クリエイティブな職種とは? 豪華クリエイター陣が語る良い就職とキャリア
「クリエイティブな仕事」と聞いて、何をイメージするだろうか。東日本大震災から5年が過ぎた2016年4月8日、Web広告研究会は第10回「東北セミボラ(セミナー&ボランティア)」を宮城県・せんだいメディアテークで開催。今回は、初の学生向けセミナーのほか、「カスタマージャーニー」や「未来のクリエイティブ」などをテーマにした3つのパネルディスカッションを実施した。
現役クリエイター陣が語る「クリエイティブな職種」とは
セミナー第一部のテーマは、「クリエイティブで、いきる・はたらく・つくる ~地元に残る vs 東京に出る、どちらがいい?~」。東北セミボラでは初めて、学生を対象にした就職セミナーとして、第一線で活躍する4人のクリエイターが、クリエイティブな職種とは何か、地元と東京どちらで働くべきかなど議論を交わした。
そもそもWeb業界におけるクリエイティブな仕事とは何か、石村氏は「Web制作の仕事の幅は大きく広がっている。テクノロジーとクリエイティブを融合させる領域にも広がり、スマホやウェアラブルで表現の幅も広がり、IoTやAIで技術の幅も広がっている」と、Web制作系の職種を次の図のように示し、「仕事の幅が広がったことで各職種の専門性が高くなり、分業化が進んできている」と説明する。
梅原氏は、会社の規模が小さいため、図1のなかで、アートディレクター、テクニカルディレクター、ディレクターを兼任しているという。なかでも、ディレクターは専門性が高く、他の職種がやらないことをすべて行うため行動力が必要だと話す。
稲葉氏は、アートディレクターとして、制作物のコンセプトを視覚で示すことを仕事にしている。
仙台で働く佐藤氏は、やはり会社の規模が小さいため、図1で示されたディレクターの上流にある仕事をすべて兼任することが多く、分業は3~5人構成の場合が多いと答えている。
「Web制作におけるクリエイティブとは何か」について、石村氏は、Web広告系では利用者の「知りたい」「どうすればいいのか」などのニーズに応えるとともに「利用者に気づきを与え、新しい意識や行動を生む」ための成果物を実現することだと述べる。
続けて、Webサービスやアプリ系では、利用者の「買いたい/行きたい/つながりたい」などのニーズを解決する成果物を出すことで、「新しい行動を実現する」ことがクリエイティブであると説明する。
また、制作の場面においても、「戦略」「企画」「設計/デザイン」「実装」といったフェーズがあるが、戦略や企画はもちろんのこと、設計/デザイン/実装もゼロから自分の頭で考えて形にしていく点がクリエイティブな仕事だと述べた。
クリエイターにとって良い就職とは
パネルディスカッションは、「クリエイターとして良い就職とは何か」へと話題に移っていく。
就職は、長いクリエイター人生のスタートとなるもので、就職先で何ができるかが重要となってくる。また、実力次第の職種であり、実力を磨くためには、「面白い仕事で成果を出す」「スキルアップする」「ポートフォリオを増やす」「キャリアアップ」といった、良いサイクルを生み出すことが重要だという。
では、良い職場を選んで就職するためには、どのような視点が必要だろうか。面接することが多い梅原氏は、やりたいことがなく、何も目標が定まらないなかで面接に来る人もいるが、たとえば、将来フリーランスになれるくらいの実力をつけたいといった目標を持ち、キャリアのステップになるかという視点で就職する会社を選ぶ手もあると話す。
また、仕事量や勉強の考え方について答えた稲葉氏は、成長したいのであれば、短期間にプレッシャーをかけて、無理をしてでも仕事をしたほうが身につくものは多いと語る。稲葉氏は、新卒で広告代理店に入った1年目から、先輩について大きなクライアントを担当し、大量の仕事をがむしゃらにこなしていたという。その結果、数年後に振り返ったときに、同じ年齢のクリエイターと比較して得られたものが多いと感じたと、自身の経験を語った。
佐藤氏も、案件を通じてしかクリエイターとして成長はできないと話し、積極的に自ら手を挙げることが重要で、新人の場合は、何かあってもサポートしてくれる人が周りにいるため、チャレンジするべきだと説明した。
世界市場と地元地域で働くことの違い
では、就職する場所は、たとえば地元の仙台でいいのだろうか。東京に出て行った場合や、海外(たとえばロンドン)で働く場合とどのような違いがあるのだろうか。
まず、東京代表として梅原氏は、東京は職場の選択肢、クライアントの選択肢、案件の選択肢、案件の規模、実力者に会うチャンス、イベントのすべてが多く向上心にもつながると話す。ただし、チャンスを掴めるかどうかは自分次第だ。
日本の広告代理店に勤めた後に、イギリスのデザイン事務所に就職した稲葉氏は、海外で働く面白さは、市場が世界規模であり、手がけたクリエイティブが世界に流通することだと話す。たとえば、自分がデザインしたパッケージが、イギリスはもちろん、地元の名古屋アップルストアにも並ぶなど、世界中に広がることは、グローバルならではの仕事だ。
技術者・営業・企画・代理店・制作など、さまざまな職場と職能を経験した後に、地元の仙台で働く佐藤氏は、仙台のような地方都市では、地域課題を解決することが重要だと話す。地域の魅力を発信することが重要で、たとえば、佐藤氏が所属するdmp社が手がけた仙台・宮城の伝統工芸を伝えるプロジェクト「手とてとテ」では、こけし職人の取材動画が世界で100万再生を超えた。それによって、海外からの注文や工房見学につながり、インバウンドの貢献に加え、海外に向けた新たな商品開発などにも携わることができたという。
また、佐藤氏は震災の記憶を伝えるために、被災地観光や防災教育にウェアラブルデバイスを活用するプロジェクトも立ち上げている。これらを行うことで、「アイデア」と「デザイン」と「テクノロジー」で、自らが属する「社会」や「地域」をもっとよくすることができ、CSR(社会的責任)やCSV(共有価値の創造)を成しえたという。
クリエイティブの地産地消も目指す佐藤氏は、地域の作り手が自ら地域課題の解決に取り組み、プライドを持って作ることが重要だと強調する。その熱量や志が、地域をこえてつながりを作るのだと話し、東京であっても地方であっても、面白い仕事に関われるかどうかは自分次第だと説明した。
面接で見たいのは、思考の過程やモノづくりへのこだわり
「どうすれば思う方向で就職できるのか」というテーマに対して、梅原氏は、自分が初めて就職活動したときの経験を語った。最初は、どう振る舞えばいいのかわからず、50社くらい面接してもまったく受からなかったのだが、素っ気なく扱われる会社がある一方で親身になってくれる会社もあることに気づいてから、面接を頑張るようになったと話す。
「条件がマッチする会社がわかるか」という質問を投げられた稲葉氏は、説明会で話を聞く機会がある一方で、どれだけ事前に情報を収集したとしても、実際に入ってみないとわからないことが多いと答えている。ミスマッチを避ける1つの手として、実際に働いてその会社を見ることができるインターンは、会社の雰囲気を感じることができるので有効だと説明した。また、足を使って人に会い、自分の価値観で評価することが重要だ。
面接時にポートフォリオのどこを見ているかについて、佐藤氏は、事例を数多く並べる必要はなく、それよりも思考過程などのポイントを示してほしいと話す。作品において、自身が果たした役割、制作時間、制作後の課題、次にチャレンジしたいことなどを書くことが重要だ。また、ポートフォリオ以外で知りたいことについて、梅原氏は、短い面接時間なので素直かどうかを見ていると話す。
稲葉氏は、ポートフォリオのクオリティはあまり重視していなく、最も大事なことは「何か作りたいモノがある人」だと話す。モノづくりに対する執着心が重要だと話す稲葉氏は、仕事をしていくなかで、うまくいかないこともでてくるが、自分が達成したいクオリティを生み出す気持ちがあるかないかによって、クリエイターとして成長する度合いが変わると、採用側の視点からアドバイスした。
Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:2016年4月8日開催 第10回東北セミナーレポート 第1部(2016/06/22)
ソーシャルもやってます!