企業ホームページ運営の心得

お客に算数をさせ納得させるブラックテキスト術。消費税還元セール対策

増税が迫っていることを記憶に呼びかけ、駆け込み需要を取り込みます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の342

空前の好景気がやってくる!

新年、あけましておめでとうございます。今年もおつき合い願えれば幸甚です。

と、挨拶もそこそこに年初から突然ですが全国のWeb担当者のみなさん、準備はできていますか? 4月の消費増税を前にした「駆け込み需要」への備えです。そこで今回はセールをあおり、販促を加速するための「ブラックテキスト術」を紹介します。ブラックテキスト術とは、以前にも紹介していますが、フェアとアンフェアの境界を疾走する実戦技です。

駆け込み需要が、どれほどすごいかと歴史に学べば、日本では増税前の駆け込み需要は、消費税が導入された1989年と、税率が3%から5%へと引き上げられた1997年の2回あります。しかし、消費税が導入されたころはバブル経済の真っ只中でありながら、元号でいえば「昭和64年と平成元年」で、昭和天皇の崩御による自粛ムードもありました。すると今回の参考となるのは1997年だけといえるでしょう。

そのころの私は、中小の広告代理店の営業マンで景気の波の最前線におりました。

すでに駆け込んでいる

当時の統計から概況を見てみます。1997年の増税直前の1~3月期の実質GDPは、年率換算3.0%のプラス成長となりました。2%の税率上昇に対しての3%の駆け込み需要があったことをひな形とするなら、今回の5%から8%へと、3%のアップは前回の1.5倍に相当します。その倍率を単純に当てはめれば、今回は4.5%の需要増加が目論めるということです。そしてその兆しはすでにでています。

昨年の秋から、自動車修理工具の製造販売を手がける企業から嬉しい悲鳴が聞こえてきています。増税前の駆け込み需要により、注文がひきもきらないのです。自動車修理工具は、その目的から頑丈さが求められ、正しく保管していれば、まず劣化しません。そこで増税前に買いだめしようと、通常は1本2本単位だった注文が、ダース単位ではいるようになったのです。

その他にも住宅、自動車、宝石、高級時計などの高額商品はすでに取引が活発です。しかし、1997年の増税直前、テッィシュペーパーやトイレットペーパーなど、店頭に並べた端から売れました。「こんなものまで売れるのか」とクライアントと驚いたものです。つまり、どんな商材にも駆け込み需要のビッグウェーブはやってくる可能性があるのです。

それでは駆け込み需要の背中を押す「ブラックテキスト術」に入っていきます。お気づきの方もいるかもしれませんが、すでにブラックテキストの一端を見せています。

数字は選択的に使う

まず「消費税」を前面に押し出します。普通の消費者は日々に忙しく、ついつい増税が迫っていることを忘れてしまっています。そこで「増税されますよ!」と記憶に呼びかけるために、「税」を連想する文言を入れ込むのです。一例を挙げれば、

  • 増税前のラストチャンス
  • 消費税対策はお済みですか

といったものですが、ここで「ブラックテキスト術」の実戦技を。

4月からは8%です!

事実を告げているだけですが、数字に注目します。増税後の高い数字を用いることで、プレッシャーを強める狙いです。

3月までは5%です!

でも内容は同じ。しかし、増税への危機感はいまいち伝わりません。ブラックな例えとなりますが「余命3か月です」と「4か月目には亡くなっています」のどちらが、相手に衝撃を与えるかの違いです。

法令順守が原則

増税にあわせ「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(消費税転嫁法)」という長い名前の法律が施行され、いわゆる「消費税還元セール」が禁止されます。自由競争の原則と表現の自由を保証する憲法からみて、問題の多い法律ですが、そこに噛みつくのは本稿の趣旨ではありません。

つまり施行前なら合法ということ。3月まではやりほうだ……コホン、企画担当の腕の見せ所です。ただし、消費税還元セールは5%の値引きを意味し、利益を圧迫します。そこでこんなことを考える人がでてくるかもしれません。

通常売価を5%値上げする

楽天市場で問題となった「二重価格」です。5%なら「iPhone 4S」を「通常価格43万3,915円」とした優勝セールほどの悪質性はないとしても、意図的な価格の操作は「優良誤認」にあたり違法です。

時間軸をすり替える

納品業者、仕入れ先に消費税分の負担をさせた還元セールも推奨できかねます。還元セールを禁止する法律も、こうしたいわゆる「下請けイジメ」の防止を目的としており、消費者庁も今回は本気で取り締まると宣言しております。

それでは掛け値無しで「消費税還元セール」をするとします。ここでもより高い数字を用意します。

いまなら消費税13%お得です!

3月までの消費税5%と、4月以降の8%の合算値が13%です。一種の洒落ですが、こうした単純な算数は、意外なほど説得力を獲得するというのが今回の「ブラックテキスト術」のキモ。単純な算数を提示すると、日本人の多くは暗算により検証します。そして算数の正しさを、論理の正しさと錯覚するのです。

詭弁で丸め込むことも可能だからこそ

そんな冗談を、と思う方もいるでしょう。そのとおり、3月までの税率と4月以降の税率が合算されることなど、西から昇ったお日様が東へ沈んでも起こり得ません。しかし、5%と8%と数字を並べ、あわせて13%とあると、脳内で「5+8=13」という数式が浮かび、うっかり「詭弁」にうなずいてしまうのです。

先の「4.5%の需要増加」も同じレトリックを用いています。簡単な数字を用意し、読者に暗算させることで「誤認」させる方法です。統計やデータの取り扱いに慣れている、本サイトでお馴染みの衣袋教授のような方は引っかかりませんが、意外なほど納得する人が多いことはここだけの秘密です。

GDP算出の諸条件を脇に置いたとしても、税率の増加分だけを比較するのは作為的な数字の抽出です。割合で比較すれば3%から5%も、5%から8%も端数を除けばどちらも同じ1.6倍です。今回は悪用も容易な「ブラックテキスト術」。くれぐれも法令順守をお忘れなく。

ただし、駆け込み需要が期待できることに偽りはなく、すでに恩恵をうけている企業は沢山あります。

今回のポイント

暗算させることでお客を誘導できる……ことがある

駆け込み需要に駆け込む

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