“ココがすごいよ! GA4 ” 解析プロ4人が語る「Googleアナリティクス4」の便利・不便なポイント
Googleアナリティクス(ユニバーサル アナリティクス|UA)の計測終了が2023年7月1日とGoogleから正式にアナウンスされ、Google アナリティクス 4(GA4)を本格的に導入しなければならない状況になった。今回は、『1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本』著者31人の中から、次の4人にGA4へのアップデートの背景にあるもの、GA4の優れた点などについて聞いてみた。
2020年10月にアップデートされたGA4。新しいツールが誕生した背景は?
大きく変わったGA4。なぜここまでの変化が必要だったのだろうか。背景を皆さんに考察してもらった。
広告の進化に合わせてアップデートされた?! GA4
背景を読み解くヒントの一つがGoogleの検索連動型広告にある。検索連動型広告は、購入意欲の高い人への最後の案内として活用している人も多いだろう。たとえば「ワンピース セール」で検索した人に広告を表示するといった活用方法だ。
しかし、検索連動型広告は飽和状態で、人気のあるキーワードには広告出稿が集中して、CPC(クリック単価)が高騰している。結果CPA(獲得単価)は上がり、広告獲得効率は下がってしまう。こうした事態に対応するのが、今回のGA4だと木田氏は話す。
検索連動型広告の目的は、最終アクションを促すこと。だからこそセッション軸の分析で十分であり、従来のGoogleアナリティクス(以下、UA)は、まさにセッション軸で分析を行い、マーケティングファネルの一番下の購入意欲が最も高いユーザーに来訪してもらい、分析するのに向いているツールでした。
一方GA4では、ファネルの上部にいる認知段階で、将来的にコンバージョンしそうなユーザーを計測・分析できるツールになっています。GA4では、ユーザー軸で分析をするため、どこで認知したユーザーがコンバージョンしやすいかが計測可能です。そのメディアに広告出稿すれば今までよりも、効率よくユーザーにアプローチできるわけです。
今すぐ購入しないけれど、ブランドやサービスを好きになってくれる確率の高い人に広告でアプローチする、反対にコンバージョンしない人にはアプローチしないという思想でGA4は設計されているという。
ユーザーが隙間時間にスマホでアクセスして、すぐに閉じてしまったとしても、その後戻ってきてくれればいいんです。そのため直帰率は無意味な指標になり、GA4では計測できなくなりました。コンバージョンするユーザーのなかで“LTV”が高いユーザーを分析しやすいツールに生まれ変わったとも言えます。
プライバシーへの対応とエンジニアの期待への対応
GA4誕生の背景には、GDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)に対応するためだったのではないかと窪田氏は指摘する。GDPRでは、ユーザーが自分のデータ削除を企業に求めたら、企業はすべて削除しなければならない。複数デバイス、アプリなどアクセス手段が多様化している現在、UAの仕様では対応が難しいが、ユーザー軸で分析するGA4なら一括削除が可能だ。
それに加えて、「機械学習エンジニアからの要請に対応したのではないか」とも窪田氏は言う。UAではローデータを取得ができなかったが、GA4はローデータを取得して自分たちの環境でAI開発を行えるうえに、BigQueryなどGoogleの他のサービスとの連動もしやすくなっている。
AIの学習はセッションよりもユーザー単位でのデータのほうが扱いやすいので、解析の高度化が期待できます。
また小川氏は、GA4という名称ながら、以前のUAとは全く異なるツールである理由として、「拡張に次ぐ拡張で、複雑化していたUAを引き継ぐよりも、新しい思想で作り直すほうがGoogleにとってシンプルだったのでは」と指摘する。目まぐるしく変わるインターネットの環境に合わせて拡張し肥大化したUAを捨て、次世代の解析ツールとしてGA4をリリースした。ただし、多くの人に馴染んでいる“Googleアナリティクス”という名称は活かすことにしたのではないかと推察した。
UAとGA4で大きく変わった3点は?
ここからは、UAとGA4の違いにフォーカスして紹介していく。
1. 画面からわかる変化
UAとGA4は画面を比較しても大きく異なる。佐々木氏は、レポートのメニュータイトルを見ると、Googleが目指していることが見えると話す。
UAのメニューは、[ユーザー][集客][行動][コンバージョン]と並んでおり、ユーザーを集めて行動させてコンバージョンさせることに主眼をおいている。「セッション×CVR(コンバージョン率)=コンバージョン数」となるので、セッションとCVRを向上させることがコンバージョン最大化のカギになる。
一方でGA4のメニューは[ライフサイクル]の項目に、[集客][エンゲージメント][収益化][維持率]が並び、LTVを意識した長い目線で分析できるようになっていて、思想の違いがうかがえる。
もう一つの変化は、ユーザー獲得についてです。UAは、集客で今回のセッションはどこから来たのかを確認できますが、GA4のユーザー獲得では最初にどこから来たのか、チャネル、参照元、広告キャンペーンなどを確認できます。LTVが高いユーザーやエンゲージメントが高いユーザーの最初の来訪きっかけを知ることができるようになっています。
2. UAのカスタムレポートが進化。「探索機能」に
UAは、集客、行動、コンバージョンのレポートが充実しており、そこを見ておけばおおよそサイトの状態を把握でき、さらに調べたい場合は「カスタムレポート」で独自のレポートを生成できた。UAのカスタムレポートの延長にあるのがGA4の「探索」だ。探索には、「目標到達プロセスデータ探索」や「経路データ探索」などテンプレートは用意されているが、項目は自ら設定しないと何も表示されない。小川氏は、データ探索こそGA4の特徴だという。
分析する側が何を分析したいのかを決めて、それにあった項目を設定する必要があります。集計だけでなく、分析・改善に使ってほしいというGoogleの意図がうかがえます。
集計されたデータを見る場合は「レポート」、データから自分が必要な情報を可視化するなら「探索」、ローデータを使ってもっと詳細な情報を見るなら「BigQuery」といった具合に、使う側の意図に応じて3段階のデータをGoogleは提供してくれるようになりました。これは大きな変化ですし、使う側が試されていると感じます。
3. ローデータの取得が可能に
UAはコンバージョンが大きなゴールになるが、GA4ではデータをエクスポートすることにより、より自由度の高い解析が可能だ。これは機械学習の進化とも合致していると窪田氏は指摘する。
GA4以降はそもそも何を解析したいのか、「問を定める」時代になった。たとえば解約率を予測したい、解約しそうな人を探したい、売上のポテンシャルが高い人を探したい、などマーケター自身が問を定めることができます。マーケターの可能性が拡張しているとも言えますね。
UAでロイヤルカスタマーの行動を把握して「さらに売り上げを伸ばそう」とした場合、「『広告→LP→商品詳細ページ』の経路でコンバージョンする割合が多いので、LPへの流入を増やす」というような仮説で施策を実施していた。本来、人間が行う行動はもっと複雑で、その行動はGA以外の基幹システムの中にも記録されていた。しかし、その別々の場所に存在するデータを複合的に扱おうとすると、扱いづらかった。
一方GA4では、無料版でもローデータをBigQueryにエクスポートできるようになり、今までわからなかったロイヤルカスタマーの特徴をかなり詳細に分析できるようになった。たとえば、BigQueryで日時データを見ると、そのユーザーの初回参照メディア、初回訪問日時、LTV、ページのスクロール完了有無、デバイス情報などユーザー一人ひとりの詳細行動が記録されている。これらのデータを基にCVしたユーザーの特徴を分析し、教師データとしてAIに活用すれば、さまざまな予測が可能になる。
UAとGAの差異と注意点
UAからGA4に移行するにあたっては、次のような点に注意してほしい。
項目 | UA | GA4 |
---|---|---|
初期設定のデータ保持期間 | 14か月 | 2か月 |
最大データ保持期間 | 50か月 | 14か月 |
データ保持期間の変更反映 | 最大24時間 | 最大24時間 |
カスタムレポートの作成 | ○ | △ |
ビュー単位の計測 | ○ | × |
Google Search Consoleとの連携 | ○ | ○ |
AMPページの計測 | ○ | × |
GA4に移行するとUAのデータは引き継ぎができない。よってすぐに完全移行するのではなく、まずはそれぞれのタグを追加して、UAとGA4の併用を考えてほしいと小川氏は助言する。その上で、GA4で何を取得するのか/しないのか、どの数値をKPIにするのか、GA4を使う目的を整理してほしい。
佐々木氏は、GA4の導入時に忘れずにやっておきたい初期設定として、「データストリーム」の「拡張計測機能」で、スクロール数、動画再生、ファイルダウンロードなどをイベントとして計測できるようにしておくことをあげている。設定は簡単で、『1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本』の書籍でもやり方を解説しているのですぐにやっておこう。
総勢31名の専門家が解説!
『1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本』
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プロによる率直なレビュー。GA4のここが便利! でもここは不便...
次に、GA4の良いところ、不便なところについて挙げてもらった。
窪田氏【便利】ローデータ取得 【不便】GA4の正しい理解が必須
便利:ローデータ取得
不便:GA4の正しい理解が必須
窪田氏は、ローデータを取得できるようになったことで、マーケティングの仮説検証が詳細にできるようになったことを利点として挙げる。従来から1to1マーケティングの重要性が叫ばれており、MAツールやWeb接客を使って施策が行われていたが、その仮説が正しいのか、なかなか検証できなかったということは否めない。
たとえば、MAツールのスコアリングで、特定のページ閲覧を「1」、資料ダウンロードを「5」としてスコアリングしていたとして、その値が正しいのかどうかは検証しにくかった。GA4のローデータを使えば、ありとあらゆるデータを逆算することができるようになり、スコアリングの精度を向上できる。これはAIが重みやバイアスを計算する際の「バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)」に近い発想です。つまり1to1の施策と解析がこれまでよりも豊かに連動して最適化できるということだ。
一方、不便な点は実現するには、GA4の機能を正しく理解しないと使いこなせないことだ。まずは書籍で学ぶところから始めてほしいと話した。
小川氏【便利】経路データ探索 【不便】仕様変更の多さ
便利:経路データ探索
不便:仕様変更の多さ
小川氏は「経路データ探索」を使って、コンバージョンまでの経路をさかのぼって調べると、コンバージョンに貢献するページを発見できることを利点として挙げた。
たとえば、ウェブ解析士の試験の申込みの例でいうと、試験申し込みをしたユーザーは、申し込みページ直前に「資格取得の流れ」を閲覧し、その前に「認定試験とは」を閲覧、さらにその前に「ウェブ解析士とは」を閲覧していることがたどれる。これにより、ゴールへのパスをするページが何か、ユーザーがどう動くと申し込みにつながるのかがわかる。実際に自分でその経路をたどってみると、このタイミングでこの情報を追加しよう、こういう文章に変えようというように、改善のポイントも見えてくる。
不便な点は、仕様が変わり続けていることを挙げた。新たな項目が加わる、名称が変更になるといったことが日常的にあるので、仕様を理解しにくい。UAで表示できた指標をGA4でどうやって出すのかという質問もよくあるそうだが、仕様が違うので数字がずれてしまう。まずは別のツールだと受け止めて慣れていくしかないという。
木田氏【便利】目標到達プロセスデータ探索 【不便】レポート画面上でCVRがない
便利:目標到達プロセスデータ探索
不便:レポート画面上でCVRがない
木田氏は、UAがコンバージョンまでのページの導線しか分析できなかったのに対し、GA4の「目標到達プロセスデータ探索」を設定すると、任意のイベントでプロセスを分析できることを利点として挙げる。
たとえば、トップページにランディングした後、トップページをスクロールして、サイト内検索するという流れを設定して、その行動をとった人をファネルで表示できる。ページ制作時に導線設計をしている人にとっては、その設計どおりにユーザーが動いているかどうか細かく検証できる。この機能はUAの有料版では設定できたが、GA4なら誰でも使えるようになっていることがすばらしいと絶賛する。
仮説がある人は「目標到達プロセスデータ探索」で設計がうまく機能しているかを確認し、仮説がない人は「経路データ探索」からプロセスを探っていくという活用がおすすめだ。
不便なところは、コンバージョンレート(CVR)がないことを挙げた。特に、GA4ではユーザー単位のCVRが必要だと言う。たとえば、オーガニック検索で100人が初回訪問したとして、そのうち何人がコンバージョンしたのかがレポートには出てこない。自社にフィットしたユーザーが「濃度」高く含まれているセグメントを特定するのに、ユーザー単位のCVRが表示されないのは不便だと指摘した。
佐々木氏【便利】探索機能/BigQueryへのエクスポート 【不便】直帰率他のUA指標が使えない
便利:探索機能/BigQueryへのエクスポート
不便:直帰率他のUA指標が使えない
佐々木氏は、探索データの使い勝手を利点としてあげる。たとえば、「セグメントの重複」では、いろいろなセグメントの重なり具合を表示できる。UAでもクロスデバイスの重なりを見ることができたが、自分の好きなセグメントで重なりや分布を見られることをメリットに挙げた。
もう一つの利点はBigQueryへのエクスポートができる点だ。UAを使ったウェブ解析では、仮説を立ててサイト改善をするところまでしかできなかったが、GA4はウェブ解析からさらに、AIを活用した予測まで可能だ。佐々木氏本人もGA4がBigQueryと連携できるようになったことがきっかけで、SQLを学び世界が広がって楽しんでいるという。
不便なところは、直帰率などいままで指標にしていた値がなくなることだ。BigQueryを使えば算出できなくもないが、直帰率にこだわるよりも今の時代にあったGA4の思想に合わせて、他のエンゲージメント系指標を計測していくほうがよいだろう。もう一点は、ヘルプが充実していないため、プロフェッショナル4名をもってしてもわからないことがあるということだ。日々アップデート中のツールのため追いついていないことも理解できるものの、早く充実して欲しいと願っているという。
アップデート情報(2022.3月現在)
日々進化するGA4であるため、書籍出版後にもアップデートがある。小川氏は覚えておいてほしい点としてレポート用のアトリビューションモデルを挙げる。コンバージョンした時に、UAでは貢献したページを「ラストクリック」としていたが、現在GA4に登録するとデフォルトで「データドリブン」が選択されている。
たとえば、あるユーザーがサイトに4回アクセスしていて、複数のページを見て、最後の訪問でコンバージョンしたときに、各ページへの貢献の度合いをGoogleが評価して算出する。
集客のレポートを見ると、オーガニック検索で5万人来て、コンバージョンが200となっていた場合、オーガニック検索で来た人のコンバージョンが200というわけではなく、貢献度合いを算出した結果の200であるということだ。
どちらの指標がよいのかは、評価方法によって異なるため、どちらで計測するか考えて設定をしてほしいと小川氏は話す。
窪田氏は、このような重み付けは機械学習でよく使われるが、AIの世界でも重みやバイアスは入力データを増やせば、毎回自動調整されていくのは通例である。自分で作るAIとは違い、GA4の中で使われるAIのロジックはブラックボックスであるため、解析者にも「なぜその数値になるのか、わからないことがある」。もし、厳密に何が起きているか、知りたければ、自分でAIを作る選択肢もある。そういったことを踏まえて使ってもらいたいと助言した。
まずはタグを入れることから始めよう
最後に、これからGA4の活用を推進していきたい皆さんに向けてメッセージをもらった。
タグマネージャーを使えば、GA4とUAを併用できるので、まずはタグを入れるところから始めてほしいです。好奇心のある人は、UAと比較しながら使ったり、新しい機能を試したりしながら慣れていってほしいです。誰でも無料で使えるので、ぜひ試してほしいです。
自分が使えないのはダメなツール! と切り捨ててしまう、イソップ寓話の『酸っぱい葡萄』のような心理になる方がたくさんいますが、とりあえずタグを入れてみると新しい世界の入り口が見えると思います。また、GA4でデータを蓄積していくことは、将来的にコンバージョンするユーザー、しないユーザーを精度高く予測して、広告の配信を効率化することにもつながります。広告配信のためにもデータ蓄積だけでもやってほしいですね!
GA4は、Web担当者の価値を高めるエポックメイキングなツールです。今は、CMSを使ってHTMLを自分で書いて公開するという作業を多くのWeb担当者ができると思いますが、同じようにGA4の登場によって、将来的にWeb担当者がBigQueryを使って機械学習で未来を予測できるようになると思います。最初は不安があると思いますが、学びの機会として力を高めてほしいです。書籍は31人の監修者・著者で使い方を分析し、ポイントを整理してまとめているので、GA4のコンパスとして活用してください。
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