UXデザインはじめの一歩 ーインタビュー技術を磨こう!

ユーザーインタビューで使える! 質問力を上げるコツ④【発話録サンプル付】

ユーザーインタビューの会話術を前回に引き続き詳しく解説していきます。
この記事は、Think ITで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。

前回は、ユーザーインタビュー実査について、Aさんとの本物の会話をとりあげて、会話テクニックを解説しました。

今回はBさんのインタビュー発話録をもとに、Aさんのインタビューではなかった会話テクニックを解説していきます。

●ユーザーインタビューの全文ダウンロード(無料)
今回紹介するユーザーインタビューは、筆者が本記事を執筆するために、公開許諾をとったうえで実際に行ったものです。通常、インタビュー内容は機密保持のため公開されることはありません。全文公開はたいへん貴重な資料となりますので、ぜひこちらからダウンロードしてください!

インタビュー対象者の
事前アンケートシートの回答を確認する

Bさんにも第11回で紹介した「事前アンケートシート」を送り、回答をもらっています。

Bさんの事前アンケートシートは以下です。このアンケート回答をBさんに見せながら、話をしていきます。

 質問回答
1お持ちの資格をすべて教えてください実用英語技能検定準1級
TOEIC Listen&Reading テスト 835点
普通自動車運転免許
日本サッカー協会 C級指導者ライセンス
中学校・高等学校教諭 一種免許状(外国語・英語)
2そのうち、いちばん最近に取った資格を教えてくださいTOEIC Listen&Reading テスト 835点
3お持ちの語学の資格をすべて教えてください。また得点(TOEICなど)や級(英検など)も教えてください実用英語技能検定準1級
TOEIC Listen&Reading テスト 835点
4あなたは学生ですか、社会人ですか社会人
5ここから、もっとも最近に取った資格についてお聞きします。その資格を取ろうと思ったきっかけを教えてください自分の英語力に客観性を持たせるため、また就職に有利になるため(英語科教員になるため)に取得した
6その資格以外に検討していた資格はありますか。そのなかで、なぜその資格をえらんだのですかTOEFL IBTテストの受験を検討し、現在学習に励んでいる。社会人になり学習に取り組み始めたが、それまでは難易度の高さを理由に逃げてしまっていた
7その資格を取ることで、どんなメリットがあることを期待していましたか転職を含めた就職活動
資格取得に励むことで得られる英語力
8その資格を目指すにあたり、不安に思ったり、気になったりしたことを教えてください英語力を測定する資格を中心に取得しようと学習に臨んだ。そのため試験を実際に受験し、結果が出るまでは自身の成長があまり感じ取りづらいこと
9受験までどのように勉強を進めたのか、教えてください単語学習→過去問等→その解いた問題の復習
10受験までの期間、どのようにしてモチベーションを維持したのか(あるいはしなかったのか)、教えてくだいぼんやりと資格取得後のことをイメージしていたが、あまり効果は実感できず、、、惰性で毎日勉強を続けていた
11具体的にどんな時間帯に勉強をしましたか。それはなぜですか終業後、休日の午前中。仕事がない日を活用したため

それでは、本物の会話を見ながら、インタビューの進めかたや、会話テクニックを解説していきます。Aさんと同じテクニックを使っている箇所は省略して、ポイントだけを抜粋します。

「軸となる質問」と
「その場その場で掘り下げる質問」で
ユーザーの深い価値観に分け入る(続き)

質問パターン8:それがないとどうなるのか訊く

インタビュー対象者が「X」という選択をしていたとき、「なぜですか」という質問を重ねると「Xがあると良い理由」が返ってきます。しかしその回答がいまいち具体的でないときがあります。「ではXがないと何が起こるのか」を尋ねることで、Xの必然性を発話してもらうことができます。

【質問の例】
  • 「〜がないと、何が起こるんですか」
  • 「〜がないと、どうなるんですか」
  • 「今のままじゃダメなんですか」

この話術は、前回で紹介した「質問パターン7:あえてあり得ない選択肢について質問する」の極論として「現状維持」に振り切ってみている、と理解することもできます。

  • Bさん:英検だったら準1級ですとか、1級ですとか、TOEICだったら例えば800何十点あるよと言えた方が、ただ口で自分は英語ができるよと言うよりも、ちゃんとこの先生は勉強してるんだな、この人はそれなりに大学で社会人でこうやってきたんだな、とわからせる、少しでもわかってもらえる要素があればいいかなと思って取得に励んでます。
  • 羽山:なるほど。ありがとうございます。今おっしゃっていただいた、自分の英語力に客観性を持たせるためということで、資格がないと何が起こるんですか
  • Bさん:とくに教員っていう立場からすれば、いい悪いがあるってことではないんですけど、例えば、生徒からなんで英語を勉強するんですかという質問になったときに、資格を取っていれば就職活動のときにアピールの要素の一つになるよ、という例え話をすることで、きっかけになる生徒もいるかなと思って話をするんです。そういう展開になったときに、じゃあ先生はどれぐらい持ってるんですかということを聞かれることが多いので、自分はTOEIC500点ですとか、英検は準2級しか持っていませんとかっていうと、話に説得力を持たせることができない。自分の話を聞いてもらえるための一つタネじゃないですけど、そういったようなイメージです。

Bさんの会話では「生徒からなんで英語を勉強するのか質問されたとき、説得力をもって回答したい」という心理が明らかになりました。

質問パターン9:言語化を強制する

インタビュー対象者が話しているとき、深い心理について語ろうとしているのだけど、抽象的なキーワードばかり出て、あとちょっとうまく言葉にならない、ということがあります。あるいは概論が多く、具体的なエピソードが欠けていることがあります。

そういうとき、さまざまな質問を重ねても、上滑りして発話が深まらないことがあります。

  • Bさん:例えば、生徒からなんで英語を勉強するんですかという質問になったときに、資格を取っていれば就職活動のときにアピールの要素の一つになるよ、という例え話をすることで、きっかけになる生徒もいるかなと思って話をするんです。そういう展開になったときに、じゃあ先生はどれぐらい持ってるんですかということを聞かれることが多いので、自分はTOEIC500点ですとか、英検は準2級しか持っていませんとかっていうと、話に説得力を持たせることができない。自分の話を聞いてもらえるための一つタネじゃないですけど、そういったようなイメージです。
  • 羽山:なるほど。実際に何かそういうエピソードがあったということですか
  • Bさん:そうですね。例えば、なんで勉強するんですかみたいな話とか、勉強があまり好きじゃないとか、英語嫌いですみたいな生徒がやっぱり多いんですね。なんで勉強するんだっていう話をたまに、年に1回とかする機会がどうしてもあるので、そういったときに、英語使えるとこんなことできるよ、という話はした方が、少しでもやる気が出るので、そういったときに、今話した展開が起こるというか。

会話が上滑りしていると感じたときは、率直に「言語化してください」と申し入れる方法があります。「その〜を、言葉にしていただくことはできますか」と質問するのです。

インタビューの場では、インタビュー対象者はあなたに話をすることを了解しているからその場に来ているので、「あなたが知りたいことが知れるまで相手に発言を求めてよい」という暗黙の前提が成り立っています。対象者もできるかぎりあなたのために話をしようと思っています。

もし言葉が足りないとあなたが思ったら、「インタビューの目的としてその部分をはっきり知りたいから、もっと言葉にしてほしい」と率直に申し入れても大丈夫です。

【質問の例】
  • 「その〜を、言葉にしていただくことはできますか」
  • 「その〜を、もうちょっと詳しく教えていただけますか」
  • 「その〜とは、具体的にどのようなエピソードがあったのですか」

Bさんのインタビュー中盤でも、以下のように「言語化を強制する」質問をしています。

  • Bさん:1回目が社会人1年目のときに受けて、2回目は先日ですかね。11月12月ぐらいに受けましたね。
  • 羽山:なるほど。本当につい先日なんですね。
  • Bさん:はい。4年目の11月。
  • 羽山:ここ、もうちょっと詳しく教えていただきたいんですが、まず1年目の方のときのことなんですが、これはなぜ受験されたんでしょうか。
  • Bさん:これは留学のプログラムがあるっていうのを知って、TOEFLが必要っていうところで受けてみるかっていうところで受けました。

質問パターン10:矛盾している箇所について訊く

Bさんは「留学をするためにTOEFLを勉強していた」という話をずっとしていたにもかかわらず、なぜかTOEFLではなくTOEICを受験しています。インタビュー対象者がつじつまの合わない話をしたとき、その矛盾の背景には、対象者のなかに葛藤する複数の心理があります。

  • 羽山:社会人3年目のときにその留学のプログラムをご覧になって、社会人3年目からTOEFLを勉強されて、そのあと、TOEICを受けようかなって、わき目をしてるわけないと思いますけど・・・。何があったのかなと
  • Bさん:そうですね。TOEFLの勉強だけをしていて、TOEFLのスコアを取れればいいなと思ってやってるんですけど、万が一、留学が行けないとか、自分の努力が足りなくて行けませんでしたとなったときに、予防線といいますか、あるにこしたことはないなという、ちょっと軽い気持ちで受けた感じはあります。一応、英語科教員として働いていて、もし転職活動しますとかっていうふうになったときに、履歴書に英語の資格とかでぜんぜん何も書けるものがないとか、ちょっと低いスコアだったりとかっていう形だと、印象が悪いかなみたいなふうに考えまして。

葛藤する複数の心理は、あなたがユーザー心理を理解するためのよい手がかりになります。そこで、さりげなく矛盾をほのめかして「なにがあったんですか」と質問してみます。ただし正面から「矛盾してます」と突っ込むと、インタビュー対象者をとがめている雰囲気になってしまうので、言葉をえらんで質問します。

【質問の例】
  • 「〜と〜のあいだには、なにがあったんですか」
  • 「〜と〜が私のなかでうまくつながらなくて、もう少し説明していただけますか」

質問パターン11:具体的な量を訊く

インタビュー対象者が量について語っていても、その具体的な量がどれくらいか発話されないときは「どれくらいですか」と尋ねてみましょう。

  • Bさん:ちょっとお金はかかったんですけど、全部までいかないですけど、何冊か、1冊ずつぐらい買ってみて。やっぱり本当に基礎の基礎からとか出している参考書もあれば、ちょっとある程度できる人用の参考書もあって、もう一回、自分は基礎の基礎からのところのものをやってますね。参考書の難易度とか内容をちょっと見比べて、やってみて、自分のレベルにはこれが合うかなというものをやってるっていうところですね。
  • 羽山:ちなみに何冊ぐらい買ったんですか
  • Bさん:3冊ですね。今。

Bさんの会話では「出版されている全部とはいかないまでも、何冊も参考書を買った」と言うのですが、それが5冊か50冊かでは、話がずいぶん異なります。掘り下げたところ、いわゆる「松竹梅」という思考で3冊をえらんでいる心理がわかりました。

【質問の例】
  • 「〜というのは、具体的にいくつですか?」
  • 「〜というのは、頻度はどれくらいですか?」

質問パターン12:何と比較しているのか訊く/何を期待していたのか訊く

AさんのインタビューでもBさんのときも、たまたま使う機会がなかったテクニックで、よく使うものを紹介しておきます。「何と比較しているのか訊く」「何を期待していたのか訊く」です。

たとえば、次のような会話です。

  • インタビュー対象者:参考書を買いに本屋に行きました。でも並んでいたやつを見て、これならいらないやと思って、買わないで帰りました。
  • モデレーター:いま「これならいらないや」とおっしゃいました。たぶん脳内に欲しいもののイメージがあって、それと比較していたんだと思うのですが、どんなものを浮かべていたんですか?
  • インタビュー対象者:なにか具体的に決めていたわけじゃないんですけど・・・本当に基礎から学べるような、小学生が英語を学ぶようなものがよかったんですよね。

インタビュー対象者が「X」という選択肢をえらんだ(またはえらばなかった)とき、対象者の目の前にほかの選択肢「Y」や「Z」が具体的にないにもかかわらず、「X」という意思決定までになんらかの比較がされていた形跡があります。

どんなものが比較対象なのかを言語化してもらうと、そこにインタビュー対象者の深い心理が現れます。このような発話のとき、対象者は「なんかちがう」というような、ぼんやりとした比較をしているだけのことがほとんどです。あいまいな思考を意識的に言語化してもらいます。

上記のやりとりで、モデレーターの質問は次のような言い回しでも、同じ効果があります。「何を期待していたのか」を訊きます。

  • モデレーター:いま「これならいらないや」とおっしゃいました。どんなものなら欲しかったということなんでしょうか?

この質問はWebサイトやアプリの使い勝手について質問するときも便利です。インタビュー対象者がその製品をどのように認識していて、どう期待が裏切られたのかを発話してもらうことができます。

  • インタビュー対象者:このリンクを押してみたんですが、開いたページで広告がドーンと出てきたので、すぐにバックボタンをしました。
  • モデレーター:なるほど、するとそのリンクを押したとき、何が起こることを期待していたのでしょうか?
【質問の例】
  • 「〜とおっしゃいましたが、なにかと比較してそうおっしゃったんだと思うのですが、どんなものを浮かべていたんですか?」
  • 「〜とおっしゃいましたが、それは何と比べていたということでしょうか?」
  • 「〜とおっしゃいましたが、どんなものなら欲しかったということなんでしょうか?」
  • 「〜とおっしゃいましたが、何があればよかったということでしょうか?」
  • 「〜とおっしゃいましたが、何が起こることを期待していたのでしょうか?」
  • 「いま、何を思い浮かべて、その話をされていますか?」

この「質問パターン12」は「質問パターン4:ほかの選択肢をとらなかった理由を訊く」に似た質問ですが、ほかの選択肢があいまいだったときに用います。

質問パターン13:自身はどう思ったのかを訊く

「自身はどう思ったのかを訊く」もよく使うテクニックです。インタビュー対象者の性格によっては、ひたすら「意見」や「一般論」を語り続ける人がいます。たとえば、次のような会話です。

  • モデレーター:当社の製品を店頭で見たとき、どんなことを思いましたか?
  • インタビュー対象者:今どきの若い子は、もっとポップな色合いのほうが好きなんじゃないかな。もっと明るくくてかわいい色合いにしたほうがいいと思いますよ!
  • モデレーター:ご自身はどう思われたのですか?
  • インタビュー対象者:えっ私!? 私は・・・。

このようなときは、強制的に自身の話に引き戻します。意見や一般論はインタビュー対象者の想像でしかなく、具体的な根拠として使えないためです。

【質問の例】
  • 「ご自身は、どう思われたのですか?」
  • 「ご自身は、どうされたのですか?」
  • 「ご自身では、いかがですか?」

インタビュー対象者が意見や一般論を語り続けるケースは、次のときが多いです。

  • モデレーターがうっかり「この製品は10代むけで・・・」というように、インタビュー対象者に伝えてしまったとき。このような情報が与えられると、インタビュー対象者は「10代なら・・・」と自分ではない人について考えはじめる
  • インタビュー対象者が「この製品はこうあるべき」という先入観をすでにもってしまっているとき
  • 不正解を話してしまうことをインタビュー対象者の無意識のプライドが邪魔するとき。年配の男性や役職のある方は「まちがったことを言ってしまって他人に否定される」ことを無意識に恐れる傾向があるため、自分がどう感じたのかという率直な感情を離さず、ひたすらに一般論を語り続けようとすることがある

「相手の話を要約する」
という話術は慎重に用いる

ユーザーインタビューの質問術は、心理カウンセリングやコーチングの会話術にも似ています。ただ、心理カウンセリングで推奨されている会話術のなかで、ユーザーインタビューでは慎重に用いるべきテクニックがあります。

それは「要約」です。心理カウンセリングでは、相手が話したことを「要約」するという話術がよく用いられます。たとえば、Bさんのインタビューを「要約」の話術を用いたとして書き換えるならば、次のような感じです。

【元の会話】

  • Bさん:日々、なんで勉強するのかみたいなことを説く立場にはいるんですけど、なかなか自分もそれを感じることができない部分もあり、まだ英語を勉強している段階で、英語を使う側にはちょっと回ってないかなっていう感じもあるので、とにかくまずはスコアを出したいなという気持ちで、それを書きました。
  • 羽山:なるほど。モチベーションが例えばこの半年間ぐらいの話でいうと、どんなふうに動いてました?
  • Bさん:そうですね。自分も社会人4年目であんまりこう若くはないので、けっこう時間が限られてるなってことをすごい感じるので、そういった意味で、やらざるを得ないまではいかないですけど、そろそろ遊学にチャレンジできる年数も限られてるのかなっていうふうに感じている部分があったので、モチベーションがっていうのはあまり考えずに、惰性でと言ったらちょっとそこまでなあなあではないですけど、淡々とやろうかなというような気持ちではいましたね。
  • 羽山:なるほど。時期によってモチベーションの高くとか、たくさん勉強できる時間、できない時間とかっていうのはありましたか。

【「要約」の話術を用いた場合】

  • Bさん:日々、なんで勉強するのかみたいなことを説く立場にはいるんですけど、なかなか自分もそれを感じることができない部分もあり、まだ英語を勉強している段階で、英語を使う側にはちょっと回ってないかなっていう感じもあるので、とにかくまずはスコアを出したいなという気持ちで、ちょっとそれを書きました。
  • 羽山:なんで英語を勉強するのか、自分でも実感が得られなかったのですね。モチベーションが例えばこの半年間ぐらいの話でいうと、どんなふうに動いてました?
  • Bさん:そうですね。自分も社会人4年目であんまりこう若くはないので、けっこう時間が限られてるなってことをすごい感じるので、そういった意味で、やらざるを得ないまではいかないですけど、そろそろ遊学にチャレンジできる年数も限られてるのかなっていうふうに感じている部分があったので、モチベーションがっていうのはあまり考えずに、惰性でと言ったらちょっとそこまでなあなあではないですけど、淡々とやろうかなというような気持ちではいましたね。
  • 羽山:社会人4年目で、遊学に遣える残り時間も限られていると感じたので、淡々と勉強をするようにしたのですね。時期によってモチベーションの高くとか、たくさん勉強できる時間、できない時間とかっていうのはありましたか。

「要約」という話術は、相手の発言を受け止めて「つまりこういうことですね」と整理して投げ返します。心理カウンセリングでは、こみ入ってきた相手の話を整理してあげることで、相手が混乱をぬけて自分を見つめなおすきっかけを渡します。同時に「自分の話を真剣に聞いてくれている」という安心感を、相手に与えることができます。

ユーザーインタビューで「要約」が問題になるのは「こみ入ってきた相手の話を整理してあげる」ときに、どうしてもモデレーターの主観や誘導が入ってしまうことです。

たとえばBさんとの会話で、筆者が「英語を教える立場にいるにもかかわらず、英語を学ぶ実感がもてない自分に後ろめたさがあったのですね」と要約していたらどうでしょうか。Bさんに「後ろめたさがあった」という言葉を渡すことで、Bさんは「(そうだ、自分には後ろめたさがあった)」と誘導されてしまうかもしれません。

心理カウンセリングでは、相手が自力では混乱した状態を解決できないときに「要約」してあげることで、解決できる方向へ誘導します。しかしユーザーインタビューではむしろ、どんな混乱がユーザーのなかにあるのか、ありのままの状態が知りたいのです。

もちろんユーザーインタビューでも、相手に「あなたの話をちゃんと聞いているよ」と示すことは必要です。誘導にならないよう、最低限の要約だけに留めるようにします。

おわりに

今回は、Bさんのインタビュー発話録をもとに、Aさんのインタビューではなかった会話テクニックを解説しました。

会話するということはどこかしらインタビュー対象者を誘導してしまう可能性があり、いかにフラットな状態を維持し続けることができるかがポイントです。

インタビューの中心部分についての解説はここまでです。次回は、インタビューのクロージングについて解説します。

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