2年半でフォロワー数が10倍に! タイガー魔法瓶が仕掛けた3つのキャンペーンとSNS戦略
2023年に創立100周年を迎えたタイガー魔法瓶。魔法瓶や調理家電の老舗メーカーである同社は、100周年に合わせ、公式X(旧Twitter)にて「100日間連続で、毎日タイガー製品が当たる」キャンペーンを実施した。
「Web担当者Forum ミーティング 2023 秋」では、タイガーの広報宣伝チームで活躍する林優紀氏が登壇。2年半でXのフォロワー数を10倍に伸ばしたSNS戦略を語った。
公式Xアカウントのフォロワーが2年半で10倍に急増⁉
タイガーでは、YouTube、LINE、Instagram、X(旧Twitter)など複数の公式アカウントを運用している。林氏がSNS運用担当になったのは2021年4月。当時のフォロワー数と比較すると、X(旧Twitter)は約2万人→約20万人で10倍、Instagramは約2.5万人→約12.6万人で10万人増と、この2年半で飛躍的な増加を見せた。
とはいえ、一筋縄ではいかなかったと林氏。運用初期には、「日々投稿して運用改善してみるも、フォロワー数自体が少ないので反応が見えづらく、難しい」という悩みがあったという。
また、企業としては以下のような課題があった。
- 年齢層の高い世代に比べて、若い世代からのタイガー魔法瓶の認知度が低い
- 「知っていても使ったことがない」人が一定数いる
そこで、SNS運用の目的を「ブランド認知・理解の向上と、タイガーの商品を選んでもらえるような接点を増やすこと」と定め、メインのKPIは「フォロワー数」に設定。数字を伸ばすだけではなく、顧客により興味関心を持ってもらえるようなキャンペーン設計を目指したという。
ここからは、実際にタイガーが行った「お客様目線」のキャンペーンを3つ紹介する。
2022年の運気最強ベビーに「寅年お食い初め 応援キャンペーン」
まず1つ目が、2022年6月に実施した「寅年お食い初め 応援キャンペーン」だ。
2022年は「寅年」ということもあり、トラにゆかりのあるタイガーが寅年生まれの子どものお食い初めをサポートしたいという意図で、抽選で6名にタイガーの炊飯器が当たるキャンペーンを実施。拡散力とターゲットの親和性を考え、XとInstagramの両方で行った。
実は2022年は、九星気学の一つである『五黄土星』と十二支の『寅年』が重なる、36年に一度の『五黄の寅』。そんな2022年生まれの最強運気ベビーに、タイガーの最上位土鍋炊飯器で炊いた美味しいごはんを食べてほしい、ご家族で喜んでほしいという思いを込めました(林氏)
結果は上図の通り。あくまで参考値だが、1月~6月の半年間に生まれた赤ちゃんを40万人と仮定すると、その5%(2万人)の応募が集まったことになる。
当選者には母子手帳の画像をアップロードしてもらうという流れだったが、これは林氏自身が子育て中、「他社の赤ちゃん向けのキャンペーンやネットスーパーの特典でも母子手帳の提出があったという記憶から、この形にした」という。
なお、Instagramではマタニティアカウント向けのハッシュタグを入れていたほか、少額の広告配信も実施しており、新規フォロワー率が高い結果となった。
【Instagramで入れたハッシュタグ例】
#2022年5月出産予定 #2022年6月出産予定
#2022年4月出産予定 #2022年ベビー
#2022年1月出産予定 #2022年3月出産予定
#2022年2月出産予定 #2022年生まれ
赤ちゃんのいる親御さんはInstagramで情報収集されることが多いので、より親和性の高いターゲットが集まったかもしれません。限定されたターゲットだからこそ、共感していただきやすかったのかなと思います(林氏)
水筒でこまめな水分補給を「熱中症対策キャンペーン」
2つ目の事例は、2022年7月に実施した熱中症対策キャンペーンだ。熱中症対策プロジェクトと銘打ち、2つのキャンペーンを行った。
① #タイガー魔法瓶と熱中症を考えよう(クイズ形式)
まず、週次で行ったクイズ参加型のキャンペーン。引用ツイートで回答してもらい、正解者の中から抽選で、真空断熱ボトルとスポーツドリンクが当たる。クイズ形式にしたのは、熱中症対策について、より理解を深めてもらうためだという。
② #タイガーの水筒にスポドリ入れよう(警戒アラート連動)
こちらは熱中症リスクの高い日限定のキャンペーン。「熱中症警戒アラートが全国15~20以上の都道府県で発令される日」に投稿するというルールで、熱中症への注意喚起と水筒でのスポーツドリンクの携帯を呼びかけた。
一般的には、塩分や糖分がこびりついてサビやすくなるため、『ステンレスボトルにスポーツドリンクを入れてはいけない』とされています。しかし、タイガーの真空断熱ボトルは内面に特別な加工をしているので、使用後にすぐにお手入れをすればスポーツドリンクも安心して入れられる。こうした製品特性を多くの生活者に知ってもらいたいという思いで企画しました(林氏)
キャンペーン結果は上図の通り。ハッシュタグ投稿数は5万件を超え、注目を集めた。また、一連のキャンペーンを受け、製品に関心を持つユーザーが増えた結果、スポーツドリンクや水筒に関する情報が掲載されているQAページの閲覧数が昨対比約3.2倍に増加したという。
毎日日替わりで当たる「100日連続!Twitterキャンペーン」
3つ目が、2023年2月に100周年記念で実施した「100日連続!Twitterキャンペーン」だ。
これは、あらゆるタイガー商品が日替わりで登場する「お祭りのようなキャンペーン」だと林氏。毎日1名にタイガー商品が当たるという、アイテム数が多い会社ならではの施策だ。
最初はチーム内での『100周年の記念に100日連続キャンペーンをしたらおもしろいのでは?』という雑談レベルの話から始まりました。結果的に、100周年の感謝を伝えられる、インパクトのある記念企画になったと思います(林氏)
2月3日から毎日投稿を行い、5月13日に無事終了。この100日間でフォロワーは5万人増加し、タイガーのキャンペーンでは最も伸び率の高いものとなった。キャンペーン投稿に付けた「#タイガー魔法瓶100周年」というハッシュタグがトレンド入りするなど、話題性も十分だったという。
当初フォロワー数は緩やかに停滞するかと予想していましたが、3か月通して伸びが見られたのが意外でした。また、あるアイドルグループのファンの中で、ステンレスボトルのカラーバリエーションがメンバーカラーと同じだと話題になったことも、キャンペーンならではの広がりでした(林氏)
各キャンペーンの特徴をまとめたのが、以下の図だ。限られた予算内で効果を出すためのポイントとして、ぜひ参考にしてほしい。
「売りにつながるサイクル」を生み出す方法とは?
とはいえ、「いくらフォロワーを増やしたところで、会社にどんな利益があるの?」と聞かれることもあるかもしれない。林氏は、「SNS、メディア露出、そしてEC売上アップの好循環をつくることが可能だ」と語る。
SNS上でバズる
↓
SNSのトレンドをネタにするTVなどのメディア露出が増加
↓
ワイドショーで取り上げられると、EC売上(特にオンライン限定商品)が急増
↓
売上が上がるとさらに露出が増え、購入者のSNS投稿につながる
この「売りにつながるサイクル」を生み出すためにタイガーが実施したのが、以下の3つだ。
① モーメント/トレンドを捉える
まず、モーメント/トレンドを捉えること。「魔法のかまどごはん」は、電気を使わず直火で炊き上げる炊飯器で、アウトドアや災害時にも使える優れものだが、タイガーではこれを関東大震災から100年目の「防災の日」に合わせて発表した。
発表の様子は3つのテレビ番組やWebメディアに取り上げられ、Xでも話題が拡散。予約数も伸び、EC売上も順調に推移している。
② すでにある資産を活用する
次に、すでにある資産を活用すること。タイガーが目をつけたのは今流行りの「レトロ柄」だ。過去商品のデザインや図柄を活用して、カプセルトイやブランドムックの付録などの商品化を実現。メーカーや出版社とのコラボとなるが、広告企画ではなく監修という立場になるので、広告費はかかっていないという。
さらに、100周年記念モデルとして、過去の花柄・ストライプ柄を復刻した魔法瓶・調理家電シリーズをオンラインストア限定で販売。2カ月で3,000件を超える予約を獲得した。
③ お客さまの声を反映する
最後に、お客さまの声を反映すること。今年の「父の日母の日キャンペーン」では、トラ柄のオリジナルBOXで注文商品を郵送したところ、ユーザーがその写真をSNSに投稿し、「かわいい」と大きく拡散。広報宣伝チームとしては想定外の反響だったという。
このことは即座にオンラインストアチームにも共有され、7月にはボトル購入者先着500名にこのボックスで商品を届けるというキャンペーンを実施。SNSでは「箱が欲しいから注文しました!」という声も見られたという。
今日から使える! SNS強化のTIPS
最後に、今すぐ使えるSNS強化のTIPSを紹介する。「フォロワーが増えない」「投稿するネタがない」など、SNS運用の悩みは尽きないだろうが、ぜひ参考にしてほしい。
ネタが思いつかない時は社内SNSでネタを募集する
ネタを思いつかないときは、「何でもいいので、SNSに投稿できそうな、お役立ち情報や開発秘話を」と社内掲示板で依頼。社内で当たり前のことでも、世間では知られていないことが多いので、投稿すると意外と反響があるかも。
写真はiPhone写真で大丈夫
きれいな画像素材がないと悩むこともあるが、Xに関しては、むしろスマホで撮った写真の方が反応がいいことが多い。
4枚並びのインパクトは健在
プロに撮影してもらったきれいな写真がある時は、4枚並びで見せた方が反応が得られやすい。左図はグリーンデーなのでグリーンのボトルでまとめ、右図はサマークリスマスにちなんでカラフルに。
告知活動は社内の力を借りる
社内のメンバーに協力してもらうのもいい方法だ。上図は電気ポット/ケトルを購入すると日清のカップ麺が100個届くというキャンペーン。告知にあたり、社員に毎日カップ麺を食べてもらって、その様子を撮影した。
林氏は、セッションのポイントを以下のようにまとめ、講演を締めくくった。
- お客様目線でのキャンペーン設計で、フォロワー数/関心度UPの両立は可能
- SNSは売りへの好循環の起点となる
- 限られた予算でも知恵でカバーできる部分も大きい
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