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コロナ禍での転職。DX求人で失敗しないために気をつけたいこと

マーケターコラム、今回は村石怜菜氏。自身の経験から「コロナ禍での転職」と「DX人材」について考えたこと。

こんにちは。村石怜菜です。前回のコラムでは、私のキャリア変遷について書きました。小売出身ではない私のキャリアに興味を持って、SNS上で感想を書いてくださった方もいて、恐縮な反面、嬉しくもありました。ありがとうございました。

前回は新卒時のキャリアに焦点を当てましたが、今回のトピックは転職活動。私が現職に就くことになった2020~21年の転職活動の際に思ったこと、遭遇したことを書きたいと思います。キーワードは「コロナ禍での転職」と「DX人材」の2つです。個人的な体験ではありますが、ごく最近の実体験に基づく話ですので、特にIT業界やマーケター職で転職を考えている方には参考になる話も多いと思います。ぜひ読んでみてください。

コロナ禍を機に「DX推進に携わりたい!」と転職を決意

2020年春、日本でもコロナが蔓延した頃、私はエンターテインメント業界向けSaaSを提供するベンチャー企業で、プロダクトマネージャーとして勤務していました。

DXが推進されているとは言い難い業界でのコロナ禍でのできごとは本当に目まぐるしい日々で、コロナ禍以前に用意していたものが不要になり、オンラインでのつながりが重要になり、プロダクトの方針がピボット(路線変更)する、の繰り返しでした。あまりにも忙しくて、その時の記憶は一瞬しかありません。きっとほとんどの方がそうだったと思います。

しかし見方を変えれば、このコロナ禍が、レガシーなシステムが鎮座し、外注文化がはびこる日本企業を、いやが応でもDX推進せざるを得ない状態に追い込んだ、とも言えます。そして私自身もDXの重要性を痛感し、その推進に直接携わりたい!という気持ちがむくむく湧いてきたのでした。

今までで一番本格的に取り組んだ転職活動

転職活動を始めた私の狙いは、これまでの経歴が生かせる小売/流通業界で、DXを推進している企業でした。

エージェントに登録したり、求人サイトに掲載されていない企業の採用サイトを覗いたり、知人に話を聞いてみたり。振り返れば、と今までで一番真剣に(!)転職活動に取り組んだと思います。

カジュアル面談もたくさん受けたし、気になった企業にはコロナが落ち着いたタイミングを見計らって自費で飛行機で見学にも行きました。土日にも関わらず対応してくださった担当の方には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。小売/流通の世界から2年半ほど離れていた私には、勉強になることしかありませんでした。

しかし、結論から言うと、私が見聞きした企業の中には、残念ながら、ウォルマートのような先進事例を実践するようなところは、まだまだほとんどありませんでした。最終的に、現在、私はフィンテック業界のプラットフォーマー企業で働いています。

フィンテック業界を選んだのは、小売とは切っても切れない関係だからです。当初に狙ったところとは少し違う業界に来てしまいましたが、でもここならきっと、これまで身につけた小売/流通の知見が役に立つだろう、という考えがあったからこその決断でした。

「DX人材募集」には要注意!

転職活動中にもっとも印象的だったのは、「DX人材求む」と掲げる求人やスカウトがとても多かったことです。そうした求人の多くは、コンサルティングファームや、小売/流通企業でした。特に小売/流通企業でDX推進を担いたいと思っていた私にはうってつけな状況ですが、これだけの求人があるということ自体が、まさにあらゆる企業においてDX待ったなしの状況を物語っているとも思いました。

しかし、求人案内に溢れる「DX人材募集!」の文字を見るにつけ、次第に違和感も出てきました。ここに書かれている「DX人材」という言葉が抽象的すぎて、いったい何を指しているのか……。「企業のDX推進に直接携わりたい!」と思って転職活動を始めた私でしたが、実は、彼らが望む「DX人材」が何なのか、はっきりとは分かっていませんでした。

コンサルティングファームの求人については、ITリテラシーが高く、上流から提案できる人材を求めているという点で明確です。しかし、小売/流通企業の求人は、何をやるかが明確ではない求人も多くありました。

きっと、上層部からの指示でDX推進が義務となっていて、ゴールが社内で合意形成されていないのでしょう。募集要項を見るだけでも、そんな「社内の空気」は何となく分かるもの。具体的なミッションが想像できない募集要項しか出ていない求人は要注意です。

転職活動中の驚きの体験

「業務内容が不明瞭な求人には要注意」ではありますが、それだけですっぱり切り捨てるのも良くないと思い、2~3社ほどカジュアル面談を受けてみました。しかし結果的には求人情報を見た際の印象が変わることはありませんでした。

ある企業では、一次面談にも関わらず、上層の役職者や社長がいきなり登場して、1~2時間、壁打ち(課題やアイデアを話して聞いてもらうこと)の相手にされたことがありました。驚くべきは、これが1社だけの話ではなく、他にも数回あったことです。どこの企業でもDXをどう推進するか、そのためにどのような人材をあてるべきなのかは試行錯誤中なのかもしれません。

また、社名匿名でエージェントから紹介されたDX推進部署の求人では、募集要項の業務内容に「関連企業との会議調整・連携」という業務が明記されていたことに驚きました。匿名とはいえ、会社説明文から社名は容易に推測できたのですが、非常に有名なエンタープライズ企業です。「この規模の企業でも、こんなものかぁ」と落胆したことを鮮明に覚えています。

私たちは今、売り手市場に遭遇しているのかもしれない

そうした状況から言えるのは、デジタルマーケティングに精通している人材にとって、現在は大変な売り手市場だということです。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では「2025年にDX転換が進まなければ年間で最大2兆円の経済損失が出る」と予測されています。また、2020年の「DXレポート2」では2018年に発表した「IT人材需給に関する調査」を参照して、「2030年までに(IT人材は)45万人の需給ギャップが生じる」と、改めてデジタル人材の不足を強調しています。

国がここまで危機感を煽って人材不足と声高に言うからには、IT系の職業に従事している我々にとっては、今こそまさに自分自身を高値で売るチャンスと言えるのではないでしょうか。

しかし、この好機をゲットするためには、自身のスキルと現状把握が重要です。企業が「DX人材」で求めるスキルと、自身のスキルが合致しないと、最悪の結末に至るのは容易に想像できます。

そこで、経済産業省が2018年に発表した、通称「DX推進ガイドライン」から、「DX人材」を説明している部分をピックアップすると、下記の2点になります。

  1. DX推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
  2. 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取り組みをリードする人材、その実行を担っていく人材

このガイドラインでは、「DX人材はDX推進部門だけでなく各事業部門にも必要だ」と言っています。DXはデジタル関連部署だけの仕事ではなく、全社一丸となって取り組まなければならない課題だということです。その会社のDX全体構想と方向性を理解できるかどうかが、ビジネス領域におけるDX人材への第一歩なのではないかと思うのです。

目まぐるしく変化する時代、3年後を想像して動く

変化が激しい今の時代は、企業だけでなく、人も「変化すること」が、生き延びるための条件です。「人が変化する」には「環境の変化」が必要。働く人間にとっては転職が一つの選択肢ということになります(もちろん、転職ではなく、部署異動や出向・転籍などができる方はそれを活かすこともおすすめです)。

変化を求めるならば、まず今を起点に3年後に自分がどうありたいのかを描いてみましょう。その姿を軸にすれば、転職するにしろ、部署異動するにしろ、ブレが生じないと思います。

プロダクトマネージャーとしてロードマップを描いていた私がもっとも身に染みたのは、「1年先のことを想像するのは難しい、ましてや5年後なんて誰も想像ができない」ということです。3年先が精一杯だというのは、私の強い実感です。

「DX人材」と一口に言っても、求められるスキルは多様化し、プロダクトサイドとビジネスサイドとで明確に業務分掌を線引きすることは難しい時代になりました。UI/UXデザイナーやエンジニアがマーケティングを、ビジネスサイドがUI/UXやデータ分析を習得する時代です。だからこそ枠にとらわれず、自分の業務もグラデーションで楽しんでいきたいものです。

特にビジネスサイドには、世代的にもITスキル/知見のない役職者が多く、もやもやすることも多いですが、若い世代の方々はスキル自体がすでにトランスフォーメーションされた状態です。その新しいスキルを積極的に武器にしていきましょう。

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