アドバンスセグメントでとことん絞り込む Google AnalyticsでSEO
具体的な事例とツールの解析ワザを中心としたGoogle Analytics活用の実践Tips集
もちろんSEO/SEMも織り交ぜながら解説していきます。
前回の記事では、新規ユーザーの検索キーワードを分析をするのに「ディメンション」という機能を使った。キーワードごとに、GoogleとYahoo! JAPANのどちらからの流入が多いかを見極める時など、解析データをもう一段掘り下げて分析するのに便利な機能だ。
しかし、その一方でディメンションが必ずしも使いやすいわけではない。どの画面であればどのディメンションが使えるのかをすべて覚えておかなければならない。操作の手数も多くなるので、ディメンションだけで深い分析を進めていくには限界がある。
便利なアドバンスセグメント
アクセス解析は、どれだけユーザー像を明確にして分析できるかという点が大事だ。ディメンションだけではなく、もっとユーザー像を絞った形で、あらゆる角度から分析を進める機能はないだろうか? そうやって悩んでいると、2008年の秋に「アドバンスセグメント」という機能がリリースされた。
この「アドバンスセグメント」は、アクセス解析のデータをあらゆる角度から絞り込んで表示してくれるので、ユーザー像を具体的にして分析することができる。しかも、思いついたときに絞り込みの設定を行い、好きなときにその設定をセットしたり解除したりできる。さらに、過去のデータにさかのぼって絞り込むことができる、融通のきく機能なのだ。おかげで、最近僕は「アドバンスセグメント」と付き合う時間がすっかり増えている。
Google Analyticsの機能に「プロファイルに適用したフィルタ」という「アドバンスセグメント」に似た設定がある。ここでも設定条件でユーザーを絞り込むことが可能だが、設定以前のデータに対する絞り込みは適用されず、絞り込み設定のセットや解除に関しては「アドバンスセグメント」のほうが柔軟性が高い。フィルタとアドバンスセグメントの違いは次回以降に解説する予定だ。
アドバンスセグメントを使ってみよう
「アドバンスセグメント」に関する理解が深まってきたところで、早速画面を追って説明していくことにしよう。
レポート画面のグラフ右上の日付の上に、かなり控えめに「Beta アドバンスセグメント」という表示がある。この右横の「全セッション」というボタンをクリックすると、「アドバンスセグメント」のメニューが顔を出す。まずは「デフォルトのセグメント」という左側の箱を見てみよう。
その「デフォルトのセグメント」に並んでいるチェックボックスをクリックすれば、その指定のセグメントに絞り込まれるのだ。「新規ユーザー」と「リピーター」や「検索トラフィック」もある。「コンバージョンしたセッション」など、気の利いたものも多い。
ここで「新規ユーザー」のチェックボックスをクリックして右下の「適用」ボタンを押せば、全セッションを示す青色のグラフとは別に、「新規ユーザー」だけに絞り込まれたオレンジ色のグラフが顔を出す。
左側の「コンテンツ」メニューから「閲覧開始ページ」を見てみよう。「アドバンスセグメント」で絞り込みを行ったおかげで、閲覧開始ページの直帰率を新規ユーザーと全セッションとで比較して見ることができる。
これを見ると、トップページは新規ユーザーの方が直帰率は低いことがわかる。新しいユーザーの方が興味を持ってトップページを見て、その他のページにも遷移してくれているのだろう。しかし、トップページ以外のページでは、逆に新規ユーザーの直帰率が高くなっている。
さらに「アドバンスセグメント」のチェックボックスを一つ増やしてみよう。新規ユーザーに加えて、「リピーター」のセグメントもチェックし、もう一度「閲覧開始ページ」を見ると、今度は「全セッション」「新規ユーザー」「リピーター」と3つのセグメントを比較してみていくことができる。グラフは青色、オレンジ色、緑色と3色表示になり、個別の数値は3つのデータが並ぶ形で比較できる。
こうして分析すると、個別の記事ページに直接アクセスしている新規ユーザーは、総じて直帰率が高めになっている。しかし、中にはそれほど差がないものもある。
ちなみに、この「アドバンスセグメント」は、絞り込みされた状態を保ったまま、Google Analytics全体を見ていくことができる。同じように、左側の「トラフィック」メニューの「検索エンジン」や「参照サイト」でも「キーワード」の画面に行っても、3つのセグメントが比較分析できるのだ。
どの画面を見ても、3つのデータが比較し続けられる風景はなかなか壮観である。しかも、この状態で画面がサクサクと表示されるのだからたまらない。Google Analyticsしか触ったことがない人は、このサクサク感が当たり前だと思うだろうが、これまでのアクセス解析ソフトの中には、こういった比較画面では「むむむっ」と、うなるほど画面表示が遅くなるものが多かった。思考が中断されないサクサク感は、分析の生産性を高めてくれる大事なポイントだ。
閲覧開始ページのデータからわかること
さて、閲覧開始ページの分析に話をもどそう。
あくまで筆者のブログのデータだが、3つの数値を比較すると、新規ユーザーの直帰率が他のセグメントに比べて高いことがわかった。また、記事によって直帰率に違いがあることが気になった。3つもセグメントを表示すると、色とりどりで綺麗だが少し頭が混乱する。そこで今度は「アドバンスセグメント」のチェックボックスを「新規ユーザー」だけにしてみる。「全セッション」も「リピーター」もはずしてしまう。この見方で、もう一度閲覧開始ページの「直帰率」を比較してみる。何か傾向が見えてこないだろうか?
複数の記事ページのデータを一覧表示し、優劣を見極めるには「サイトの平均との比較」というグラフを使うのが便利だ。グラフ表示の切り替えボタンの一番右にあることが多い。このグラフ表示のボタンをクリックして、サイトの平均の比較のプルダウンから「直帰率」を選ぶ。さらに比較をしやすいように、画面下の表示件数を25件に切り替えてみよう。
結果は、このような画面になる。直帰率のいいもの悪いものが一望できる。しかもこの数値は「アドバンスセグメント」で新規ユーザーだけに絞り込んだ結果になっているのだ。
このグラフをじっと眺めてわかったのは、記事の下につけるようにしている関連記事が同じ人物に関する記事※の場合、直帰率が低くなることだ。また、短めの記事の方が総じて直帰率は低くなる傾向もわかってきた。記事下につける「関連リンク」は、確かに読んだ人が素直にクリックしたくなるものなら、読者にその先の記事まで深く入り込んでもらえる。記事の長さについては、読む側の立場にたった、読んだ時の快適さについて改めて考えさせられる結果となった。
僕が片手間に書いている小さなブログなので、あまりいい事例とは言えないが、「アドバンスセグメント」でユーザーを絞り込んで見ると、同じデータでも、分析する側のイメージが膨らんでいくことがわかる。よりユーザーの気持に寄り添えるようになるのだ。アクセス解析では、このユーザーに寄り添う気持ちを作ることがとても大切だ。
一般的に、ブログやニュースサイトなどでアクセス解析の行う場合、直帰率を下げてサイトを深く見てもらい、リピーターになってもらおうと考える。そんなときは以下の手順で分析する場合が多い。
- よく読んでくれている人は特別な行動を取るので、リピーターは除外する
- 新規ユーザーだけに絞り込んで直帰率を分析する
目標とする直帰率を改善するために重要になってくるのがこの2つだ。もちろん一番重要なのは、「記事の内容」であるのは言うまでもない。
- 読む側の快適さ
文字の大きさや記事の長さ、内容のわかりやすさ、次のアクションの明確さなど、相手の立場にたって、記事の読みやすさを考えることが大切。
- 関連性の濃さ
キーワードと見出しの関連性、見出しと内容の関連性、内容と設置されたリンクの関連性など、こういった関連性を濃くする改善は、直帰率を低くして平均ページビューを上げる役割をはたす。もし、見出しのクリック率や記事のページビューだけを指標として最優先するのであれば、わざと大げさな言い方をして記事の内容と違う(関連性の低い)タイトルをつけてしまうこともできる。しかし、そこで読む側をがっかりさせると、リピーターにはなってもらえない。
セグメントの絞り込みは奥が深い。次回は、この「アドバンスセグメント」で自分流のセグメントを作る話をしていこう。
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