高速PDCAを回すには、まずビジネスの解決スキルを学べ
高速PDCAを回すには、まずビジネスの解決スキルを学べ
四家先ほどからお話に出ている「ビジネス課題に対しての仮設立案」ですが、仮説にはどのくらいの精度を要求されていますか。どのくらい見えてきたら企画はGoになるのでしょうか。
室元まったく新しい分野に出ていくときには、ロジックさえしっかりしていれば仮説に精度は求めません。すべてのデータが事前にそろうわけがないですから。
四家なるほど。ではこうした仮説をもとに、これまで室元さんがかかわられてきたデジタル施策の成功率は、何割くらいなのでしょうか。
室元分野によって大きく違います。EC分野でいえば、課題をきっちり絞り込んでやったときは8割くらい成功しています。絞り込みが足りなかったときは3割いけばいい方だと思います。
四家Web担の読者さんの場合、上司が期待する成功率というか数字ってもっと厳しい気がするんですよね。
室元ただし、仮説をもとに行った施策ならば、なぜうまくいかなかったのかを判断できるんですよ。なので、7割失敗してもそこから成功に持っていきます。失敗した場合、課題を検証して改善するか、一度原点に戻して考えるかのどちらかです。原点に戻るときは、2か月かけて戻るんじゃなく、2週間でスピーディーに戻ります。
メンバーには「できるだけ多くの打席に立て」と言っています。ダメだったら何がダメだったかを考えて、形にして、高速PDCAを回す。そうすれば知見もたまりますし、本人の経験値も上がって、失敗する確率はおのずと減っていきます。
多くの打席に立てば、経験値が上がって失敗も減っていく
四家それが本来あるべき「やってみなはれ」ですよね。
室元そうなんです。とりあえず与えられた予算をどーんと使うのが「やってみなはれ」だと思っているのは間違いです(笑)。
四家ロジックがしっかりした仮説を立ててから打席に立つ。立って、ダメだったら修正をしてまたすぐに打席に立つ。ちなみに「高速PDCA」の「高速」って、どのくらいのスピードですか。
室元うちのメンバーには、「日次でデータを見て、週次で改善をしろ」と言っています。
四家なるほど、明快だ。すごいスピードですね。そのスピードを前提にして仕事の業務のフローや仕組みを組まないとならないですよね。
室元ええ、100%実現するのは困難です。でも、重要なものだけは絶対に高速で回せるように、Googleアナリティクスとかでいちいち詳細データを見るなと言っています。必要なものだけを見ろと。月次のレポートも「書くな」と言ってます。課題がハッキリしていれば、知るべき数字はいくつかだけのはずですから。
デジタルはあくまでも「課題を解決するための手段」でしかない
四家もう1つお伺いしたいのですが、デジタルは新しいものが出てくるスピードも速いですよね。ご自身の情報源としては何を重視されていますか。
室元各分野のエキスパートやキーマンに当たることです。BtoBビジネスに取り組んでいたときは、エレクトロニクスの分野でBtoBに強い企業の方に会いに行きました。ここでも飛び込みです(笑)。イベントなどで新しい企業の方に会うのも大切です。売り込まれるサービスの内容を検討するというよりも、「自分の抱えている課題を解決できる何か」を探しています。それは楽しみの1つですね。
四家最後に、今デジタル部署に配属されて何をすればいいのかと考えている方や、後に続く皆さんへのメッセージがあればお願いします。
室元デジタルだからどうのというよりも、「まず成功要因を考え、仮説を作り、ピンポイントにリソースを集中して、そして高速PDCAを回しましょう」とアドバイスしたいです。私がやっていることは、本当にそれしかないんです。
四家「課題解決にフォーカスしたときに、手段としてデジタルがある」ということですね。
室元そうです。デジタルの良いところは、ビジネス課題に対していかようにも対応できるところです。逆に、マスマーケティングではそれが非常に難しい。新ブランドを打ち出すとかいうならともかく、たとえば「飲食店にお客を呼びたい」という課題に対して、じゃあ雑誌を使って、テレビも使って……となると時間も工数もお金もかかってしまいます。デジタルなら、まずプロトタイプを作って高速PDCAを回してみて、良ければ規模を大きくする、ということが柔軟にできる。デジタルはビジネスをソリューションしやすい。いろいろな手段があるなかで、デジタルが一番使えるのではないかと思います。
四家今日はいろいろなお話をありがとうございました。
前後編まとめ
- まずは自分で試してみるのが第一歩
- 成功要因の仮説を立てずに取り組むのは一番の失敗パターン
- 課題を分解して組み立て直してから取り組むのが本当の「やってみなはれ」
- 社内教育は「課題の解決力」と「デジタルの知識」の2つを重視
- 高速PDCAサイクルを回すために、課題をクリアにして必要な数字だけを見る
ソーシャルメディア時代の「企業と顧客の新たなタッチポイント」で新企画を推進して実績を挙げている人々は、どのような経験を経て今に至ったのか? このコーナーでは、顧客とつながるようになったきっかけや体験などをアジャイルメディア・ネットワークの四家正紀がインタビューします。
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