本質に迫ったPRを実施するには? 事例から何が必要かを考えてみた
こんにちは、STORESの"えんじぇる"こと、加藤です。
広報の仕事をしていると、他社が行っているPR施策を追いかけ、そこから学ぶことが多いのですが、多種多様なPR施策の中でも私がグッとくる施策には共通点があります。それはブランドが解決したい課題の本質に迫っているかどうか。具体例を3つ紹介します。
施策が法改正のきっかけに――The Tampon Book
ドイツでは、2007年から2019年まで、生理用品に19%の付加価値税(消費税)がかけられていました。19%は標準税率で、ワインやたばこなどのぜいたく品に対してかけられる税率です。一方で、食料品や書籍などの日用品には、原則として7%の軽減税率が適用されています。
生理用品はぜいたく品あつかい。この事実に抗議するために、ドイツの生理用品ブランドThe Female Companyは、本の中にタンポンを入れて、『The Tampon Book』として販売しました。本の付加価値税率が7%であることを逆手にとったのです。税制で性による平等性が保たれていないこと、生理がいまだに恥ずかしいことだと捉えられていることについて訴え、生理用品にも軽減税率を適用するよう求めたこのPRキャンペーンは、カンヌライオンズ2019のPR LIONSで、グランプリを獲得しました。
初版は1日で完売、第2版も1週間以内に完売したことで話題になり、インフルエンサーやメディアがこの問題について取り上げ、ドイツの女性政治家も取り上げられるように。最終的に政府での議論が始まり、2020年1月1日に生理用品の付加価値税が7%に改正されました(参照:タンポンを「ぜいたく品」指定から除外、消費税引き下げ 独)。
就活に革命を――#ES公開中
2019年、株式会社ワンキャリアが「#ES公開中」というキャンペーンを実施しました。人気企業20社の選考を通過したエントリーシートを、ポスター広告上のアドラックで無料配布。また約3.6万件以上のエントリーシートが閲覧できるキャンペーンページを公開しました。
内定がゴールになりがちな就活のあり方を企業にも学生にも問い直し、就活に透明性をもたらすことを目的に実施されました。日本経済新聞をはじめとした各種メディアで取り上げられ、学生はもちろん、企業人事の方たちの間でも話題にもなったようです。
私自身の(十数年前の)就活を振り返ってみると、先輩にお願いしてエントリーシートを見せてもらっていました。たまたま周りにやさしい先輩がいたから享受できた恩恵ですが、コネがないとその恩恵を受けられない、それはおかしいということに、この施策を見たときに気づかされました。
SDGsを身近に――クリエイティブ・クッキング・バトル
SDGs(持続可能な開発目標)のひとつに「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人あたりの食料の廃棄を半減させること」があります。日本では年間約612万トンの食品ロス(まだ食べられるのに廃棄される食品。農林水産省および環境省「平成29年度推計」より)があり、その約半分は一般家庭で賞味期限が切れたり、可食部分を調理の際に捨てたり、食べ残して捨てていることで排出されているそうです。
そういった現状を知り、家庭での食品ロスを意識するきっかけとして2018年から実施されているのが、クックパッド株式会社が運営する「クリエイティブ・クッキング・バトル」というイベントです。その名前のとおり、お料理バトルのイベントなのですが、チーム戦で時間内に食材をすべて使い切れるよう調理をし、プレゼンをします。審査員によって味や見た目、アイデアや工夫、そして調理時に出た生ゴミの量が審査されます。
「家庭での食品ロスをなくしましょう」というメッセージをそのまま伝えるだけだと、押しつけられている感じがしませんか。それを、「お料理バトル」というイベントを通すことで、家庭内での調理時の工夫もクリエイティブなことなんだと気づき、料理をするのが楽しく感じられるなと思いました。
課題の本質に迫った施策を実行するためには?
これらの事例から課題の本質に迫っているとはどういうことなのか、またこういった施策を自身が実行するためには何が必要なのかを考えたところ、3つのポイントがありました。
1.当たり前が崩され、発見があること
どの施策も知った直後の感想は「たしかに、言われてみればそうだ!」でした。無意識的に当たり前や常識と思っていることがいい意味で崩されて、ハッとする感覚がありました。企画している企業側が日頃から向き合っている課題やあるべき姿をPRメッセージとして、わかりやすく表現できた結果、受け取る側がハッとするのだと思います。
2.思わず◯◯したくなる仕掛けがあること
「これは大きな問題です! みんなの意識を変えましょう!」のようなメッセージとは違い、思わず欲しくなる、参加したくなる、人に言いたくなるように仕掛けられています。『The Tampon Book』だとその本を買うことで税率19%に抗議する賛同になりますし、「#ES公開中」だと就活生にとって他の人のエントリーシートは就活をする上での武器になります。「クリエイティブ・クッキング・バトル」はイベントとして楽しそうなので、つい参加したくなりますよね。
3.行動を起こすきっかけになること
上記の2つのポイントだけでもPR施策としては成功なのではないかと思うのですが、発信したメッセージが受け取った人の行動を変えるきっかけになる、または受け取った側にメッセージが根付く、そこまでできると施策としては大成功だと思います。
『The Tampon Book』は実際にドイツの法改正を起こすきっかけになり、また生理用品の税率が高い他国の女性にも気付きを与えました。私自身も、日本が生理用品を軽減税率の対象にしていないことに、これをきっかけに気づきました。
サービスやプロダクトが解決したい課題に、真摯に向き合う
解決したい課題があったからこそ、サービスやプロダクトが生まれ、その課題を解決し続けることで社会に必要とされ、会社は存続できます。課題に真摯に向き合い、サービスやプロダクトを磨いていくことはもちろん必要ですが、それをいかに表現し、知ってもらうかがPRの役割ではないでしょうか。
サービスやプロダクトの存在意義、ブランドの軸を忘れないよう、また表現する際には本質から逸れないように気をつけながら、私自身も課題の本質に迫った施策を企画していきたいなと思います!
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