店舗もECも“パズル”の1つのピース。「どっちがいいか」ではなく「どっちもあって完成できる」後編
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インタビュー前編 では、川添さんのご経歴と店舗と本部の関係について語ってもらいました。後編では、店舗とECの良い関係ということについてお話をいただきました。
【販売チャネルで喧嘩をしている場合ではない】
原嶋:
いままで店舗側についてお聞きしていましたが、企業にとってECサイトはどういう位置づけで進めていけば良いと思いますか?
川添さん:
「チャネル間で、社内の喧嘩をしている場合じゃない」と。店舗でもECサイトでも、自分たちのブランドと顧客とをつなげるチャネルであることには変わりない。だから、「店舗が良い」「ECが良い」という議論が起きること自体はそれぞれの主張として理解できるのですが、お客様にとっては全く関係ないことです。
店舗のスタッフもお客様の視点では「そういえば水が切れていたな。帰りに買わないと」って思ったときに、ワンクリックで買えて自宅まで運んでくれるECサイトは便利だとは思っているはずです。
お客様目線で考えれば「これはいい施策だな。うちでもやれないかな」と感じる気がします。「チャネルで喧嘩するな」、要はこうした感覚を持って欲しいという想いも込められていると考えています。そこには評価も紐づく話なので、その整備も必要です。
原嶋:
「チャネルで喧嘩するな」は良い言葉ですね。店舗とECサイトが強力なタッグを組めた事例はありますか?
川添さん:
前職のクレッジの場合は、実店舗でできることは全て自社ECでできるようにしていました。販売日やキャンペーンは店頭とECが同じ日からスタートし、さらにECサイトを見れば、欲しい商品がどの店舗にあるかどうかもわかる。そうなると、ある意味自社ECサイトは購入するための決済機能と、商品を確認するためのカタログ機能が先鋭化されてきて、お客様はサイトを見てから次の行動にうつるようになってきたと捉えています。その状況ができてくると、店舗スタッフから「ECを見て来店する方が増えてきました」とフィードバックの声が増えてきました。まさに相乗効果が生まれてきた事例です。
一方で、補完関係の話もあると思っています。例えば、ECサイトである商品の売上げが突然伸びたとしましょう。社内や外部のデータを見ると、たまたまテレビで取り上げられていたことがわかった。これを「売れて良かったね」で終わってしまいがちなんですが、実はそれは検証としても次の打ち手としてもデータが乏しいわけです。
EC側で行けば、テレビ放映時にどの流入元からの購入が増えているかはわかります。想定しやすいのはテレビ→検索→サイト→商品となるはずですが、検索経由が少なければ、何かがおかしいかもしれません。検索経由での流入があっても購入まで至っていなければ、サイト→商品の導線が悪かったのかもしれません。これは次の対策につなげられます。しかし、ECサイトでは、「テレビで放映された商品のどこに興味をもったのか?」「放映される前からその商品を知っていたのか?」とか、定性的な情報の深堀は難しいわけです。
実はこうした情報は店舗側も定性的に持っている。定量に変えるには手入力をしないといけませんが、そこをECが補うことができればパズルが組み合わせると、仮説と検証のストーリーが見えてくることがあります。店舗もECも“パズル”のピースなんですよね。「どっちがいいか」ではなく、チャネル特性として補完関係があると思っています。
原嶋:
「どっちもあって完成できる」というのが業界全体に浸透していくといいですね。
川添さん:
10年前は、まだ企業が自社ECサイトを構えて、今のようなデジタル施策を推進している状況というのは一般的ではありませんでした。ユーザーとしても、どこかネット通販で購入することに不安があったと思います。しかし、いまは、「ECサイトを使ったことがない」という人の方が少なくなってきているでしょう。そして、「売れた」という情報だけではなく、どのページを見てどういう購入導線を辿ったかが細かく見られる。それに応じて自動的にシナリオメールを送付して、その後の行動でさらにコミュニケーションを自動に変えることは可能です。テクノロジーが進歩しているし、伝え方の精度も上がってきているんです。でも、「サイト全体の購入率が3~4倍になった」という話はほとんどありません。特に実店舗ありきのECサイトは。
デジタルの良いところは、掲載する情報量の制約はほとんどありません。お客様は自分が見たい情報だけ取捨選択することもできます。でも、それってインタラクティブなコミュニケーションではないですよね。最大公約数は見つけられても、足りなかったことや、他の商品とのつながり・背景やブランドの背景のようなストーリーまでは伝えにくい。それができるのがまさに接客です。今少しずつ事例が出てきているチャットコマースも、大きな可能性を秘めています。店舗はゼロから情報を覚える必要があるわけではなく、ECサイトの情報を接客に利用すればよいし、ECには足りない部分を埋めていって、それをEC側にフィードバックできるよりよい関係になってきます。
ECと店舗の「どっちもあってブランドとしての体験を高めることができる」ので、販売チャネル毎気にするのではなく、仕組みとしても考え方としても“融合”していって一緒に売上を最大化していきたいですね。
原嶋:
PatheeのプロダクトでECと店舗が一緒に売上を最大化するようにしていきたいですね。川添さんにもご協力いただければと思っています。
■川添隆氏 プロフィール
1982年、佐賀県生まれ。千葉大学デザイン工学科卒。2005年サンエー・インターナショナルに入社。販売、営業アシスタントとして店舗営業支援に携わる。2006年クラウンジュエルに入社。ささげ業務からサイト内企画、バイヤー、PR、新規事業のブランド展開の卸営業などに携わる。2010年クレッジに入社。EC事業責任者としてEC売上を2年で2倍以上に拡大し、LINE@活用やショールーミング店舗を手掛ける。その後、2013年メガネスーパーに入社。EC事業、オムニチャネル推進、デジタルマーケティング・コミュニケーション、デジタルを活用した店舗支援を統括。EC事業の売上を5年で4.4倍、メガネスーパー公式通販サイトは月商約8倍に拡大。2017年よりビジョナリーホールディングスの業務を兼務。2017年よりエバン合同会社を設立。2018年にビジョナリーホールディングスの執行役員に就任。
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