9segsを用いた顧客分析とは? フレームワークで顧客起点マーケを実現
マーケティングが成功し続ける企業に共通する点は何だろうか。
- 自社に秀でたマーケターがいるからだろうか?
- 顧客起点マーケティングアプローチの仕組みが整っているからだろうか?
サイバーエージェント主催のイベントに登壇したM-Forceの代表 長 祐(ちょう たすく)氏は、それを後者の仕組みによるものだとし、顧客を9つのセグメントに分けるフレームワーク「9segs(ナインセグズ)」を用いた、「顧客起点マーケティングアプローチの仕組み」について解説した。
中長期にわたる持続的なビジネス成長に必要なフレームワーク
「顧客を起点にマーケティングを考える」とは一体どういうことなのだろうか。顧客起点のマーケティングを可能にするものとして、次の3つを挙げた。
- 組織内の共通認識形成
- 戦略の一貫性
- 施策の一貫性
顧客起点のマーケティングを実現するには、マーケティング部署に所属している人間だけでなく、研究開発部門だったり、営業部門だったり、経営だったりと、組織全員が同じ顧客を見て、戦略が一貫されており、施策が一貫されていることが必要だという。
長氏は、中長期にわたる持続的ビジネス成長には、「顧客を起点にしたマーケティングの仕組みが重要になってくる」と説明する。「仕組み」すなわち顧客を起点にしたフレームワークに重要な条件としては、長氏は以下3つを挙げた。
売上など経営指標に直結したKPIを持つ
定めたKPIが向上しているのに、ビジネスが伸びないことが、これはマーケティングとKPIが経営に直結していないためである。フレームワークに則って、戦略を考え、施策を実行すると、売上が向上していくことがフレームワークに必要なポイントだ。
戦略→実行→効果測定と体系立っている
「顧客を見て終了」ではなく、戦略、実行、効果測定どれかが欠けることなく、すべてがフレームワーク上で管理でき、それらすべてが体系立ってアプローチできる。
組織全員が理解でき、使いこなせる
フレームワークというのは、組織の全員が使いこなせて、理解できるものでなければいけない。
顧客を起点としたフレームワーク「9segs」とは
ここで、M-Force社で導入支援している「9segs(ナインセグズ)」というフレームワークについて解説していった。9segsとは、顧客を9つのセグメントに分解して分析することで、ビジネスを成長させる顧客戦略を導くフレームワークだ。顧客戦略とは、「誰に(Who)、何を(What)提供するのか」というマーケティングの本質的な部分のことを指す。
9segsでは最初に、セグメントをシンプルな分類として5つに分ける。
- ロイヤル顧客 頻度高く利用している顧客
- 一般顧客 今も利用している顧客
- 離反顧客 以前ユーザーだったが利用を辞めてしまった顧客
- 認知・未購買顧客 知ってはいるが、まだ利用したことのない顧客
- 未認知顧客 自社のブランドを知らない顧客
続いて、「未認知顧客」を除く、各セグメントで「積極顧客」と「消極顧客」に分けていく。自社のブランドを買いたい顧客を「積極顧客」、競合ブランドを選んだ顧客を「消極顧客」と定義し、4つのセグメントで適応させ、9つに分類する。
各セグメントに「積極顧客」と「消極顧客」に分ける理由を、コンビニを例に挙げ説明した。たとえば、コンビニのロイヤル顧客、すなわち頻繁に利用している顧客のなかには、次の2つの状態の顧客が含まれている。
- 自宅や通勤時に利用しやすいため頻繁に利用している顧客(消極顧客)
- 買いたい商品やそのコンビニに次回も行きたいと思って頻繁に利用している顧客(積極顧客)
自宅や通勤時に利用しやすいため頻繁に利用している顧客(消極顧客)に対しては、積極顧客になってもらうための施策やアクションが必要になるし、買いたい商品やそのコンビニに次回も行きたいと思って利用している顧客(積極顧客)が多いにも関わらず、売上が伸び悩んでいる、という場合は頻度を向上させる何らかの活動が必要になってくる。
このように顧客を「未認知顧客」→「認知・未購買顧客」→「離反顧客」→「一般顧客」→「ロイヤル顧客」に引き上げていく施策と「消極顧客」→「積極顧客」に変えていく施策は、マーケティングのアプローチが異なるため、それぞれを分けて考える必要がある。そのため、9つの顧客セグメントごとに分析を行い、最適なアプローチ方法を考えていく。
9segsに基づいて、顧客起点のアプローチをしていくと次のようになる。
1. 自社ブランドの成長には、どの顧客を伸ばすべきなのか?
9segsのなかで自社ブランドの成長に欠かせないセグメントがどこなのかを定める。たとえば、9segsに自社ブランドの調査結果と競合ブランドの調査結果をプロットしたシートをそれぞれ比較しながら検討していく。
競合のロイヤル顧客数と自社ブランドのロイヤル顧客数は同じく15%だが、その内訳をみると、競合の積極顧客が10%に対して、自社の積極顧客は5%。自社のブランドは競合に比べて、意識的に選ばれるブランドになっていないということがフレームワークから読み取れる。
このように、9segsにプロットされた値を見ながら、「どの顧客セグメントに強いのか」「弱い部分はどこなのか」「どこを伸ばすべきか」といったことを、把握していく。
2. この顧客はどのような顧客像なのか?
「伸ばすべき顧客はどういった人なのか」ということを明らかにしていく。9segsは定量調査のデータを9つに分類してプロットしていくので、たとえば、デモグラや価値観にまつわる(Whoデータ)、ブランドに対するイメージにまつわる(Whatデータ)、行動にまつわる(Howデータ)が含まれている。それらのデータをもとに、誰をターゲットにすべきなのか、ということを議論し、決定していく。
3. その顧客にどのような価値を提供すればいいのか?
次に、どういった価値に顧客が突き動かされて、セグメント分類を移動しているのか。これを明確にしていくために、それぞれのセグメントを比較していく。たとえば、積極顧客と消極顧客を比べることで、その理由が浮き彫りになってくる。
4. その価値はどのようなアイデアで具現化すればいいのか?
ここまで決まったら、「その価値をどう具現化するのか」「コンセプトはなんなのか」ということを突き詰めていく。
アイデア出しのフェーズではN1調査と言って、それぞれのセグメントの中で象徴的な人物にデプスインタビューを行う。たとえば、彼らがそのブランドを使っている理由など、背景を掘り下げる作業をしていきながらアイデアを作って行く。
そこで出た複数のアイデアから、どのアイデアが、どのセグメントに最も響くのかをもう一度9segsで定量的に見定めてから実行につなげていく。
5. 施策実行後に顧客動態はどう変化したのか?
施策を実施して終わりではなく、その施策の効果検証までしてく必要がある。 このように、5つのサイクルを実施し、PDCAサイクルを回していくことで、顧客起点を中心に置きながら、戦略策定や仮説策定、コンセプト策定、実行、トランキングまでが実施でき、その戦略が正しいのか、判断できる。
長氏は、セッションの最後に、「世の中にはいろいろなフレームワークがあるが、組織全員が使えるようなフレームワークでないといけない。複雑怪奇なものは、適さない。全員が一丸となって、同じ顧客を見て、施策を実行していくことができないフレームワークでは意味がない」と述べセッションを締めくくった。
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