Googleマイビジネス以外のサイテーション配信でビジビリティ65%増 ―― ローカルSEOの疑問に答える(前編)
ローカルSEOというと、Googleマイビジネスに意識がいきがちだ。しかし、グーグル以外のビジネスリスティングを活用することで集客の機会を65%も増やせるとしたら、どうだろうか?
この記事では、大規模な調査のデータをもとに、次のようなローカルSEOの疑問に専門家が答える:
- サイテーション※は依然として重要なのか
- 既存のローカルビジネスリスティング管理サービスに費用をかけるべきか
私たちの業界では、このテーマについて何年も前から答えをつかもうと努めているが、自らの見解を示せるほど大規模な調査が行われていないことに不満を持っていた。
私は次の相関について、個々の事例に基づく私個人の見解以上のものが欲しいと思っていた:
- ローカルビジネス情報の配信や管理
- ビジビリティやエンゲージメントの変化
だから、ローカル検索マーケティング会社Uberallとの話し合いによって、大規模な調査につながったことをうれしく思っている。
今回は、私が特に関心を持ったこの調査の結果を紹介する。
サイテーションをめぐる背景
専門家によると「サイテーションはパイの一切れ」
上記の画像は、Yelpに掲載されているレストランの構造化されたサイテーションである。レストランの連絡先といった基本情報だけでなく、次のような追加情報も含まれている:
- 評価
- レビュー
- 画像
10年前、サイテーションはローカル検索の有力な順位決定要因として考えられていた。しかし、ここ8年間ほどで、オーガニック検索要因の影響に関する認識が高まり、かつグーグルも独自のローカルビジネス情報や評判データへの依存を高めている。そのため、専門家らは次のように言っている:
サイテーションのぶんとして切り分けるパイの大きさが、小さくなってきている。
たとえば、ローカル検索順位決定要因に関する2020年の調査では、ローカルパックに影響を与える最も重要な7要素の中で、サイテーションに配分されているのは7%だった。回答者によると、サイテーションの現状は次のようなものだ:
サイテーションは今でもローカルビジネスにとって無視できない大きさではある。しかし、以前のように「超特大」というほどではない。
グーグルは、ディレクトリを利用して「視認性の高さ」を把握している
私のように、こうした進行中の調査に参加している人たちに意見を聞いたところ、次に確認するべきは、ディレクトリのサイテーションに関するグーグルの見解だ。
グーグルの公式解説「Googleのローカル検索結果のランキングを改善する方法」によると、グーグルはビジネスの知名度(「視認性の高さ」と呼ばれる特性)を把握する判断材料として、はっきりとディレクトリ(日本語訳では「店舗一覧」)を挙げている。
ローカルビジネスの検索順位でグーグルが考慮するとしている要因は、次の3つだ:
- 関連性
- 距離
- 視認性の高さ
要するにグーグルは、サイテーションは重要だと言っているのだ。
グーグルは現在も、サードパーティからの情報を取得している
サードパーティ(第三者)のレビュー情報を使用していることを検索結果画面で示すテストをグーグルが実施している。
こんな報告が、Sterling Skyのローカル検索フォーラムであった。
グーグルは、グーグル以外のソースから提供されるクチコミをさまざまな形で表示しながらテストしているが、これはその取り組みの重要な部分だ。
グーグルはずっと、サードパーティのプラットフォームやディレクトリをクロールして、ローカルビジネスリスティングのウェブ検索結果セクションに含める情報を収集している。サードパーティのレビュー情報を扱うのは、そうした長年にわたる取り組みにも沿ったものだ。
グーグルのWalled Garden(壁に囲まれた庭)の城壁は高くなり続けている。しかしそれでも、グーグルが現在もサードパーティからの情報を取得していることは明らかだ。
お待たせしました、大規模調査の結果データの時間です!
大規模な調査のデータで解説するというから読んだのに、肝心の「データ」がぜんぜん出てこないじゃないか!
そう思った方もいるだろう。ここから、重要な調査データを紹介していく。
調査を実施してくれたのはUberallだ。米国と欧州で数千社に及ぶ中小企業と大企業のローカルビジネス情報を調べて、次の2パターンそれぞれで結果を追跡した:
- 4大プラットフォーム(グーグル、アップル、Facebook、Bing)だけにデータを配信した場合
- これらのソースに加えて10件以上のディレクトリに配信した場合
※大規模な調査を実施するうえで最も問題となるのは、データセットや環境を完全には制御できないことだ。そのため、このレポートでは次の点に注意してほしい:
- 調査前の検索順位を考慮に入れられていない
- 分析期間中にこれらのブランドが利用していたかもしれない他のSEO戦術を制御できていない
これほどの規模の調査を他の要素と完全に切り離して実施することはほぼ不可能なので、Mozとしても常に、次のことを断っているのを指摘しておきたい:
相関関係と因果関係は一致しない
とはいえ、これほどの量のデータを利用することで明らかになった顕著な傾向を見てみよう。
データ: マップビューで65%増加する機会を逃すべきではない理由
このグラフは、米国と欧州の中小企業と大企業のローカルビジネス情報で構成されている(合計6000件)。
- 緑色は4大プラットフォームだけに配信した場合
- 赤色は13か月のテスト期間中にローカルビジネスデータを10件以上のディレクトリに送信した場合
比較すると、ローカルパックのビジビリティに驚くほど大きな違いが出ている。ローカルパックのビジビリティの向上とは、特定のパック内における順位ではなく、そのビジネスが全体としてより多くのパックに表示されることと定義される。
さまざまなディレクトリにローカルビジネスのデータを配信した場合は、しなかった場合に比べて、ビジビリティが2桁も高かった:
- 直接検索89%増: ビジネスを名前または住所で検索したユーザー
- 間接検索77%増: 特定のビジネスを名前で検索するのではなく、カテゴリで検索するか、または製品やサービスを検索してビジネスを発見したユーザー
- マップビュー65%増: Googleマップでリスティングが表示された回数
- 検索ビュー91%増: グーグルの検索サービスでリスティングが表示された回数
リスティングに対して消費者が取り得る行動(「エンゲージメント」と呼ばれる指標)において、こうしたローカルビジビリティの向上が6000件のローカルビジネス情報で顕著な伸びを見せたことと、どのように相関していたかを次に示す。
コンシューマージャーニーにおいて、これらの指標の次にくるのが「購入」であることを思い出してほしい。となると、4大プラットフォーム以外のディレクトリにも配信していた場合の次の数字は、非常に魅力的だろう:
- 道案内のリクエストが102%増加
- そのビジネスに電話する人が13%増加
- そのビジネスのウェブサイトを訪問する人が87%増加
ローカルビジネスのオーナーやマーケターは通常、売り上げにつながるという理由から、どの指標であれ1桁でも増やそうと懸命に取り組んでいる。業界によっては、リードが1件増えるだけで、売り上げが数千ドルや数万ドル、あるいは数十万ドル増えることもある。
私がこれまでにコンサルティングしたローカルビジネスのうち、この調査で示されているような増加のチャンスに飛びつかないビジネスなど、はっきり言って思いつかない。
ビジビリティを最大化するディレクトリ配信件数は?
最後に、私が特に関心を持ったポイントは、大企業でも中小企業でも、約31~40件のディレクトリに配信することが、総検索数の最適な増加を実現するスイートスポットであることが示されている点だ。
このテストでは、中小企業800件と大企業6000件のローカルビジネス情報を調査した。この種の配信では、増加率は平均55%~58%だった。このことから、ビジネスオーナーはローカルビジネスの情報を数百ものプラットフォームに配信する必要がないことがわかる。31件~40件ほどで十分だろう。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。前半となる今回は、サイテーションの重要性を示すデータを紹介した。次回は、サイテーションが大きな影響を及ぼす仕組みと、中小企業に対する筆者からのアドバイスを見ていく。
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