なるほど!アクセス解析ケーススタディ

巨大ショッピングサイトを支えるアクセス解析/ケンコーコム+WebTrends+Urchin

ケンコーコム(ケンコーコム株式会社)
Powered by WebTrends(株式会社アイ・ティ・フロンティア)&Urchin(株式会社プロトン)

ケンコーコムは、健康食品や化粧品、医薬品など、健康関連商品を取り扱うオンラインショップとしては最大規模を誇るサイトだ。 2000年に開設したときには50点ほどの品揃えであったのが、扱う商品は7年間で7万点を超え、1日平均17万以上のPVがあるという(取材時点)。「ケンコーコムに来ていただければ、“健康”に関わる情報や商品のほとんどを手に入れられることを目指しています」と言う執行役員 経営企画室の丸敬弘氏に同社のアクセス解析ツールの活用方法を聞いた。

ケンコーコムのサイト概要や今回導入したアクセス解析ツールの概要はページの末尾に記載

野本 幹彦(フリーライター)

巨大ショッピングサイトを支えるアクセス解析
2つのツールを併用してユーザーのニーズを把握

ユーザーの姿を確認するためサイト開設当初からツールを導入

ケンコーコム株式会社は、従来から行ってきた健康食品の通信販売をウェブで展開することによって、大幅に売上げを伸ばしてきた会社だ。特にこの数年間での成長は著しく、2005年3月期の売上高が約33億7,000万円だったのが、2007年3月期には65億6,000万円となっている。

同社は、2000年にサイトを開設して以来、オンラインでの通信販売を始めているが、アクセス解析ツールはウェブサイト開設当初から導入しているという。

ケンコーコム株式会社 執行役員
経営企画室 Web系担当 丸 敬弘氏

「サイトを開設したときからアクセス解析の重要性は認識していました。アクセスを解析していかないと、お客様の姿も見えず、どれくらいの集客があるかがわかりません。もちろん、サイトを開設したらすぐに売上げが上がるわけではありませんが、どの程度の見込み客が来てくれているのかを把握したいと考えていました」

同社では開設時から継続してWebTrends(ウェブトレンズ)を使い続けているというが、導入時の選択に何か理由はあったのかを尋ねると、「当初はアクセス解析ツールの数も少なく、グラフィカルなレポート表示が行えて機能も豊富なWebTrends以外の選択肢があまりなかった」という答えが返ってきた。しかし、その後も乗り換えず、7年間WebTrendsを使い続けているのには何か理由があるのだろうか。

「理由の1つは、指標として利用するための、集計方法の継続性を重視しているためです。他のツールを使った場合、同じログファイルを対象にしても、集計方法の違いにより、Webtrendsとは違う数値が出ることがあります。もう1つの理由は、集計ツールの移行コストには大変な手間がかかからです。フィルタやパラメータなど細かい設定まですべて移すのは大変です。もちろん、WebTrendsで“できること”と“できないこと”はありますが、そこは他のツール、現在はUrchin(アーチン)を併用しています」

同社では、WebTrendsはログ型のバージョンを利用している。Urchinもログ型のツールだが、ログ型の製品を2種類使っている理由は、ASP型は使いづらいからだと丸氏は言う。

「ASP型だと解析したいページにタグを貼る必要があるなど、サイト作りに何らかの制約が出てきますし、ホスト名をまたいで集計ができるかなど、細かい点を気にしだすと、手元にあるログにある情報であれば確実に集計できるログ式の方が安心感があります」

複数台のログをまとめる苦労とリアルタイム性の考え方

しかし、ログ型であるがゆえの苦労も導入当初は体験してきたようだ。

「最初の頃は、試行錯誤しながら複数台あるサーバーのログをマージ(1つのファイルにまとめること)する方法を模索していました。結局はマージするツールを自分たちで作って解決していきました。コンテンツ配信システムのアカマイを導入したときに、ログファイルの配信タイミングが変わってしまったり、HTTPとHTTPS分のログが別ファイルになってしまったりしたので、そこでもまた苦労しました」

オンラインショップの中には、アクセス解析のリアルタイム性を重要視する企業も多い。テレビや雑誌で取り上げられるなどして、瞬間的にアクセスが伸びる可能性があるからだ。

「ケンコーコムのお客様は、サイトで取り扱っている、膨大な商品(ロングテール商品)から、自分の調べたいものを、調べたいときに自由に検索してお買い物をするケースがほとんどです。そういった細分化されたニーズに対応する際には、ある程度の期間集計をしてトレンドを見つけ出す方が効率的なため、リアルタイムでの詳細な分析を行う機会はあまりありません。

一方で、テレビや新聞などで健康に関する特集が組まれて、数千個単位で一時的に商品が売れるようなケースにはリアルタイムに対応したい、ということがあります。ただ、この場合はアクセスが1点に集中しますし、状況の把握はアクセス解析の集計よりも受注システムの状況で見ることでが多いので、そういった意味でアクセス解析にリアルタイム性を期待せずに済んでいます。

2つのツールの特性を考え使い分けて利用する

WebTrendsとUrchinの2つのツールを使っているケンコーコムでは、機能によってうまく使い分けているようだ。

「WebTrendsは、パラメータの分析が優れているツールだと思います。メルマガのレスポンス測定や、アフィリエイトのトラッキングなどURLにパラメータを付けたときのグループ集計機能は特に重宝しています。Urchinには、特定ページのPVの推移を見るような定点観測で見た推移を時系列で示す機能があります。これはWebTrendsにはない機能で便利です」

また、長年WebTrendsを使い続けている丸氏は、このツールを使いこなせている人は少ないのではないかと考えているという。

「WebTrendsは、設定が難しいという評判をよく聞きますし、“専門家に任せないと”という声もよく耳にします。確かにWebTrends を使いこなすのは、かなりの経験や知識が必要だと思います。

我々の場合も、自分たちで試行錯誤をして、欲しいデータを取得できるようになるまでに、かなりの苦労を重ねました。けれどそのおかげで、今では必要な情報を入手して、その結果をサイトやサービスの内容に反映させられるまでになっています。まずはとにかく、自分の手を動かして、使ってみることだと思います。また我々の場合、サイト開設当初は、内部向けのデータだけを作ればよかったというのも大きなポイントでした。その間にWebTrendsで、実験的なことも、色々と試みることができましたから。

アクセス解析から自分たちがどんな情報や傾向を必要とし、それをどのように活用していくべきかということは、当然自分たちが一番よく知っています。その点、過去の様々な経験を経て、現在社内でWebTrendsを駆使したアクセス解析を随時できているということは、ケンコーコムにとって1つの強みだと思います」

指標が何を示しているかを見極めることが重要

ケンコーコムのWebサイト企画、施策実行、アクセス解析を行う役目にある丸氏は、ケンコーコムがウェブサイトを立ち上げる直前に入社している。しかし、前職ではマーケティングが専門で、ウェブ関連の業務はケンコーコムが初めてだと言う。

「ウェブのみならずシステムマネージャとして社内のシステム全般を見てはいましたので、システム系の知識はありましたが、ウェブサイトの運営自体は初めてでした。ただ、以前マーケティングに携わっていた経験があるため、Web担当者としてただやみくもにアクセス解析データをレポートして終わりというのではなく、マーケティングの視点から、その都度、今のケンコーコムというサイトに必要と思われるデータというものを解析して、社内で共有できるようにしています」

健康メガショップとして、膨大な商品数とアクセスを抱えるケンコーコムの分析を日々行う丸氏に、これからWeb担当者となる人たちにメッセージをお願いすると、「“アクセス解析ではこれをやらないといけない”ということを鵜呑みにしてはいけない」という答えが返ってきた。

「たとえば2000年当初は、“サイトの滞在時間に注目してサイト作りを行う”といったことがよく言われていました。時間が長ければ長いほど、商品を購入する確率が高くなるということですが、ケンコーコムの場合で言えば、訪問者の滞在時間が長くなれば売上が上がるという実感はありません。ユーザビリティの高いECサイトというのは、非常に短時間で目的の買い物を終えることができ、その利便性がリピーターを生むという側面もあります。なのに、滞留時間を延ばすことだけを目的としてしまうと、サイトにまったく関係のないミニゲームを置いてみたり、ということになったりしかねません。確かにこれによって滞在時間が増えるかもしれませんが、本質的なサービスの向上にはなっていません。

アクセス解析をする際には、自社のサイトにとって、本当に必要なサービスは何か、ということを、まずはしっかりとを見極めることが大切だと思います。あくまでもアクセス解析ツールはそれらの指標を出すための道具に過ぎないので、その結果としてサイトを利用するお客様の利便性が高まらないのでは行う意味がありません」

図1 ケンコーコムが運営する「ケンブロ」は、トラックバックを活用した健康情報ポータルサイト。商品カテゴリやテーマ別に分類されたページに関連するさまざまな情報がトラックバックにより投稿されている。
http://www.kenkoblog.com/

では、ケンコーコムにとって重要な指標となるのは、何なのだろうか。

「検索キーワードは、人が実際に打ち込んで訪問してくる能動的なデータです。リンク元からやってきた人が、そのリンクから興味を持ってやってきたのか、間違って押してきたのかを明確にする手段はありませんが、検索キーワードは訪問者が知りたいことを明確に表しています。ですから、その訪問者がどこに向かってどのような行動をしているのかを見ることが一番ですね。我々の場合は、7万点も商品があり、キーワードなどで探さないと目に見える場所には見つからないものもあるため、この傾向が大きいとは思います。ケンコーコムで扱っている商品のほとんどは、トップページには露出されていません。ケンコーコムでは、検索エンジンから直接目的の商品ページに辿り着くタイプのお客様が最も多いですから」

最後に、今後のサイトの展開について伺った。

「これからも、健康に関する商品や情報を仕入れてお客様に届けるまでのプラットフォームを拡充していこうと考えています。ケンコーコムのサイトには1日平均17万人の来訪者がいて、そのほとんどが健康に興味を持っていらっしゃいます。ケンコーコムではそれを踏まえ、『商品PRページ』というメディア事業もすでに展開しています。これはメーカーサイドにとっては、健康に関心を持っているコアなターゲットに効率よく販促支援が行えるというメリットがあり、同時にお客様にとっては、それがより詳しい商品情報として、購入検討時の判断材料が増える結果となっていて、お客様はもちろん、効果的な販促ツールとしてクライアントとなるメーカーサイドからも評価をいただいています。

ただし、よりメディアとしての価値を高めるためには、これまで自社用途でしか使っていなかったアクセス解析のデータをクライアントに対する結果説明に使う必要も出てくるので、これまでとは違った切り口での解析も考えていかなければなりません。クライアントも自社製品の購買者の閲覧行動から何がわかるかを知りたいと思っているはずです。プロモーションやキャンペーンをただ単に載せるだけでなく、マーケティングに役立つデータを分析できるようなプラットフォームを将来的に作っていけるのではないかと考えています」

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ケンコーコム サイト概要

7万点以上の商品を扱う「健康メガショップ」で、その商品数は毎日増えている。トップページには、今週の注目商品やイチオシ商品などが提示され、商品検索もできるので、何かを買う目的がなくても自分の欲しい健康グッズを探していけるだろう。トラックバック式健康情報ポータル「ケンブロ」も運営しており、健康に関するさまざまな情報を入手できる。


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ケンコーコム株式会社の選んだアクセス解析

多彩なダッシュボードでデータをビジュアル表示

WebTrends(株式会社アイ・ティ・フロンティア)
http://sirius.itfrontier.co.jp/webtrends/

WebTrendsは、ログ型とビーコン型の両方に対応し、小規模サイトから年間数億ページビューを誇る大規模サイトの解析にまで対応する製品だ。全世界で6万社以上の導入実績があり、現在、最新バージョンのWebTrends Analytics 8がリリースされている。

WebTrends Analytics 8では、ローコストな「Standard」パッケージをはじめ、マーケティングキャンペーンの計測が可能な「Marketing」、マーケティングレポートをカスタマイズしてデザインできる「Advanced Marketing」、eコマースを最適化する「Commerce」の4つのパッケージが用意されており、目的やコストで選択することが可能だ。

解析結果の可視化に優れており、多彩なWebマーケティングKPIを使ってROI/目標管理を実現する3種類のパフォーマンスダッシュボードを用意。WebマーケティングKPIを使ったカスタムスコアカードの作成や、KPIダッシュボードの企業内ポータルへの埋め込みを提供することによって、Webマーケティング活動の成果をすばやく知ることができ、変化に対する迅速なフィードバックやアクションを行える。また、多彩なカスタムレポーティング機能も備えている。

◇◇◇

独自技術により正確なユーザー数を計測

Urchin(株式会社プロトン)
http://www.proton.co.jp/products/urchin/

Urchinは、ログ型のアクセス解析ツールでありながら高速な解析が可能であることが大きな特徴だ。従来の製品と比較して、約8倍の処理スピードを誇るという結果が製品サイトで公開されている。また、複数台に負荷分散されているような場合でも、ログをまとめて取得して高速にレポートを作成できる。

Urchinには、独自技術であるUTM(Urchin Tracking Module)機能があり、正確なユニークユーザー数を計測することが可能だ。UTMは、排他的なファーストパーティCookieを使用しているため、ウェブブラウザのキャッシュを参照した場合もPVカウントに含めることができるのが大きな特徴である。また、ユニークユーザーの追跡はIPアドレスやCookieだけでなく、User AgentやURI(Uniform Resource Identifier)を使った複合的な分析も可能であるため、同一ドメイン内から複数のユーザーのアクセスがあった場合も正確なユニークユーザーとして計測できる。導入価格は基本パッケージが26万400円と安価で、1台のPCにインストールでき、100プロファイルまで作成可能だ。ECサイトでの売上金額と検索キーワードの傾向を解析する「Eコマース・モジュール」や、ウェブ広告の費用対効果を測定する「キャンペーン・トラッキング・モジュール」などもオプションで用意されている。

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※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材時点または記事初出時点のものです。

用語集
ASP / KPI / アクセスログ型 / アクセス解析 / アフィリエイト / キャッシュ / キャンペーン / ダッシュボード / ネットショップ / フィード / ページビュー / ユニークユーザー / ユーザビリティ / リンク / 事例 / 健康 / 検索エンジン / 訪問 / 訪問者
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