#65~#68 サービス立ち上げの達人に聞く初動集客の極意――伊藤将雄氏インタビュー
マーケ予算はチープ革命で増やす
まず行動してから効果をみる
サービス立ち上げの達人に聞く初動集客の極意
コンテンツサイトであれ、サービスサイトであれ、まずは人に知ってもらわなければ何も始まらない。数十サービスに携わった立ち上げの達人である伊藤将雄氏にその極意を聞いた。
伊藤 将雄氏
みんなの就職活動日記やSimpleAPIなど、数々の人気サービスを立ち上げる。現在、みんなの就職株式会社 代表取締役。
編集部 たくさんのサービスを立ち上げられているそうですね。
伊藤 受託のものも含めれば30~40サービスに携わっています。代表的なものは「みんなの就職活動日記」と「SimpleAPI」ですね。いわゆるCGM系のサービスが多いですね。
編集部 「みんなの就職~」は個人で始めて会社を作ったほどの人気ですが。
伊藤 サイトが伸びたのは97~98年ぐらいの就職難のときと、ブロードバンドが普及した02年ごろと、時代の影響が大きいですね。ただ、CGMなので、就職活動が大変な時期にニーズが高まってユーザーが増えるとコンテンツが自然に増えるので、後に社会的な状況が変わっても、そのコンテンツでユーザーを集められる構造です。
編集部 当時からCGMだったのは?
伊藤 出版社などでは編集部とライターさん、取材先を合わせて100人ぐらいのプロがアウトプットを作りますよね。そのやり方が適したメディアがある一方、数万人の素人さんがアウトプットを作るのが合うメディアもあると気づいたんです。たとえば就職なら新卒採用する数万社すべてに編集部が取材するのは不可能ですが、就職活動している学生さんの感じた情報を合わせればかなりの部分をカバーできます。プロがやるなら上位100社とかをしっかり取材するやり方になりますよね。当時は無茶だと言われましたよ、今だと逆に過当競争になっちゃってますが(笑)。
編集部 CGM系サイトで成功するには、企画・設計と運営・管理のどちらが重要?
伊藤 長い目で見ると設計や運営も大切ですが、最初にたとえば10万人ぐらいのユーザーを集めることが大切です。初速が乗らないとビジネス的には厳しいです。
編集部 その最初の人集めは?
伊藤 以前はSEOやクチコミでというののが効きましたが、今やもう決定打じゃなく手法の1つ。大々的に集めたければ、今はお金を使って広告も出すべきです。
「チープ革命」と言われるように、近年システムを作るコストが劇的に下がってますが、それで浮いたお金がマーケ費用に流れているんです。低コストで作れるので競合もどんどん増えますから当然ですよね。そのために、新規顧客の獲得コストは年々高くなっています。
編集部 アクセス向上の決定打はない?
伊藤 ないですね。細かいことの積み重ねが重要なので、考えられることを全部、ちゃんとお金をかけてやるべきです。やってから広告が効いたとかクチコミが強かったとか判断すればいいんですよ。だからKPIの設定や効果測定は大切ですね。
もうサイトを作って置いてあるだけじゃ人は集まりませんよ。インターネットは釣り堀じゃないんですよ。魚の数に対して釣り人の数が多くなりすぎている状態です。「じゃぁ使った費用の元がとれるのか」と言われますが、インターネット利用者の伸びも鈍化している現在、2年後3年後にはさらに人集めが大変になりますよ。やるなら早くお金をかけるべきです。企業は束縛が多いので、動きの早さでは個人に勝てるはずがないんですよ。じゃぁ個人に勝てる点はと言うとお金を使えることですよね。
編集部 中でも効果がありそうな手法は?
伊藤 今だと、ブログパーツやAPIのような、ちょっとした便利なものを無償で提供するのはアリですね。年末にカレンダーを配るのと同じ感覚です。ああいうものは一度ブログに取り付けると意外とそのままにされるので、広がりやすいですし、リンク数も増えてSEOの効果もあります。ただし、集客のための撒き餌なので、企業色は消して「よかったらどうぞ」という感じで、自分のブログとか知り合いのブログに貼ってもらうといいです。最近だとNHKがブログパーツを出しましたよね。地味な時計があるだけなんだけど、結構な人気を集めていましたよね。
- 65CGMはメディアに合わせて
- 66とにかくいろんな手法を試して効果のあるものを見つける
- 67低下したシステム関連のコストをマーケ予算にまわす
- 68ちょっと便利なブログパーツやAPIを無償で提供する
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.4』 掲載の記事です。
※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時(2007年1月)のものです。
ソーシャルもやってます!