え? そうなの?! 意外と知らないシニアの情報行動――統計データで見えてくる5つの対策(全6回の5)
スマートフォンは、60代の「5人に1人」が利用中
若年層の間では、ほぼ飽和状態まで普及が進んだスマートフォン。そのため、携帯電話各社はこぞってシニアマーケットに参入していますが、今現在、いったいどのくらいのシニアがスマートフォンを利用しているのでしょうか?
比較的新しい、2014年の総務省の調査によると、年代別のスマートフォンの利用割合は、50代ではほぼ「2人に1人」、60代では「5人に1人」でした。
このアンケートは訪問留置調査なので、ネットアンケートのようなITリテラシの偏りは少なく、ほぼシニアの実態を反映していると言ってよいでしょう。
「60代へのスマホ普及はまだまだ」という状況ですが、理由として、「画面が小さい」「文字入力がしにくい」という声が一番に聞かれます。
このデータから考えられるシニア対策
複雑な情報収集や入力操作を必要とする場合、スマートフォンからパソコンにURLをメールで転送するなど、繋ぎ込み部分を積極的にサポートするべきと考えられます。
なお本連載第2回の「④会員登録せずに購入できるか」でも紹介したように、シニアはIDやパスワードの管理がとても苦手です。
考えられるシニア対策
シニアユーザーが何度も利用するようなサービスは、アカウント入力が必要になる「アプリのインストール」より、ブラウザから「ホームに追加」してもらうことを促す作りのほうが、現時点では有効と言えます。
ちなみに2015年の総務省の報告によると、いわゆる「シニア向けスマホ」「格安スマホ」の60代の利用意向は、どちらも4割程度でした。
このデータについて、「シニア向けスマホ」「格安スマホ」を比較すると、より低額で利用できる「格安スマホ」の方が深く刺さるユーザーが多いようです。やはり“現在利用している携帯電話と、変わらない料金で利用できる”ことの訴求力は大きいようです。こうしたアプローチにより、今後、シニア世代のスマートフォン普及に弾みがつく可能性がありそうです。
タブレット端末は、60代の「10人に1人」が利用中
前述の総務省の調査では、タブレット端末の利用率も報告されています。こちらは30代が3割程度なのに対し、50代は15%程度、60代は10%程度と、若年層との間でスマートフォンほど極端な利用率の差は見られません。ちなみに、10代の利用率が比較的高い理由としては、学校等での教育用途が考えられます。
ここで少し気にしておきたいのは、各世代のタブレット端末の購入動機です。私どものパソコン教室の状況を見ていると、30代・40代は、タブレット端末を「パソコンとは別に利用する」という目的で購入する傾向がある一方、60代以上は「壊れたパソコンの代替」として購入するケースが多いのです。この場合、60代においては「自宅でインターネットにアクセスできる環境は、タブレット端末のみ」という状況が発生しているわけです。
このデータから考えられるシニア対策
シニアユーザーの“タブレット・ファースト”が進んでいるとするなら、今後のシニア向けサービスは、「タッチ操作のみで利用できる」「縦長画面の縮尺でも違和感なく利用できる」など、タブレットへの対応が、必須となるかもしれません。
まだまだ残るFAXの利用
2015年の総務省の報告では、ITデバイスの1つとして「FAX」についても言及されていました。データで確認すると、30代のFAX利用率が10%程度なのに対し、60代はその3倍、およそ3人に1人が利用していました。ちなみに、過去に私どもが行ったユーザーテストにおいて、ECサイトで複雑な注文をしなければならない場合、シニアユーザーからは「FAXで送りたい」という声が何度か聞かれました。
このデータから考えられるシニア対策
本連載第2回の「②ファーストビューに電話番号・対応時間があるか」において、シニアの不安をなくし安心してコンバージョンしてもらうポイントとして、「ファーストビューに電話番号・対応時間があるか」という点をあげましたが、可能であれば電話と合わせてFAX番号も記載しておくと、取りこぼしを防ぐことができるでしょう。
人と情報共有するときに、シニアはどうするのか
次のグラフは、インターネットでツアー旅行を検討する際、「同行予定者とどうやって情報共有を行うか」について尋ねた自主アンケート調査の結果です。
ここで注目すべきは、「印刷」の部分。年代が上がるほど、綺麗に利用率が高くなっていることがわかります。シニアは、こうした「他人への情報の受け渡し」「情報の保存」、さらに「読みやすい」という理由で、サイトを紙に印刷することが少なくありません。特に印刷率が高いのは、商品詳細、会社概要、交通案内・地図などのページです。
このデータから考えられるシニア対策
こうしたページについては、「印刷ボタン」の設置に加え、そのボタンを押したときに「必要な情報が一度に印刷できるか」「モノクロ印刷した際に問題なく読むことができるか」を確認しておくとよいでしょう。
まとめ
今回は、改めてシニアのITデバイス利用状況を数字で確認してみました。スマートフォンを難なく使いこなすシニアがいる一方で、FAXや紙中心の情報伝達手法を好む人がいまだに多いなど、そのバラつき具合があきらかになったのではないでしょうか?
同じ「シニア」と言っても中身はさまざま。若い世代に比べて興味関心やスキルのバラつきの大きいシニア市場では、自分たちがどういった層を対象としているのか、はっきりと確認しておく必要があります。
次回は、本連載の最終回です。「もっとシニアを知るために」と題して、シニアのネット利用実態を明らかにするための、効果的なアプローチや注意点についてご紹介します。
ソーシャルもやってます!