残る | 19人 | 4位 | 安易な作り | 19人 |
5位 | TVCMにはない魅力がある | 15人 | 5位 | 画面が見にくい | 15人 |
6位 | 検索できる | 12人 | 6位 | CMまでの待ち時間が長い | 13人 |
7位 | おもしろい | 9人 | 7位 | スキップできない | 9人 |
8位 | 何度も見ることができる | 8人 | 8位 | おもしろくない | 8人 |
9位 | 商品のHPに行くことができる | 7人 | 8位 | 面倒くさい | 8人 |
9位 | 情報が速い | 7人 | 10位 | 同じCMが何度も流れる | 7人 |
9位 | 高画質・高音質 | 7人 | 11位 | PC環境によって見られない | 6人 |
12位 | 無料でいろいろな情報が得られる | 4人 | 11位 | スピードが遅い | 6人 |
13位 | 直接購入できる | 3人 | 13位 | 印象に残らない | 5人 |
13位 | 詳しい情報が手に入る | 3人 | 13位 | 音量にムラがある | 5人 |
インターネット広告はTVCMと異なり、自由に何度も見ることができるなどの理由で、ユーザーがプラスの印象を抱いていると考えられる。
さらに少数ではあるが、「そのまま商品のHPに行くことができる」ことや「直接購入できる」ことなど、TVCMをきっかけに行動を起こすときよりもユーザーの手間が省ける点も挙がっており、このようなインターネットならではの利点がユーザーの満足につながっていると考えられる。
その一方、単なる障害物になる恐れがあったり、画像や音量の精度が良くない、PC環境の良し悪しによって見られないなどのマイナス意見もあった。
インターネット広告は、現時点でまだ発展途上にあると言えるが、今後この調査でわかったユーザーの不満足点をプラスへと転換していくことが、ユーザーのインターネット広告への興味・関心を喚起させるきっかけになると考えられる。
調査概要
- サンプル数:322
- 調査期間:2007年06月07日(木)~2007年06月11日(月)
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査機関:ターゲットリサーチ
- 対象者:16歳~49歳の男女
- 本調査は、業界の全般的な調査であり、あくまでも指標となるものですので、参考データとしてご活用下さい。業種や取り扱っている商品、またユーザーの属性によっても調査結果は大きく異なると考えられます。
- より詳細な業界動向や、ターゲット層に合わせたリサーチにご興味をお持ちの方は、リサーチアウトソーシングサービスをご活用ください。
- 本調査結果の単純集計を無料でご提供させていただきます。
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今回の調査対象は、16~49歳の男女で、インターネットの動画広告を見たことがあるインターネットユーザー322人。男女比は男性が42.5%、女性が57.5%となった。
コメント
322人のサンプルというのは統計推計学的に意...
題名のとおりなんですけれど、どうなんでしょう?
Web担編集部が考える調査資料の読み方
編集部の安田です。
コメントありがとうございます。
マーケティング調査データに関しては、利用目的によって必要な精度が異なりますので、各調査に記載されている調査概要をご覧のうえ、あなたのデータ利用目的に合った調査であるかをご判断のうえご利用ください。
というだけでは紋切り型の役に立たないコメントレスになってしまいますので、編集部としての見解をば少し。ただし、私は統計の専門家ではありませんので、万が一記述内容に誤りがあったら申し訳ありません。編集部が現状でどう考えているかをお伝えするために、理解の限りで書いています。もし誤りがある場合、ご指摘いただけると幸いです。
322人という標本の大きさですが、まったくもって意味がないとは考えていません。
たとえば、ニコニコ動画の訪問者数283万9000人、YouTubeの訪問者1017万4000人の合計約1300万人を母集団だと考えてみましょう。
信頼度95%で許容誤差5%とすると、必要な標本の大きさは、想定母比率25%の場合288、想定母比率50%の場合でも384となります。
もちろん5%という許容誤差をどうとらえるかにもよりますが、この連載枠に関しては、調査結果を可能な限り正確にすることよりも、さまざまな角度から調査を行って参考となるデータを数多く示すことを重視しているとお考えください。
つまり、たとえば許容誤差を2%とした場合、想定母比率50%の場合に必要な標本の大きさは2401となります。もちろんその規模で調査を行えばそれだけ調査にかかるコストが増大します。編集部としては、調査の規模を大きくするよりも、他の調査を行うほうが読者にとって有意義だという判断をしています。そのため、調査を企画して原稿を書かれているセプテーニさんに対して編集部から標本の大きさを大きくするような要求をしていないという意味です。
ただし、ここに示した考えは、Web担当者Forumで連載しているWebマーケティングガイドの枠に関するWeb担編集部の方針であることに注意してください。Web担にはこれ以外にもさまざまな調査データが掲載されていますし、インプレスR&DではWeb担以外にもインターネットメディア総合研究所が企画して行っている各種の利用動向調査など、さまざまな調査を行っています。これらは、各研究所/編集部の判断によって、それぞれの調査の目的に即した手法によって調査が実施されていますので、その意図や方針に関しては、各調査の調査概要や調査の目的などの記述を参照してください。