スシローが取り組むOMO/DX事例! 売上UPをはかるサイト/アプリの改善ポイントとは?
OMOやDX(デジタルトランスフォーメーション)などのワードが日常的に使われるようになった。回転すしのスシローでも、Webサイトやアプリを使う取り組みが進められている。
「Web担当者Forumミーティング 2020 秋」では、あきんどスシローの竹中浩司氏が登壇し、デジタル利用の取り組みを紹介しながら、売上にインパクトを与えるサイトやアプリの改善ポイントについて解説した。
各システムのデータを統合し、データの見える化を実施
労働人口が減少している昨今、外食産業ではさまざまなIT技術による仕組みを取り入れ、省人化に努めている。回転すしのスシローも例外ではない。
従来からスシローでは、店舗に行くと受付システムがあり、案内順の番号が発券される仕組みが導入されている。また、自分が食べたい商品があれば、タッチパネルで注文できる仕組みがあった。加えて、アプリを活用した来店予約や持ち帰りすしを事前注文して決済できる仕組みも展開。さらに最近では、会計時に現金、クレジットカード、QRコード決済に対応したセルフレジで支払いができるようになった。
一部店舗では、自動土産ロッカーも設置されている。これは、温度管理されたお持ち帰り用のおすしを入れるコインロッカーのようなもので、ネット注文したおすしを自分で解錠して持って帰れるというサービス。元々は省人化のための取り組みだったが、コロナ禍でできるだけ人との接触を減らしたいというニーズにも応えており、スシローでは対応店舗を拡大する予定だという。
このようにスシローでは、アプリやネット注文による“顧客の利便性向上”と、セルフレジのような自動システム導入による“店舗運営の効率化”という両面で、さまざまな仕組みを導入してきた。
しかし竹中氏によれば「各システムでは、データが取れているものの、以前はそれを有効活用できていなかった」という。つまり、アプリの利用者数や、お持ち帰りの中でもネット注文の利用者はどれくらいいるかなどは把握できていても、その利用者たちがどういう頻度で、どんな時間帯に使っているかがわかっていなかった。
そこで、4年前から「まいどポイント」という会員制のポイントプログラムを展開。データを統合し、見える化を行った。
お持ち帰りネット注文サイトのリニューアル
データから見えてきた課題
データを見える化すると、課題も見えてくる。例えば、以下のようなことは、以前は把握できていなかった。
- お持ち帰りネット注文を利用ているユーザーは、スマートフォンで利用しているユーザーが多い
- 店舗利用はせず、持ち帰りネット注文のみを利用しているユーザーもいる
また、もともとネット注文サイトを担当していたのは営業企画部。商品のコントロールなどには対応していたが、サイトを改善して売上をあげていくことに関しては手つかずで、サイトは作った時のまま公開され続けていた。そこで竹中氏がリニューアルに取り組むことになった。
ユーザーの多いスマートフォンの画面を改善
このようにサイトをよく見ると、使いにくい部分もあった。そこで竹中氏は、ユーザーに実際に操作してもらい、デプスインタビュー(1対1でインタビューする手法)を行った。すると、ユーザーが操作に困るシーンがいくつか見つかった。
そして操作に困るシーンについて詳しくヒアリングし、それを解決するにはどう変えればいいかの議論を経て、無事に4月中旬にリニューアルしたのが以下の図だ。
ポイントは、それぞれの画面で、ユーザーに何をしてもらいたいかを明確にしたことだ。トップでは店舗を選び、次に商品を選ぶ。注文完了後は、ユーザーがトップページを開くと、「未受取の注文があります」とアラートを出すようになっている。このアラートの「詳細」というボタンを押すと、自動土産ロッカーがある店舗の場合はQRコードが表示される。このQRコードをかざして商品を受け取るという流れだ。
リニューアル後も日々データを見ながら改善
竹中氏は、「リニューアルはゴールではなく、それ以後、サイトを使ってどうお客さんの売上を上げていくかがポイント」で、「日々データを見ながら、改善している毎日」だという。売上に対してインパクトを与えるのは、次の2点。
- 平均注文単価
- 注文数
「旬の握り」のカテゴリを設けることでフェア商品の訴求を行ない、注文単価増につなげる狙いだ。
また、注文数を上げるためにはアクティブユーザーの注文頻度を上げなくてはならないが、そのためにトップページのUI(ユーザーインターフェース)を改善した。あわせて、お気に入りや注文履歴から注文できるようにすることで、利便性を向上し、今後はさらに、コミュニケーションによって注文頻度を上げていきたいという。
その他、訪問者数の利用増加をはかるため、ページの整理をして直帰率の低減を目指した。さらに離脱を防ぐために接客ツールを使いはじめたが、今後は、お気に入りや注文履歴のデータを使ったリコメンドも行う予定だ。
スシローアプリのリニューアル
アプリの変遷
アプリについては、どのように変わっていったかを先にお見せしよう。
スシローアプリは来店予約ができるアプリとしてスタートしたが、最初はかなり殺風景なデザインだった。その後、お持ち帰りネット注文に対応し、まいどポイントプログラムに対応。今年の4月、コロナ禍で緊急事態宣言が発令されると、ご多分に漏れずスシローでも売上が激減(既存店売上44%減)したため、ネットによるお持ち帰り注文を強化した。
強化といっても、実は、お持ち帰りの注文ボタンの色を、目立つ色に変えるなど視認性を高めただけだという。「これをやっただけで、持ち帰りのお客さんが増えました。単純ですが、こういうのはすごく大事だなと思いました」と竹中氏は話す。そして直近のリニューアル後のサイトが右端のものである。
複数ある管理部門の調整がポイントの1つ
実は、アプリにはやっかいな問題があった。以下の図のように、アプリの機能・コンテンツは大きく分けて4つだが、それぞれ異なる部署が担当している。このため、アプリをリニューアルするといっても、どこがリードするのかから決める必要があった。結果的に、上層部からのご指名もあり、竹中氏がプロジェクトマネージャーになったということだ。
データからわかったこと
データが可視化されて、アプリについて明らかになったのは次の点だ。
- 月間のインストール数も、MAUもそこそこある
- しかし実際の利用者はインストール数に比べれば少なく、改善の余地がある
- 利用者のうち、ポイント会員の方が年間の利用回数・金額が高い
- ポイント会員の大半は利用頻度が低く、特典の失効率も高い
さらに、以下のような課題、気づきが得られた。
- アプリで予約して来店するのは、インストールユーザー全体の1/4程度
- ポイント会員は非会員と比較すると、年間利用回数は2倍、来店時の人数は1.3倍
- ポイント会員のランクが高いほど、特典利用率も高い(前述のとおり、ランクが低い人は失効する率が高い)
3つの改善ポイント
① ロイヤルカスタマー化
- まいどポイント会員で、かつ会員ステータスが高いユーザーほど使用頻度が高いことがわかったが、ユーザーが現在のステータスを把握しづらい
- メールアドレスが変更できない仕様のため、アドレスが変わった際にポイントが引き継げない
② 受付・予約の利用率向上
- ボタン内の文字数が多く、見づらい
- デザインがユーザーに伝わりにくい
③ 販促効果UP
- トップページのバナーへの依存度が高い
改善結果
これらを踏まえてアプリトップ画面を改善した結果が以下だ。
① まいどポイントのステータスを表示
まいどポイントが現在何ポイントか、特典がある/ないなどがトップに表示されるようにすれば「それなら行こう」と思ってもらえるだろう。
② 近隣店舗の待ち時間をイートイン、テイクアウトともに表示
来店の待ち時間とお持ち帰りの待ち時間を表示して「店は混んでいるけど持ち帰りならすぐだから、持ち帰りにしよう」と思ってもらうことが狙い。
③ 予約後は番号を表示
予約完了画面には、呼び出しまでの目安時間以外に、次に呼び出し予定の番号の表示を追加した。自分が呼ばれるまであと何人かがわかることで、ユーザーの利便性向上だけでなくキャンセル抑止効果をも期待している。アプリでの来店予約は簡単にできるが、逆にキャンセルも簡単にできてしまうため、キャンセルが多いことも課題だったからだ。
その他、キャンペーン情報や店舗の情報など、ユーザーへのアナウンスを集約し、販促効果を高めるために画像を追加した。
アプリリニューアル後もブラッシュアップ
もちろん、アプリもリニューアルがゴールではなく、そこから利用数や利用金額にインパクトを与えるための改善を日々続けていくことになる。現在、アプリの情報とCRMの情報をメールアドレスで紐づけて、ユーザーが何をどれくらい利用したかがわかるようにしている。それをふまえて、今後LINEとの連携やプッシュ通知の活用など、さらにブラッシュアップしていく予定だという。
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