ゴールドラッシュは終わらない。掘り起こされていない最後の鉱脈
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の十参
バブル崩壊から学んだこと
本日3月14日はホワイト・デー。3倍返しという恐ろしい風説が流布されています。当時、好意を寄せていた女性から渦中の不二家のパラソルチョコを貰い、お返しとして真っ赤なバラの花束にして返したことがあります。「バブルへGO!」の時代の100倍返しで、陽気に浮かれて無駄遣いばかりしていました。
間もなく「バブル崩壊」が訪れ知ったのは「煽ったものの責任」は問われることなく、ババを引き消息不明となった人が罵られ、100倍返しになんの見返りも期待できないことでした。
喧伝するビジネスモデルと現実との乖離
拙著『Web2.0が殺すもの』には「バブル」への警鐘を込めております。喧伝する人には相応のビジネスモデルがあるのです。ホワイト・デーの3倍返しも、バレンタインデーのチョコレートだって「大人の事情」があり、同時にかのバブルが「イタ飯」を日本に定着させたように「Web2.0」のすべてを否定できないところが巧妙なのです。
メディアやコンサルタントなど「情報」を商品としている人は、「情報の上流」に居なければ商売にならないので喧伝しますが、実態が必ずしも連動しているとは限りません。
Web担当者には、メディアと上手に付き合っていくための玉と石の選択眼が求められます。
ブログの隆盛とセットで語られるように、パソコンは誰でも使えるようになり、誰もが情報発信する時代になったといわれていますが本当でしょうか。
マイコンの時代からの永遠課題
パソコンは難しい。
マイコンと呼ばれた「PC6001」を知り、私が自転車で秋葉原に通っていた時代から同種の言葉ありました。四半世紀たった今の「パソコン」の使いやすさは、当時のマイコンと比べると単細胞生物と人類ほどの開きがあるのですが、今でもやはり「難しい」という声は少なくありません。余談ですが「マイコン」とはマイクロコンピュータに「MyComputer(私の)」をかけた言葉だと、すがやみつる先生の『こんにちはマイコン』にありました。
ウィンドウズ95が登場して12年。今年はビスタと操作性は格段に進化しています。しかし、誰でも使えるようになったかというと疑問符が浮かんできます。
パソコンの進化と「簡単」の尺度
炊飯ジャーが種火をおこして、釜戸で炊きあげ、蒸らすといった一連の作業を「簡単」にしてくれました。オートマティック車は「半クラッチ」や「ギアチェンジ」の煩わしさから解放してくれました。
「簡単化」をパソコンで見てみると、「インターネットが見られる」あたりがピークで、それ以降の多機能化についてこられない人を多く見かけます。それは「簡単」になった一方、機能も比例して増えており、多機能を必要としない人にとって携帯電話で十分となるのです。
仕事で使うとなると電子メールや、エクセルで簡単な表ぐらいは作れなければというのが、なかば常識と語られますが「パソコンが難しい」と信じて疑わない人は、今でも電話とFAX、コクヨのキャンパスノートを活用して元気に商売をしています。
メールアドレスを増やすために電話回線を増やす?
40万人を超える地方都市で、手広く洋服販売を手掛けている企業の話です。
長男が店を継ぎ、次男は支店をとなりました。どうせやるなら新しい市場の開拓をしようということで「インターネット支店」を出すことに。新しいお店のために「店舗」を探し始めました。
これを知った知人が、「ホームページを出すだけなら、最初は今の事務所でメールアドレスだけ変えて始めればいいじゃないか」とアドバイスすると、「じゃぁ電話回線をもうひとつ引かないといけないね」屈託のない笑顔で答えます。次男にとってはメールアドレス=電話番号なのです。
笑い話と思うでしょうが実話です。そしてこれで大丈夫かと心配になりますが、リアルな商談に強いこの企業は、堅調に業績を拡大し「支店を出そうか」という話になっているのです。
リアルビジネスという未発掘の鉱脈
「Web担当者Forum」読者の方には信じられないでしょうが、電子メールの「アカウント」を自分で設定できない人は珍しくありません。mixiにSNS、CGMだとネット界の「トップランナー」は囃し立てますが、それ以前の人たちがこの国にはまだ眠っています。
最初に「ネットに詳しくない」という鉱脈に目をつけたのは「楽天市場」です。月5万円(当時)の定額制は中小企業のレジスターに入っているぐらいの金額ですし、なにより「ワープロが打てれば出店できる」という触れ込みに心を動かされた企業を多く集めて大ブレイクしたのです。
そして今、発掘を待っているのが「ワープロすら打てない企業」です。
ゴールドラッシュで儲ける方法
顧客基盤が確立され、売り上げがあり、「パソコンが苦手」という会社がIT界の最後の金脈です。
事務処理などでパソコンは導入されていても、事務員の手慰み程度で、「ホームページで集客? できるわけないだろ」という企業でも儲かっているところは沢山あります。中小企業に限っていうとこちらのほうが多いというのが街角からの実感です。
IT業界は大企業か個人利用者のどちらかを指向しますが、それは「ネットサービス」を提供しているからです。しかし、ワープロすら打てない中小企業が知りたいのは、「商売用」としての利用方法なのです。もっというと「商売用」になることすら、未だ知らないのです。
この金脈の掘削方法は、「楽天市場モデル」もありますが、金を掘るのではなくツルハシとシャベルを売るというのも効果的です。また、「作業用に破れにくいズボンが欲しい」という声から、ジーパンを作ったリーバイスを目指すのも良いでしょう。
最後のゴールドラッシュはネットの最新技術やトレンドではないところに注目です。
♪今回のポイント
最後の鉱脈はワープロすら打てない人たち!
ネットリテラシーとビジネスセンスは別次元の話。
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