一人BtoBマーケでも達成! Web広告の1/3の費用で1.4倍のリード獲得 オウンドメディア成功事例
BtoBのリード獲得に有効とされる「コンテンツマーケティング」や「オウンドメディア」だが、ニッチな領域では難しいとの声も聞かれる。しかし、介護専門のシフト・勤怠管理サービス「CWS for Care」を展開するインフォコムは、オウンドメディアを運用し、Web広告よりも効率的なリード獲得に成功しているという。
「Web担当者Forum ミーティング 2024 春」に登壇したインフォコムの栁原良子氏に、コンテンツマーケの施策支援を行うFaber Companyの月岡克博氏がインタビューし、運用のコツや成果を出す秘訣などを分析・解説した。
介護×シフト管理のニッチな領域でオウンドメディアを運営
インフォコムは、「めちゃコミック」などスマートフォン向けのコンテンツ配信に加え、医療機関・企業・公共機関向けソリューション事業などを展開するITサービス企業だ。栁原良子氏は、ヘルスケア事業において介護職のシフト・勤怠管理サービス「CWS for Care」のマーケティングを2021年より担当し、ホットリードの獲得に貢献してきた。
「CWS for Care」は、介護特有の複雑な制度やルールに対応し、介護職員のシフト作成や勤怠管理を効率化するサービスだ。ニッチな領域ながら、必要とする人にリーチできればしっかりと訴求が叶い、成約率も高い。リード獲得施策の中心に位置づけられているのが、同社のBtoB向けオウンドメディア「介護の人事労務ナビ」だ。介護事業者の人事労務の課題解決を中心に、あらゆる観点から介護の経営をサポートすることを目的とし、介護業界の各種専門家が監修するコンテンツで信頼性を高めている。
元々あった別のメディアを移管して、2022年10月から本格運用開始後、1年数ヶ月で総記事数は約600を超え、直近では月ごとにSEO記事を5本、専門性を意識した記事を1本と、ハイスピードでコンテンツを増やしている。月平均25万セッション、獲得リード数は数百に上るという。
広告に比べて1.4倍のホットリードを獲得
「介護の人事労務ナビ」は、本格運用開始から1年3か月経った2024年1月時点で、開始時に比べて10倍のホットリードを獲得、サービスサイトへの送客も4倍と、着実に成果を出している。さらに、驚異的なのは広告で獲得するホットリードに比べて、メディア経由のホットリード獲得数は1.4倍と多く、それでいて獲得コストは3分の1に削減できているという。
オウンドメディアを活用したコンテンツマーケティングは成果が見えるまで時間がかかるため、会社からも不安の声が出やすい施策です。集客をコンバージョンに結びつけるのに苦労しましたが、こうして数字が上がり、事業成果につながったことを嬉しく思っています(栁原氏)
コンテンツマーケ施策を支援するFaber Companyの月岡氏は、成果が得られたポイントとして下記の3つをあげ、それぞれにおけるインフォコムの具体的な取り組みの紹介とともに、その要諦について分析・解説した。
- ニッチな領域でのコンテンツ戦略
- 担当1人でも効率的に回す体制作り
- コンテンツからのリード獲得施策
成功のポイント①
BtoBのニッチな領域でのコンテンツ戦略
月岡氏は、BtoBのニッチな領域でのコンテンツマーケティングについて、「やらない手はない。むしろ、やらなければうまくいくはずがない」と断言する。
BtoBのニッチな領域には、「専門メディアが少ない」「案件単価が高い」「意思決定に関係する人が多く検討期間が長い」などの特徴があります。そうした領域でターゲットにリーチするためには、自ら専門性の高いコンテンツを発信し、さまざまなチャネルで長期間にわたって関係性を保ち、意思決定における影響力を高めることが鍵になります。ニッチな領域でこそ、コンテンツ戦略次第で大きな効果が生まれるのです(月岡氏)
インフォコムは、全国に点在する介護事業者に対して、訪問営業だけでの新規開拓の難しさもあり、Webマーケティングの必要性を感じていた。しかしWeb広告だけに頼った集客では、コストがかかり続けるということへの課題感も持っていた。そこで、長期的な視点に基づき、費用対効果を高めつつ潜在層にリーチできる施策として、SEOやコンテンツマーケティングの必要性をはじめから考えており、オウンドメディアを活用したリード獲得施策立案に至った。
月岡氏は「広告でのリーチ獲得は、即効性はあるものの絶対数が少ないニッチな領域ではすぐに上限が来てしまう可能性があります。定期的にコンテンツにリーチする層を作り、その中からリードを獲得する“インバウンド的な施策”としてコンテンツマーケティングが効果的です」と解説した。
成功のポイント②
担当1人でも効率的に回す体制作り
BtoBのオウンドメディアの運営において重要なのが「SEO対策」だろう。広告は継続的なコストが求められ、常に一定の費用を投じなければ同じコンバージョンを得られない。また、SNSからの集客は、業界や職種などによっては必ずしも向いているとは限らない。しかしSEOは、時間はかかるものの、良質なコンテンツが蓄積されれば流入やコンバージョンも取れるようになっていく。
栁原氏は、「広告だけではニーズが明確になったお客様しかリーチができません。長期的な目線で、潜在層の時点から接点を持ちたいと考えていました。まずは、ニーズが発生した際、一番に当社を思い出していただく“第1想起”になるためにはコンテンツを活用したSEO施策が必須でした」と振り返る。
しかし、栁原氏は「CWS for Care」以外のサービスのマーケティング支援も行いながら、オウンドメディア運用の1人担当でもあったため、コンテンツ制作のコントロールやSEO対策にかけられる時間に限りがあった。そこで、栁原氏が効率的にSEOを意識したオウンドメディア運営ができるよう導入したのが、Faber Companyの提供するSEOツール「ミエルカSEO」だった。栁原氏自身が前職でインターフェイスの使いやすさとカスタマーサクセスチームの質の高さを実感していたことが「ミエルカSEO」導入の決め手となった。
オウンドメディア立ち上げの際は、まずコンテンツを揃えて、ある程度メディアが軌道に乗ってからツールを活用しよう、と考える方が多い印象です。ただ、スタート時からツールとサポートを活用することができれば、効率的にコンテンツ制作やPDCAを回すことができて、素早く効果を出すことができるのではないでしょうか(月岡氏)
SEOの効率化に有効な「キーワードの整理」と「ツールの活用」
月岡氏は、介護の人事労務ナビのSEO施策において、「キーワードの考え方の整理ができていたことがすばらしい」と評する。
栁原氏は、キーワードを「集客用」「啓発用」「コンバージョン用」の3つに分類し、それぞれの「業界マッチ度」「サービスマッチ度」「検索ボリューム」「フェーズ」によって対応優先度を決定している。
「集客用」「啓発用」「コンバージョン用」のコンテンツをバランスよく展開
たとえば、「介護報酬改定2024」という検索キーワードを見てみよう。介護業界に特有のキーワードであるため、「業界マッチ度」は“高”、介護報酬改定の際にはシフト作成担当者が影響を受けることから「サービスのマッチ度」は“中”、月間の検索回数が1万を超えるため「検索ボリューム」は“高”と判断され、認知を獲得するための「集客用」キーワードとして優先順位が高いと整理される。
一方、「介護 シフト作成」のキーワードは、「業界マッチ度」「サービスマッチ度」ともに“高”だが、「検索ボリューム」はかなり少なく、優先順位としては“低”い。この場合、「検索ボリューム」だけで判断すると、対策すべきキーワードから除外されがちだが、栁原氏は、フェーズの進んだ顧客に対する「コンバージョン用」として優先順位が高いと判断し、コンテンツ化を図ったという。
そして、集客とコンバージョンをつなぐものとして位置づけているのが「啓発用」コンテンツだ。これはたとえば、その企業が持つ「困りごと」について気付きを与える記事などを指す。
コンバージョン用コンテンツは、検索ボリュームが少ないキーワードが多く、優先順位を下げられる傾向にありますが、集客用、啓発用とバランスよく入れる必要があります(月岡氏)
「検索ニーズ分析」機能でユーザーのニーズを把握
栁原氏が、これらのキーワードの整理に活用したのが、「ミエルカSEO」だ。ミエルカSEOの「検索ニーズ分析」機能を使えば、検索流入キーワードの傾向やニーズを分析でき、狙うべきキーワードの発見に役立つ。
ここで、「スピーチロック」という介護業界特有のキーワードの施策例を見てみよう。スピーチロックとは、言葉による身体的または精神的な行動抑制を指す。「言葉の拘束」とも呼ばれており、介護現場において望ましくない行動とされている。たとえば、「ちょっと待って」という言葉のかけ方も、ユーザーの行動を抑制するスピーチロックとみなされる。
ミエルカSEOで、検索キーワードを分析すると、検索数が円の大きさで、検索意図の近さが円の距離で表示される。「スピーチロック」を分析した結果が下図だ。
これを見ると、スピーチロックというキーワードのすぐ近くに、「とは」「具体例」などのキーワードがあり、「概念を知りたい」「具体例を知りたい」という検索ニーズがあることが読み取れる。また、そこから近い距離に「言い換え」というキーワードがあり、スピーチロックになる声掛けをどう言い換えればよいか知りたいというニーズもあることがわかる。
そこで栁原氏は、スピーチロックの概念を説明するとともに、具体例や対策を盛り込んだ記事を作成した。その後、検索流入数が増えた際には、その記事に「スピーチロックの言い換え」についての一覧表のダウンロードコンテンツを付け加えることで、よりユーザーのニーズを満たし、リード獲得にもつながる記事とすることができた。
ライターへの指示書にも「ミエルカSEO」を活用
栁原氏は、記事を書くライターに指示を行う際に、読者のペルソナと導くべきゴールとともに、「タイトル」「ディスクリプション」「リード文」「見出し構成」「必要な図表」などを記載した「構成案」を共有している。この構成案にも、ミエルカSEOの検索意図分析シートを添付し、意図の統一を図っているという。
さらに、外部ライターと長く付き合っていくことを前提に、業界に関する勉強会や修正箇所をフィードバック・共有する会議などを実施し、原稿の品質を高めている。
月岡氏は「1回で完ぺきな原稿を書けるライターはそうそういません。時間をかけて一緒に成長していくつもりで付き合っていくことが望ましいです。ライターさんたちに読者像や制作意図、検索ニーズなどを理解してもらうためにも、ミエルカSEOのアウトプットを活用すると効率的でしょう」と語る。
作りっぱなしではなく、コンテンツや施策を管理することが成果につながる
インフォコムでは、記事を作りっぱなしにせず、コンテンツを蓄積していく効果の確認や、サイト全体を俯瞰して見るために、キーワードやURL、タイトル、内部リンクなどを一覧化した「コンテンツリスト」を作成している。改善施策のシート、サーチコンソールのデータなどとも連携しており、どのページを可視化して改善すべきかをピックアップできるようになっている。
コンテンツリストを作成・管理し、施策と連携させて管理することが日々のPDCAにつながり、ひいては成果につながります。まだ作成していないところは、ぜひコンテンツリストを作成してほしいです(月岡氏)
成功のポイント③
コンテンツからのリード獲得施策
最後のポイントである、「コンテンツからのリード獲得施策」においては、コンテンツに合わせたCTA(Call To Action:行動喚起)をユーザー意図に合わせて用意することが重要となる。
内容が同じPDFでもCTAの言い回しをカスタマイズ
たとえば、介護の人事労務ナビにおいては、ダウンロード資料として、サービス資料のほかにホワイトペーパーを用意している。このホワイトペーパーは、内容が同じものであっても、コンテンツ前後の文脈に合わせて一つ一つCTAの内容をカスタマイズしているという。
オウンドメディアで人気の記事をホワイトペーパー化
また、オウンドメディア上で人気の記事をホワイトペーパー化することもあるという。
前述した「スピーチロック」の記事も、流入数が多かったためホワイトペーパー化を検討し、ミエルカSEOで確認したところ、確かに「言い換えPDF」や「チェックリスト」などのニーズが確認できた。そこで、「スピーチロック言い換え法」というホワイトペーパーを作成したところ、コンバージョン率が約8%に達した。PDFからのコンバージョン率は通常1%以下であることに鑑みると、驚異的な数字と言ってよいだろう。
栁原氏は、「サービスとはやや離れたところにあるキーワードですが、しっかりとターゲットに刺さるコンテンツとして多くの方にダウンロードされました。」と分析する。
月岡氏も「アクセスの多いコンテンツがあっても、CTAとしてサービス資料しか用意していないオウンドメディアが多い印象です。コンテンツ来訪者はサービスを導入したいわけではないので、もう少し違う角度から、興味を持ってもらえそうなダウンロードコンテンツを用意することも考えてみてはどうでしょう」と語った。
ヒートマップ分析でCTAを細かく調整
介護の人事労務ナビでは、ヒートマップ分析を活用したコンテンツ改善にも取り組んでいる。
アクセス解析ツールでコンテンツの平均滞在時間を把握するだけでは、どう改善したらよいかわかりにくいが、ヒートマップツールでユーザー行動を分析すると改善箇所を発見しやすい。コンバージョン改善につながるだけでなく、ユーザー行動をよくしていくことはSEOにも影響する。
ミエルカシリーズにもUI/UX改善ツール「ミエルカヒートマップ」があるので、SEOと合わせて取り組むことで大きな成果が得られる可能性がある。一度こうしたツールで分析してみるとよいだろう。
メールでのナーチャリングにもコンテンツを活用
介護の人事労務ナビでは、獲得したリードに対し、メールでナーチャリングを行っている。この際に、ただ製品を紹介するのではなく、人気ランキングや人気記事などを送り、その下にサービス資料への誘導を掲載するなどして、コンテンツ誘導とダウンロード促進を行っているという。
栁原氏は、「どのコンテンツを送ればどのくらいのコンバージョンが取れるか、だいたいの数字がわかってきていますので、獲得リード数が不足したらメールを1本追加で送るなどして、コントロールしています」と語る。いいコンテンツができればメルマガなどでの活用も有効であり、使い道を増やしていくことで費用対効果をより高めることが可能である。コンテンツを活用して複数チャネルでユーザーにリーチする施策は常日頃から考えたいところだ。
月岡氏は最後に、「良質なコンテンツが蓄積されたオウンドメディアを活用すれば、マーケティング施策の打ち手は増えていきます。ミエルカSEOを活用すれば、良質なコンテンツを作るのに必要なユーザーニーズ分析やサイト分析を効率化できます。キーワードの意図のまとまりを自動でグルーピングしたり、Google Analytics 4(GA4)のデータを分析したり、便利機能が豊富に揃っています。さらには、AIを活用したコンテンツ案抽出でマーケティング担当者を強力にバックアップしていきます」とアピールした。
栁原氏も、「事業会社のマーケターは1人ぼっちで、孤独になりやすい。そんな時に力になってくれるFaber Companyさんのようなパートナーを探すのが大切です。また、SEOはテクニカルにツールでもまわしていける部分もありますが、その先にいるユーザーを必ずイメージして取り組むことが大事だと思います」と語り、セッションのまとめとした。
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