パフォーマンス管理のベストプラクティス10

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パフォーマンス管理のベストプラクティス10

では、「Webサイトのパフォーマンス管理」とは何なのでしょうか? 端的にまとめると、「一貫して良好なユーザーエクスペリエンスを確実に提供するために、サイトのパフォーマンスを油断なく監視して改善していくビジネスのやり方」です。サイトを訪れるお客さまが東京の人であろうと、ニューヨークの人であろうと、どのような環境からアクセスしてきても良好なパフォーマンスであるようにするのが重要です。

また、常に競合サイトと比較して自社サイトのパフォーマンスを評価することが重要であり、そうすることによって、顧客、ブランド評価、収益の守り方を継続的に学習していけるのです。

では、実際にパフォーマンス管理を実践するにあたり、必要なベストプラクティス10点を紹介しましょう。

  1. 自社の強みと弱みを認識する

    現実世界では、過去からずっと企業は競合他社の店舗を見て自分たちの比較対象(ベンチマーク)としてきました。定期的な競合の視察は役に立つものですが、Webビジネスにおいて、日本だけでなく世界中の競合他社サイトをパフォーマンスという観点から定期的に調査している企業は多くはありません。実際の競合との優劣を比較をしなければ、自社サイトのパフォーマンスが競合他社のサイトに比べて優れているのか劣っているのか、どうやって知ることができるのでしょうか? 今日のベンチマーク技術があれば、どんな企業でも競合他社に対する自社サイトの位置を簡単に定量化し、差異を理解し、改善措置を講じることができます。まずは自社の現状を知り、競合と比較してみることが重要です。

  2. お客さまを理解する

    お客さまがどこに住んでいて、どのようなネットワークから訪問しているのか、光回線の人が多いのかモバイルの人が多いのか、どのような接続速度で、利用時間のピークはいつで、サイト訪問のパターンはどのようなものか。これらの質問は、Webサイトのビジネスオーナーにとって重要なものです。答を知り、その情報に基づいてWebサイトに関する決定を行うことにより、よりお客さまにとって快適なサイトにでき、結果として他社よりもビジネス上の優位に立つことができるのです。お客さまをよく知る企業は、全体的なサイトパフォーマンスを改善し、それによりサイト上でのカスタマーエクスペリエンスを向上できます。このような適切な決定を行うことにより、気づかずに失っていた売上機会を取り戻したり、経営資源をより適切に投資したりすることが可能となります。

  3. システム全体をテストする

    人間の健康状態を知るには、血圧だけを測っていても不十分です。それと同様に、Webサイトの総合的なパフォーマンスを判断するには、よくあるサーバーのCPU使用率やネットワーク品質といったシステム管理者向けの指標だけを見るだけでは不十分です。Webサイトのパフォーマンス管理にあたっては、「ブラウザからサーバーまで」のWebアプリケーションのインフラ全体において、あらゆる関連システムを横断するテストが必要になります。こういったテストを行わない限り、実際にサイトを訪れたお客さまがどのような経験をしているか把握することは不可能です。

  4. 重要なサービスを監視する

    一般的に、Webサイトにはさまざまなページがあり、サービスが提供されています。サイト上で提供されているサービスがそれぞれどのような状態にあるかを監視し、把握することは重要です。Webサイトパフォーマンスといっても、ただトップページの表示速度だけをチェックするのではなく、サイトにどういった機能があるのかを理解し、重要度の高い部分はしっかりとチェックしていく必要があります。以下に監視対象とすべき項目の例を示します。ここで挙げるような項目を客観的に監視していくことが、正しい「Webサイトパフォーマンスの管理」につながるのです。

    監視すべき主要項目
    • コンプライアンス ―― 第三者に対してや内部でサービスレベル契約(SLA)を定めている部分でに関して、SLAで定めた速度や可用性を保っているのかを測定
    • ビジネストランザクション ―― 購入・申し込み・登録といったビジネスプロセスが、すべてのお客さまに対して機能しているかどうかの確認
    • 競合他社とのベンチマーク ―― 競合する企業のWebサイトとの比較
    • リリース前テスト ―― 正式公開前には、リリース後の状況を想定した全体のパフォーマンステストを行う
    • 障害回復 ―― メインのサーバーに障害が発生したときに稼働させるバックアップサーバーが適切に準備状態になっているかを監視
    • インフラ投資 ―― パフォーマンス向上に対する投資の前に、ネットワークインフラの問題領域を診断
    • Webサービス ―― Webサービスの内容と可用性の検証

    上記以外には、イントラネット、エクストラネット、サプライチェーンマネジメント、CRMツール、ERP、Outlook Web Accessなどが監視対象として挙げられます。

  5. 外部ベンダのサービスを把握する

    最近では、Webサイト全体を自社が管理するシステムだけで完結させている企業は少なくなってきています。広告配信、アクセス解析、動画配信、クレジットカードの支払い管理など外部のサービスを利用することは多いでしょうし、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)を経由してサービスを提供している場合もあります。これらのサードパーティが提供する機能であっても、お客さまからみれば、そのサイトの一部です。こうしたサービスに対する性能テストを行うことは少ないのですが、監視やテストを行わなければ、サードパーティのパートナーが期待どおりのパフォーマンスをあげているか知ることはできません。そして残念ながら、顧客から電話で苦情を伝えられて初めて、こうした外部サービスのパフォーマンスがお粗末であることに気付く例も多いのです。実際のところ、訪問先のWebサイトに問題があっても、わざわざそのことをWeb担当者に連絡してくれる人は滅多にいません。ほとんどの人は、無言でサイトから立ち去るのです。つまり、その問題にWeb担当者が気づいたときには、すでに多くのお客さまが競合サイトに流れて行ってしまっている可能性が高いのです。

  6. 目的と管理指標を共有する

    Webサイトに携わる社内の各事業部の担当者、マーケティング部門、Webマスター、プログラマ、情報システム部門、Webビジネスオーナーは、必ずしも共通の言語や信条を持っているわけではありません。マーケティング担当者は、最新の製品やプロモーションの大きな画像を見せたがります。運営チームは、膨らんでいくページの重さについて不満をもらします。複雑なビジネス目標と同じように、複雑なWebアプリケーションになると、こうした縦割り型の仕事のやり方がコミュニケーションの断絶につながるため、実現しうる最善のカスタマーエクスペリエンスを提供しようとしても、サイトの能力を十分に発揮できません。こうした断絶によって生じた問題は、サイトのレスポンスやお客さまのエクスペリエンスを損ねてしまいますし、その問題を修正しようとしても大きなコストがかかります。先進的な企業では、Webビジネスオーナーの指導の下、アプリケーションの提供ライフサイクルを通じて、社内の各グループの意見を調整するためのガイドラインとして、共通のパフォーマンス基準を作成している例も多いようです。

  7. アクセス地域ごとの差異を理解する

    同じブランドの店舗で、東京店でのお客さまへの対応と、大阪店での対応が違うという状況は、ブランド価値の維持という観点からも許されるものではありません。これは、Webサイトのお客さまのエクスペリエンスについても同じです。また、Webサイトというものは、離れた場所にいる人にでもアクセスしてもらえるのが特徴ですが、多くの企業では、アクセスする人がどこにいるかによってWebサイトのエクスペリエンスがどれだけ異なっているかを理解していません。さらに悪いことに、企業によっては、これは距離が原因の対処不可能な問題であるとしてあきらめている場合があります。これは、大きな勘違いなのです。データセンターの再分配、データの集約または圧縮、コンテンツ配信ネットワーク、さらなるサイト最適化などによって、地理的差異を縮められるのです。

  8. Webアプリケーションのパフォーマンスをビジネスの業績とリンクさせる

    私たちは直感的には、レスポンスが早く可用性の高いWebサイトがビジネスに有益であるであろうことを感じています。また、レスポンスが悪くアクセスしにくいサイトがビジネスに不利益であることは漠然と理解しています。しかし多くの企業は、これらの状況がどれだけの不利益となるか、まったく知らないか、あるいは定量化をしていません。先にご紹介した調査結果から見ても、パフォーマンスの低さから生じる悪影響は、オンライン売上が低下することにつながり、ブランドイメージを失墜させ、お客さまを失います。社内においてもサポート窓口での対応量が増えてコスト増加にもつながる可能性があります。Webビジネスのオーナーは「点と点をつないで」分析し、提供しているエクスペリエンスについて、情報に基づく決定を下す手段を持つ必要があります。

  9. 積極的・能動的にWebサイトの改善を行う

    四半期ごとに売上が減少していたら、企業はどうするでしょうか? 原因を調査し、改善を行い、その改善が効果を発揮したかどうかの検証を行うでしょう。Webサイトについても同じですが、オンラインの改善は、実際の導入前にテスト・検証できるという点で異なります。先進的なWebビジネスのオーナーは、潜在的な問題を分離して考えるために役立つ継続的な基準を利用して、改善を行い、改善の効果を事前に測定し、適切な選択を実施し、そして改善が望みどおりの結果をもたらしたかを検証します。こういったことをサイトのリニューアルを行う前に実施することにより、現実のWebサイトのお客さまに不愉快な思いをさせる前に、改善することが可能です。

  10. 継続的にパフォーマンス監視を行う

    オンラインサイトの測定と管理は、物理的なものと同じように一度きりのものです。オンラインの健全性は、継続的な監視、絶え間ない調整、そしてお客さまの進化に後れをとらずサイトを進化させることにかかっています。Webサイトのパフォーマンス管理になじみのない人々は、ゆっくりと慣れた道に沿って歩んでみましょう。まずは店舗の明りが灯っているかを確かめましょう。それが、サイトの可用性です。次はレジの列が短いか、商品がすばく見つかるかを確かめましょう。それが、サイトの応答時間です。最後に、エクスペリエンスが一定であることを確かめましょう。まずは売上のためにアプリケーションのパフォーマンスを向上させることに集中し、その後で最終的な収益のためにWebサイトの管理可用性を高めましょう。

Webサイトのパフォーマンス管理のために

残念なことに、Webサイトのパフォーマンス管理を高いレベルで行おうとすると、かなり広範囲な知識と経験が必要になります。Webページで使う画像のフォーマットや書き出しの設定、HTMLの書き方、スタイルシートのルールといったデザイナの知識、JavaScriptの動作のようなフロントエンドエンジニアの知識、さらには、サーバーサイドで動作するCMSやショッピングカートなどのプログラムの構造、ApacheやMySQLといったサーバーソフトウェアの設定、OSの設定、メモリやCPUといったハードウェアの知識、ネットワークの状況を把握する知識など、とても1人で把握しきれるものではありません。

そのため、まずはこの記事で解説したような基本的な考え方を理解したうえで、できる範囲からパフォーマンスの改善と管理をしていくのがいいでしょう。特に小規模のサイトでは、少しずつ自分で改善していくことで、担当者の知見を高めていけることでしょう。

また、Webサイトの規模が大きく、重要度が高いのであれば、外部の専門家をうまく使うことで、効率的にWebサイトのパフォーマンス管理を進めていけるはずです。最近では、Webサイトのお客さまのエクスペリエンスを定期的に測定・監視し、ベンチマークを実行し、その結果に基づいて改善案を提供するといったサービスを提供する企業も増えてきています。そうしたサービスをうまく使うことを考えてみるといいでしょう。

※Webサイトパフォーマンスの調査データに関しては、Web担当者Forum掲載記事「日本企業のWebサイトパフォーマンス業種別ランキング&ベンチマークを日本コンピュウェアが発表」もご覧ください。

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