国産MAツールSHANONに仮説データを入れて使ってみたまとめ
前回のMA実際使ってみたレポート:Marketo編 からずいぶんと時間が開いてしまいましたが、今回はMA(マーケティングオートメーションツール)国内シェアNo.1 シャノンの使ってみたレポートです。
とにかく日本の商慣習に思いっきり寄せたその仕様と使い勝手は『かゆい所に手が届きすぎている』レベルでしたので、以下まとめてみたいと思います。
今回も実際にシャノン マーケティング部長の村尾さんと、シニアアカウントエグゼクティブ阿部さんに来ていただき、僕らのほうで予め用意したデータセットと要件に即して実演デモを行っていただきました。
- 事前想定した要件仕様まとめ
- 仮想事業:全国に複数店舗を持つカーディーラー
- 商材:2,000種の自動車(新車想定)
- DB:顧客DB、購買DB、商品DB、店舗DBがある想定
- 条件:顧客DBと購買DBは連携されていない前提
DB構成は前回のMarketo時と同様です。
検証項目も同じく『名寄せの手法と手間検証』『オフラインDM受領後のエンゲージメントカウントできるか』『購入1,000日後、1,730日後顧客の抽出とメール送付』『来店当日の20時にメール』『開封可否でのクーポンメール内容切り替え』……など。
これらがどんなフローで実行でき、またどう管理するのか? と進めていきました。(※詳細検証項目はこちら参照)
結論:自由度が高すぎて細かい検証をする必要がほぼない
先に結論を言ってしまうと、つまり上記のような印象でした。
そもそも多くのMAツールが『メールを送付する』というアクションをベースに進化を続けてきたのに対し、シャノンは顧客(見込客)管理DBの延長線上でMA機能を実装したというポジション。
そのためCRMに近い形でさまざまな設計と運用が可能な作りになっているんですね。正式名称である『SHANON MARKETING PLATFORM 』の名が示す通り、『ほぼ全要件がストレスなく設定できた』という感じでした。
以下、各要件と機能について個別紹介していきたいと思います。
メアドだけでなく複数条件での自動マージ(名寄せ)が可能
ここが他社MAツールと比べた場合の最も大きな違いかと思いますが、海外産含む多くのMAツールが『複数DB間の名寄せはメールアドレスで行う』原則に従っています。※メール送付ツールからの進化系統なので当然といえば当然ですが
ところがシャノンの場合、その原則に縛られておらず、以下のような細かな条件での自動マージ設定が可能です。
- 会員IDなどメアド以外のユニークデータで名寄せ可能
- メール & 姓名 両方揃った場合に自動マージ…といった条件設定も可能
- メールも姓名も合っているが役職が異なっていた場合は自動マージしない…といった if 設定可能
- 後からメール & 姓名が同一のデータを検索 ⇒ 手入力で役職書き換えや選択上書きができる
つまり、日本の商慣習に非常にマッチするんです。
取り込み時のテーブル名は管理画面上で任意設定 ⇒ 生成されたベースファイルでカラム構造を確認しながらCSVやAPIなどから上げれば『メアド』でも『email address』『@以降』でもなんでも作成可能。
村尾さん曰く『画面で出来ることはAPIで大体全部できる』とのことで、例えば基幹システムと連携 ⇒ 処理フックからAPIを叩いてデータテーブルへの追加を逐次処理 ⇒ バッチなどで一括アップ…
といった仕組みもシンプルに組みやすいんだそう。(APIドキュメントが一式日本語で置いてあるってだけでありがたいですね)
来店確認&DM送付まで画面上からオーダーできる?!進化したシナリオ設定機能
さて、今回想定した具体シナリオですが、やはりポイントは『実店舗への来店』と『DMの送付』をどう計測するか?です。
実店舗への来店カウントを『店舗側のオペレーション』として導入してしまうのはあまりにも労務コストが大きい。しかもDM送付については例えば発送部署やツールが違ったり、つど配送業者にデータ連携を依頼しなくちゃいけなかったり……と。
少々、本格導入が難しくなりがちな部分です。
シャノンの場合は、なんと以下のような方法でクリアしてしまっているそう。
- 裏でDM配送事業者と提携。画面シナリオ上で『DM送付』を選べば、対象条件適合リストに対しそのまま指定タイミングでDMが送付できる(@120円+データ入稿手数料)
- 店舗に来たかどうか?も「活動履歴」として設定 ⇒ POS処理からのバッチやQR読んでもらってAPIなんかで情報登録が可能
DM送付1通あたり単価が120円とやや高な印象ですが、これも例えば『全体に送るようなケースでは従来の一括配送フローを利用』とし、『特定の条件を満たしたリストに対し絞り込んで送る場合のみシャノンを使う』といった形で運用すれば問題なさそうです。(※データエクスポートも可能なので旧来の配送ツール連携も簡単)
「来店御礼のDMを発送する」といったような小ロットかつ定型の業務であれば、この価格帯でもオートメーションによる運用工数低減により見合いますからね。
実際の利用シーンに照らし合わせてみても、例えばリアルの行動データ(例:DMを持ってきた来店ユーザ)を、POSでQRスキャン等により取得。
そのデータをAPI連携することでリアルとWeb上の行動を一括で管理することが可能だそう。シャノンのツールのデフォルトでは取得できないデータも、API連携のデータで取得すればそれを追加のセグメント情報として利用可能なのもありがたいですね。
シナリオ考えるのは楽しいけれど設定は大変…なので
これだけいろいろできるとなると、やはり心配になるのが『シナリオ設定の手間』なんですが、ここも先日(2017.11公開)のリニューアル以降かなりこだわって作っているそう。
曰く…
- シナリオをホワイトボード上で考えるのは楽しい。が、設定するとなると独特なルールを理解せねばならず難易度が高い
- そのためホワイトボードそのままに設定できるGUIを目指し、パワポのような操作感を追求
- シナリオ to シナリオの連結も自由に作れるので長すぎるシナリオの破綻に気づかない…といったエラーも軽減できる
とのこと。
もうこれは実際画面キャプチャを見ていただくのが一番早いので、以下ご覧いただければと思います。
シナリオ起点となるリストを設定しアクションを定義していきます
条件分岐もGUIでホワイトボード感そのままに定義可能
複雑な分岐を起こすシナリオも後から確認しやすいシンプルさ
1シナリオあたり全体で30アクションまでしか設定できないようにしているのも、なんというか地味にありがたい感じです。
運用が進んでいくといつの間にか複雑怪奇なシナリオになり、アクションの要不要が判断できなくなったりしますからね。
シナリオのゴールはTableau&Webトラッキングで可視化しつつCRM連携してのPDCAループへ
さらにありがたいことにシャノンは、人気BIツール『Tableau』を標準で組み込んでいるんですね。
そのため、シナリオのゴールとして設定したKPIを明確な形で可視化 ⇒ 進捗管理できるようになってします。
KPIを設定 ⇒ シナリオゴールに設定 ⇒ シナリオ作成 ⇒ 実稼働 ⇒ ユーザー行動を目標とし可視化・管理 ⇒ 会議でそのまま資料利用 ⇒ ブレストで出てきたホワイトボードシナリオ案をそのまま設定 ⇒ PDCAループへ
といった感じでしょうか。
もちろんWebトラッキング用タグを仕込むことで「ゴールしたリード」と「していないリード」の行動履歴差分を抽出することも可能。なのでより精緻に次施策を考えられますし、それこそ(想定シナリオでいうところの)車種ごと、ブランドごとのカタログ請求をゴールとして設計することも可能です。
Kintone、salesforce、eセールスマネージャーなど主要なCRMとの標準連携機能&API連携が使えるのもGoodなポイントです。
他にも現場のあるある課題を解決する細かな機能盛りだくさん
実際上記に書ききれないほど、現場の悩みを解決するためのソリューションが盛りだくさんなMAツール『SHANON MARKETING PLATFORM』。
主要なところだけリストアップしてみるだけでも、例えば以下のような感じでした。
- 役職クレジング:主査 ⇒ 係長クラスグループ…といったグループ分けが可能で、シナリオ上で「係長グループ以上なら○○」といった設定を可能に
- フォーム作成:独自タグはなく編集画面もない『サンプル作ってzipでダウンロード』 ⇒ 『ダウンロード後のHTMLファイルを編集してzipでUP』で完成してしまうというシンプルな仕様
- 情報の自動削除:例えばDBはオンプレ厳守で『ツール上に恒常的にデータを置いてはいけない』みたいなガチガチセキュリティにも削除APIで対応可能
何より「ありがたい!」と感じたのは日本の時間軸で『日本人技術スタッフへの電話サポート』が存在し充実しているという点。
『今日の○時までに送らなきゃいけないのに何か上手くいかない!』といったシーンで、これは助かると思います。
まとめと後記
現状リリースされている多くのマーケティングツールはUI上ですべてが完結しています。一件すると分かりやすいんですが、だからこそ管理者ユーザから見ると『データのつくりがブラックボックス化』して見えてしまいやすいという難点を抱えています。
つまり、少し凝った設定をしようとすると結局『データのつくりを推測』しないといけなくなるのがこれまでのツールの普通……だったんですね。
もちろん、UIからデータ構造を推測すると一言で言っても簡単ではありません。
そのため、多くの現場では『仕様が後出しで出てきた!』といった捉え方になってしまい、実際の要望と合わせるために四苦八苦する……というワークフローが一般的になってしまっていたと思います。
一方、今回触らせていただいたシャノンの場合、その構造自体がDB発想で考えられるためか『機能群のデータ構造が管理者ユーザにとって非常に見やすいものである』と感じました。
慣れれば論理的に理解しやすい上に、ツール上で『できること』『できないこと』が想像しやすい。(もちろん好き嫌いはあると思いますが)
まだまだ『SNS行動系は現状個別カスタマイズ必須』『APIを叩く部分は自前で作ってもらう必要がある』などいくつかの ”かゆい所” は残っているものの、これからにさらに期待したくなってしまう完成度なのではないかと。
村尾さん、阿部さん、お忙しいなか本当にありがとうございました!
「AI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」」掲載のオリジナル版はこちら国産MAツールSHANONに仮説データを入れて使ってみたまとめ2017/12/15
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