企業ホームページ運営の心得

何でもないようなことが大切だった。ホームページのあるべき心

専門家には常識でも、客にとっては新鮮なコンテンツになります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百四十九

あるべき姿を否定する教育者

事業仕分けで「心のノート」が縮減となりました。「心のノート」とは小中学生全員を対象に無償配布されている補助教材で、昭和的分類では「道徳」の授業に使うものです。本稿公開時にどうなっているかわかりませんが、廃止を主張した仕分け人の1人、元杉並区立和田中学校校長 藤原和博東京学芸大客員教授は「あるべき心の見本市で、すごく気持ち悪い」と理由を述べます。どれだけ「気持ち悪い」ものかと入手してみました。

この学級に正義はあるか
自分自身のまわりからいじめ、そしてあらゆる差別や偏見をなくすため不正や不公平を憎みそれを断固として許さないそんな強い力を、私の中にそして社会の中に育ていきたい。

(心のノート 中学校 平成21年度改訂版 19ページより抜粋)。

清々しいほど健全な教えで、アラフォーの私でも「そんな強い力」の入手方法を知りたくなります。私の友人は「あるべき心の見本市」という主張にこう反論しました。

「道徳ってそういうものじゃない?」

新年、最初のコラムはホームページの「あるべき心」について。

強制されるコンテンツ

道徳教育についての是非は本稿で論じるものではりませんが、「内心の自由を侵す」とし「道徳」を強制することに反対する人や団体がいます。私は一般論として「教育」に一定の「強制」は必要と考えます。たとえば、かけ算「九九」の暗記を強制されますが、これにより割り算や分数を理解する基礎体力が身につき、大人になってからスーパーマーケットで「3割引」の価格を瞬時に計算できるようになります。つまり基本や基礎の強制は本人のためという考えです。そしてそれが後の教育の「よすが」となります。

「あるべき心」についても同じです。「あるべき心」という人間社会の基礎(規範)を与えることで不正や不公平が憎む対象だと判断できるようになります。ちなみに長じて「道徳の授業」が内心の自由を束縛するものでないことは現代社会の「モラルハザード」が証明しています。

話しをホームページに戻します。ホームページにおいて「よすが」となるのが「FAQ」で、強制してでも取り組ませたいコンテンツです。

まず、そこからはじめる

FAQとは「頻繁に尋ねられる質問(Frequently Asked Question)」のことで、通販サイトなら、キャンセルや支払い方法、到着日指定の有無、不良品の対応など多く寄せられる質問への回答集です。このFAQの作成にサイト設計時から着手します。開設前に「頻繁に訊ねられる質問」などあるわけがありません。そこで家族や友人など「素人」を集めて、サイトで行う商売(企業サイトなら業務内容など)について質問させ、これをまとめます。

「質問がないのにFAQを作るのはおかしい」

という主張は学級会レベルの話し。私たちはビジネスという戦場にいます。事前調査とは「リサーチ」という立派なマーケティング手法であり、詭弁を弄するならこういいます。

「ホームページから寄せられた質問とは書いていない」

正確を期すなら「サイトを見た家族や友人のFAQ」となりますが……学術論文ではないので調査対象の公表は不用です。

プロ排除の論理

  • 見積書の金額より高くなりませんか?
  • 自己資金が少ないのですが大丈夫でしょうか?
  • 「駅から徒歩○分」などという表示は、もっとかかるような気がします。所要時間は、どのように決めているのですか?

これは不動産会社の「FAQ」を作る際に弊社で集めた「素人」の質問例です。これをみた不動産会社のスタッフはこういいました。

どこのサイトでも掲載されているから、いらない

不動産業界では常識で、他社もホームページに掲載しており、わざわざコンテンツを作る必要はないといいます。ホームページには独自のコンテンツが必要だという「正論」で補強された、こうした「主張」を現場でよく耳にします。

FAQが通じる世界は狭い

結論を述べれば論外です。答えを用意していなければ、客は他社のサイトへ去っていきます。他社も掲載する凡庸なコンテンツでも素人の客にとっては新鮮な情報で、「ネットで検索」した疑問の答えを求め、客が他社へ逃げてしまうことを考えれば取り組まなければならないコンテンツであることは自明です。

「客の立場になって考える」ことは商売の基本です。FAQ作りを通して客の気持ちをたどります。

FAQではなく「Q&A」でも結構。両者の使い分けは「客」次第です。ITやネットの「お約束」に明るければ、FAQでも伝わりますが、誰でも理解できると考えるのは傲慢です。スキンケアの「クレアラシル」のホームページでは「ニキビQ&A集」となっているようにTPOでコンテンツを判断します。

当たり前すぎることだから明示する

「見積書」と「契約書」の価格が異なるのは、ビジネスでは常識に属します。見積もりは確定した金額ではなく、高くなることも安くなることもあります。しかし、専業主婦や学生、浮世離れした芸術家にとって「常識」とは限りません。そして知らなくても不動産を買うことはできます。つまりは客になるということで、「内容によっては見積金額を超えることがあります」と明記しなければならないのです。これは客のためだけではありません。見積書と契約書の違いを理解していない素人ほどクレームをだすからです。

挨拶をしましょう。約束は守りましょう。嘘をついてはいけません。

誰もが知っている「あるべき心」です。当たり前すぎて、大人になるとうっかり忘れてしまう「心」です。そして、当たり前と思うことを「欠かさず、漏らさず」掲載する「心」が、商売用ホームページの「あるべき心」なのです。ただ……道徳と同じく「言うは易く行うは難し」なのですが。

最後に余談を。住宅ローンで問われるのは自己資金よりも返済能力で、これは「年収」が基準となります。徒歩は一分間に80m進む早さで計算し、時速にして時速4.8km、フルマラソンを8時間47分で走破します。

それでは本年もよろしくお願いします。

今回のポイント

誰もが当たり前と思っていることの確認。

基本はすべてに優先する。

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