新型コロナウイルスへの財務上の対応策、日本は「コスト抑制」以外も多面展開【PwC調べ】

一方で「サプライチェーンの変更」などは未検討が多数派で、慎重姿勢が目立つ。

PwCグローバルネットワークは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がビジネス・経済に与える影響を計るため、世界21か国のCFO(最高財務責任者)を対象に調査を実施した。事業活動への影響、今年の収益予想、財務上の対応策、投資やM&Aの戦略変更、最大の懸念などを聞いている。さらにPwC Japanが、日本とグローバルの比較を行っている。調査時期は2020年4月6日~11日で、日本を含む各国のCFO824名から回答を得た。

新型コロナウイルスに対する財務上の対応策、日本は「コスト抑制」以外も多面展開

まず「新型コロナウイルス(COVID-19)に関する貴社の懸念」を聞くと、日本で71%、グローバルで73%のCFOが「自社の事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があり、重大な懸念材料になっている」と回答。「現時点で影響はない」という回答は、グローバルでは1%まで低下している。

また「今年の収益および/または利益にどのような影響があるか」では、日本で81%、グローバルで80%が「収益・利益の減少」を予想していた。「現時点では評価が難しい」は、日本で19%、グローバルで13%とやや差がある。

「検討している財務上の対応策」においても、グローバルは「コスト抑制」77%が圧倒的で、「予定していた投資の延期・中止」65%、「資金計画の変更」48%の順だが、日本は「コスト抑制」62%が同じく1位の一方で、「予定していた投資の延期・中止」48%、「ガイダンス調整」48%、「資金計画の変更」43%がほぼ並ぶなど、対応策を多面展開している印象だ。また「財務上の対応を検討していない」との回答は、グローバル5%に対し、日本は0%だった。

判断保留が目立つ日本のCFO、グローバルに比較して慎重姿勢

「投資戦略」「M&A戦略」「サプライチェーン(ベンダー、施設、市場など)」の3点について延期・中止の可能性を聞くと、まず「投資戦略」では、グローバル全体だと「施設/一般的な設備投資」80%が最多だったが、日本は「オペレーションコスト」70%がそれを上回った。またグローバルに比べて「R&D(研究開発)」「カスタマーエクスペリエンス」に対しても消極的姿勢だ。

「M&A戦略」への影響については、グローバルだと「増加する」「減少する」「変更なし」「現時点で評価が難しい」のいずれも一定数存在し分散していたが、日本は「増加する」は0%に減り「現時点で評価が難しい」43%が多数派となった。

そして「サプライチェーンの変更」については、グローバルは「はい」43%「いいえ」40%なのに対し、日本は「はい」24%「いいえ」57%と、半分以上の企業が否定的だった。これを日本独自の状況に由来するととるか、過度な慎重姿勢・出遅れととるかは、意見が分かれるところだろう。

そして「新型コロナウイルスに関して最も懸念される点」を聞くと、グローバル・日本ともに「世界的なリセッション(景気後退)の可能性」「経営成績、将来の業績、流動性・資本力への影響を含む財務上の影響」がツートップ。数字を落とすが「消費マインドの低下による消費抑制」も3位となった。

また政府の支援プログラムもさまざまな内容が始動しているが、「政府の支援プログラムの活用を検討しているか」という質問に対し、日本は「検討していない」38%、「現時点では判断が難しい」38%がグローバル平均より多かった。

調査概要

  • 【調査対象】CFOおよび財務担当責任者
  • 【選出方法】世界21か国(アルメニア、ブラジル、コロンビア、チェコ共和国、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、日本、カザフスタン、メキシコ、中東10国・地域、オランダ、フィリピン、ポルトガル、シンガポール、スウェーデン、スイス、タイ、米国)
  • 【調査時期】2020年4月6日~11日
  • 【有効回答数】824名(日本のCFOは21名)
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